ハイブリッドワーク時代に組織を強くするビジュアル活用

vol.103

ハイブリッドワーク時代に組織を強くするビジュアル活用

ハイブリッドワークが当たり前となったいま、多様な働き方を実践しながら、企業がイノベーションを起こしていくために何が必要なのでしょうか。「人」にフォーカスした社内向けデータベース「タレントベース」を成果につなげるDeNAより、HR本部人材企画部の澤村正樹さんと斎藤友紀さんをゲストに迎え、組織を強化するビジュアル活用をテーマにトークセッションを開催。アマナのコーポレートブランディング責任者の松野正也が登壇し、チーフプロデューサーの植山雄大がファシリテーターを務めました。

リモートワークで生まれた課題とは?

植山雄大(アマナ Sales&Produce 第2局 チーフプロデューサー/以下、植山):パンデミックで一気に広まったリモートワーク。組織にはデジタル化による業務の効率化がもたらされましたが、コミュニケーション不足を理由に出社に戻す企業も出ています。イノベーションを生むためには、コミュニケーション、特に雑談が重要だとも言われ、その解決策となるのがリモートと出社を併用したハイブリッドワークだと思います。出社したタイミングで新しい人と話すハードルをいかに下げて、雑談が生まれやすい環境を作るかが大事。そのために何ができるのか、まずハイブリッドワークについてDeNA 様での取り組みをご紹介いただきましょう。

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(左から)アマナの植山雄大、DeNAの澤村正樹さん、斎藤友紀さん、アマナの松野正也。

澤村正樹(ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 人材企画部 テクノロジーグループ グループマネージャー/以下、澤村):DeNAでは、パンデミックで従業員の9割以上がリモートワークに移行しましたが、生産性が落ちなかったと聞いています。フルリモートの会社になるという議論もありましたが、先ほど雑談というキーワードがあったように、非効率の中にあるイノベーションの源を大事にする意味でも、オフィスは大事な場所だろうと考え、オフィスワークとリモートワークとを織り交ぜた働き方を中心に考えています。

それに合わせてオフィスも移転して席数を以前の1/3ほどに減らし、シェアオフィスの一部を占有する形で、各自が最大の成果を上げることを狙って、自由な働き方とここでの出会いを重視することをコンセプトにハイブリッドワークを推進しています。ただし、答えが出ているわけではなく、定期的に社員にアンケートを取ってチューニングしていきます。個人での働き方とチームでの生産性の2軸で聞くと、リモートワークで個人作業はやりやすいが、コミュニケーションが必要なチームの仕事はしにくくなるという声もあります。

ビジュアルでコミュニケーションが変わる

植山:ビジュアルを活用してコミュニケーションを促進させるアプローチもあるんですよね、松野さん。

松野正也(アマナCDR&Marketing Dept. Corporate Design Sec. マネジャー/以下、松野):ハイブリッドワーク環境でいかに社内コミュニケーションのハードルを下げるかで、弊社でうまくいっている施策が akb(amana knowledge board)です。もともとは属人的になりがちなクライアント案件の知識や経験を記事の形にして、共有することを目的とするメディアという位置づけで開発されました。記事の内容は、トップのメッセージ、プロジェクト、社員個人の紹介、食レポなどさまざまで、毎月20本前後のペースで投稿されています。約4700本の記事がたまり、月間平均の PVは350万PV、ユニークユーザーは月間615UUで、社員の75%が毎月このメディアに接触しています。こうして事前情報を得ることによって、リアルで一緒になった時にコミュニケーションを取るハードルを下げることに大きくつながっています。弊社には企業理念の「人が中心」という言葉があるので、人をしっかり立たせたビジュアル表現をコンセプトにサムネイルを作っています。

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植山:確かに、実は松野さんと僕は今日が初対面ですが、初めましての感覚がないのは、akbで松野さんの記事を探して読んでいるからですね。そこで写真で人となりが伝わることがすごく重要なのかなと思いますが、澤村さんはどう感じていますか。

澤村:私も初対面の時にどういう人か知っておくかどうかで、コミュニケーションのスピードやスムーズさは違うと思います。そのために、言語化された情報と同時にその人の表情や服装が伝えるものだったり、言葉にならないところから出てくるメッセージは、結構大事かなと思ってます。

ビジネスは「人」で加速する

植山:相手のことを知って、声をかけやすくする工夫の一つとして、アマナのakbを紹介させていただきましたが、DeNA さんでも取り組みをされているそうですね。

斎藤友紀(ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 人材企画部 企画編集グループ兼CEO室/以下、斎藤):弊社でも人材こそ最大の強みとして捉え、その強みを見える化する「タレントベース」というツールがあります。DeNA創業20周年記念のプロジェクトで導入して4年目になります。以前の証明写真と名前、部署だけのスタッフリストでは表現できなかった個々人のキャラクターや強みまで、タレントベースではビジュアルで余すことなく表現することができます。

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タレントベースとアマナの取り組みに関して詳しくはこちら

そのクリエイティブの面でアマナさんに全面的に相談させていただきました。ご参考までに私のページを見ていただくと、旧来のスタッフリストでは、どういった人物かが伝わりにくいと思いますが、タレントベースでは斎藤友紀という人間がどんなキャラクターなのかがわかります。写真の力ってほんとうにすごいですよね。個人のページには、これまで携わってきたプロジェクトなど、初めましての障壁を下げアイスブレイクになるTIPSをたくさん表記できるようになっています。

このようなクリエイティブを導入した効果について社員にアンケートを取ったところ、相手の人柄や個性がイメージできる、コミュニケーションしやすいという声が圧倒的に多くありました。撮影会では、ポージングについて、例えばマラソンを趣味にしている方でしたら走ってみるとか、弊社は多数の事業展開をしているのでその事業のキャラクターのぬいぐるみをこんなふうに抱えてみるとか、プロのカメラマンに色々なご提案をいただけて撮影自体も楽しかったという声が多く届いてます。

植山:斎藤さんの写真で抱えているものは何ですか。

斎藤:背景色の紙を全部かついで、撮影の現場にいるスタッフですと、このクリエイティブに余すことなく表現しました。

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植山:どの切り口から入ると話がつながるとか、どういう案件、何が得意かなどが、1枚のビジュアルでわかりやすく伝わりますね。デジタル上の写真が、次のステップでリアルなコミュニケーションに進むための第一印象になるので、いかに写真で自分を伝えるか、自分を好きになってもらうのかはすごく重要ですね。斎藤さんとは、今日がはじめましてですが、写真の印象どおりすごく話しやすいなと感じているところです。

「人」で伝わる企業のブランドイメージ

植山:写真やビジュアルでどういう印象を与えるかはすごく重要で、人だけではなくて企業のブランディングでも同じですよね。

松野:本当にその通りで、最近は企業各社のオウンドメディアでの情報発信が主流になって、対外的に社員の露出も増えてきていると思います。実際に我々みたいに社員が自らウェビナーに登壇するとか、その告知や社員SNSも含めてあらゆる場面でビジュアル表現され、さらに文章表現があり、体外的な企業のブランドイメージにつながると思っています。

その話の中で考えると、社員のポートレートの情報に感性を載せることで、見る人がより共感を得るビジュアルに変化させることができます。人の情報の取得は9割を視覚情報から得ているというデータがあります。視覚情報が右脳から入り、この人素敵だとか、かっこいい、クール、温かそう、優しそうなどの直感を左脳に持っていき、記憶として定着させるメカニズムがあります。

DeNAさんのポートレート撮影では、背景色、社員さんのポーズ、ライティングに一定のルールが設けられていて、これがいわゆるトーン&マナー「トンマナ」です。このルールの中で社員の皆さんの表現や個性が生かされて、伝わるブランドイメージが形成されていますね。

植山:トーン&マナーのお話がありましたが、タレントベースではどのように工夫されましたか。

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澤村:タレントベースのサイトを作るときに、個人の強みや個性が出せて、バラバラでも調和が取れる、この二つを両立することがコンセプトとして最初からありました。トップページもランダムで並び、毎回変わって毎回バラバラですが、全体としては調和がとれている。そういう枠組みを意識しました。

松野:その調和をどう表すかで、アマナではプロデューサー、プランナー、アートディレクターという人材がしっかりお客さまに寄り添って、まずヒアリングをして、企業として一番に伝えるべきこと、伝えたいことの本質は何かを整理させていただくところからコンセプトを決め込み、アウトプットは無限大なので、お客さまと一緒に考えながら共創でききることが強みです。企業として統一された世界観を作り上げながら、社員それぞれの個性、発信力を生かすことで、潜在的になりがちだった企業の社風や文化をしっかり可視化することができると思っています。

植山:リモートの課題があり、その解決にハイブリッドワークがあって、それだけでは不十分なところをどう補完するかをご紹介できたと思います。本日は興味深いお話をありがとうございました。

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