「ファネル」を制する者はコンテンツマーケティングを制す

Funnel in content marketing

コンテンツマーケティングを実践するにあたっては、マーケティングにおける「ファネル」の概念を理解することが不可欠です。ここではファネルの基礎知識や重要性、またファネルに沿ったコンテンツの落とし込み方や注意すべきことについて、アマナでコンテンツマーケティングの施策を推進してきた白濱明美が紹介します。 

マーケティングにおける「ファネル」とは?

ファネルは日本語に訳すと「漏斗」。逆三角形の形をした、口の小さな容器に液体を注ぐときにつかう道具のことです。これを、消費者が商品を認知してから購入に至るまでの意識遷移のプロセスに当てはめて図式化したものが、マーケティング業界の「ファネル」です。

what is a funnel?

購入までの意識遷移プロセスは、「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」の4つ。一般的にマーケティングファネルにおける認知の段階にいる人たちは「潜在顧客」、「興味・関心」「比較・検討」の段階にいる人たちは「顕在(見込)顧客」、実際に購入した人たちは「顧客」とされています。皆さんも「気になった商品についていろいろ調べてみたけれど、最終的には買わなかった」という経験があると思いますが、消費者が購入のフェーズに近づくほど割合が少なくなるのでこのような形になるのです。

企業やブランドのマーケティング担当者は、消費者に自社の商品・サービスを購入して(利用して)、顧客になってもらうために日夜さまざまな施策を投じています。「コンテンツマーケティング」もその中の1つ。このファネルの概念は、切っても切り離せない関係といっても過言ではありません。

コンテンツマーケティングにおけるファネルの重要性

Content marketing imagery
©hi-bi/amanaimages

コンテンツマーケティングを簡潔にまとめると、「消費者に対して価値あるコンテンツを発信し、最終的に商品・サービスの購入につなげるマーケティング手法」となります。従来はマーケティングファネルの下層、つまりすでに商品・サービスへの認知や興味関心があり、すぐにでも顧客になりうる顕在顧客に対して、企業やブランドが伝えたいことをマス広告などで一方的にメッセージする、いわゆる「プッシュ型」のマーケティング手法が一般的でした。しかし、現在ではそれが通用しなくなってきています。

なぜなら消費者は購入という段階にたどり着くまでに日々さまざまなコンテンツに触れて、自ら能動的に情報を得ているからです。「企業やブランドが伝えたいこと」に加えて「消費者が求めている(知りたい)情報」が盛り込まれているコンテンツをあらかじめ用意して、消費者との接触機会を増やす。コンテンツマーケテイングは「プル型」とも呼ばれていますが、現在はこうした手法が主流になってきています。

Differences between advertising and content marketing

一方的に発信するのではなく、「企業やブランドが伝えたいこと」と「消費者が知りたいこと」のギャップを「適切なコンテンツ」で埋めるコミュニケーションで、消費者との信頼関係を構築しながら購入支援を行うのが、コンテンツマーケティングの情報伝達構造。
出典:https://contentmarketinglab.jp/content-marketing/what.html

この考え方をもとにすると、「認知」「興味・関心」「比較・検討」の各ファネルに当てはまる人たちのニーズを汲み取り、それに応える最適なコンテンツを継続的に発信できれば、まだ商品・サービスを知らない人たちも「コンテンツによって、購入フェーズへと移行する」可能性があるのです。では、各ファネルに沿った最適なコンテンツとはどういったものでしょうか? ここでは、化粧品会社のマーケティング担当者が「化粧水」を売りたいと仮定し、マーケティングファネルに当てはめて考えてみます。

●「認知」フェーズの潜在顧客
このフェーズの人たちは、この社の商品(化粧水)を知らない、または関心が低いです。 ただ、化粧水がほしいと思っている消費者は、何かしらの肌の悩みを持っていて、それを解決できる情報(ニーズ)を探しているはずです。そうした消費者が求めていることで、かつ自社の商品で解決できるような情報をコンテンツ化していきます。こうしたコンテンツは、具体的な課題については認識していないという消費者に「気づき」を与え、ファネルの次の層に引き込めるかもしれない、という意味でも役立ちます。

例えば…「肌質別の正しい化粧水の選び方」など。

●「興味・関心」「比較・検討」フェーズの顕在顧客層
このフェーズにいるのは商品(化粧水)を認知はしていて興味・関心がある、あるいは購入に向けてすでにリサーチなどを始める段階にいる人たちです。 購入には至っていないものの、近いうちに買ってもらえる可能性は限りなく高いと言えます。そこで他社製品との違いや、自社の商品を選ぶことのメリットを伝え、商品の購入確度を高められるようなコンテンツを提供します。

例えば…「商品担当に聞く開発ストーリー」など。

以上のように、各ファネルの消費者は段階ごとに置かれている状況や心理状態が違うので、同じ商品・サービスであってもコンテンツの打ち出し方が変わってきます。コンテンツマーケティングは、このファネルに沿ってターゲットを細かく分類したうえで、適切なコンテンツを発信していくことが大切です。 

ファネルに沿ってコンテンツを考える時の注意点

To consider content
©MASKOT/amanaimages

これまでコンテンツマーケティングにおけるファネルを意識することの重要性について触れてきましたが、特に注意したい点が2つあります。

1. 商品・サービスを売り込む内容にしない
コンテンツマーケティングではあくまで消費者目線に立ち、コンテンツを打ち出していくことが重要とされています。もし自分がマーケティング担当だったらたくさんの人に自社の商品を買ってほしいので、1つのコンテンツに商品やサービスの魅力をこれでもかと盛り込みたい気持ちはあります。しかし、コンテンツ内に直接商品の購入を促すといったセール感は出さずに、ひたすら「消費者が求めていること」に重きを置き、それについて自社の商品・サービスで解決できることを提示するようなコンテンツ作りに徹することが重要です。
ファネル上層の「認知」フェーズの潜在顧客層であれば、自社商品・サービスについて全く触れられていないコンテンツでもいいかもしれません。どのフェーズにおいても、直接的に「ウチの商品、すごくいいので買ってください」とは訴求せず、「ウチの商品、こんなところがいいんです」と消費者に教えてあげる、くらいのスタンスがいいのです。

2. 商品・サービスの市場での立ち位置により、各ファネルのコンテンツ数を変える
コンテンツマーケティングの考え方だと、各ファネルごとに用意できるコンテンツの数が多ければ多いほど、消費者との接触機会が多くなると言えます。ただ自社の商品・サービスが市場でどのような立ち位置にあるか?を踏まえると、どの層へのアプローチに注力するかは変わってきます。
例えばコンテンツを10本作るとして、自社の商品・サービスがまだ世の中に出てまもないという場合は、ファネル上部の「認知」フェーズの潜在顧客層に対してのコンテンツを厚くする、商品・サービスを知っている人は多いのに購入に結びついていないという場合は、「興味・関心」「比較・検討」の顕在顧客に向けたコンテンツを増やしていくといいでしょう。冒頭にも説明しましたが、ファネルの購入フェーズに近づけば近づくほど人数は減っていきます。

どれだけ多くの人が

商品・サービスを好きになり

購入してもらえるか?

という流れを意識して、潜在顧客へは「より多くの人に触れてもらえる」コンテンツを、顕在顧客へは「商品・サービスを好きになってもらえる」コンテンツを、コンテンツ数のバランスも考えながら用意できるとよさそうです。

昨今、コンテンツマーケティングという手法が日本でもかなり浸透してきました。今や企業やブランドでは実践しているところも多く、その手法も日々変化と進化を遂げていて、常に情報をインプットし勉強しながら実施していく必要があります。しかし、根幹にある考え方はおそらく変わらないでしょう。ファネルの概念を理解することが、コンテンツマーケティングを理解することの第一歩なのかもしれません。

文:白濱明美(アマナ)
デザイン:中村圭佑

PROFILE

photograph of Akemi Shirahama

白濱明美

白濱明美

Akemi Shirahama | 株式会社アマナ/コンテンツディレクター。メディア企業や編集プロダクションにてエディター/ディレクターのキャリアを積み、2020年にアマナグループへ。現在はコンテンツディレクターとして、企業のコンテンツマーケティング支援に従事。

SOLUTION

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コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
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