時代に適応する美容業界のリブランディング6選:YSLやメイベリンの挑戦に学ぶ

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Z世代やミレニアル世代の価値観が多様化するなか、美容業界ではブランドの再構築が進んでいます。この記事では、歴史あるグローバルブランドから新興ブランドまで、近年注目を集めた海外コスメブランドのリブランディング事例を6つ厳選して紹介。

それぞれが、ブランドの哲学やビジュアルをどのように現代的に更新し、どのような手法で次世代の生活者とのつながりを構築したのかを紐解きます。

美容業界のリブランディング事例① メイベリン ニューヨークは名作コピーをZ世代向けに復活

メイベリン ニューヨーク(Maybelline New York)は2024年、長年親しまれてきたブランドコピー「Maybe it’s Maybelline.」を再起動させ、Z世代とのつながりを深めるリブランディングを展開しました。このコピーは1991年に登場し、2015年に「Make It Happen」に置き換えられるまで、長くブランドの象徴として機能していました。30年以上前に生まれたコピー「Maybe it’s Maybelline.」は、今なおブランド想起率80%を維持しており、その定着度の高さが今回の復活につながったと考えられます。

メイベリン ニューヨークは2024年2月にTikTokを中心としたプロモーションを展開。公式動画では、名作コピーのナレーションにあわせ異なる個性を持つモデルたちの姿をテンポよく切り替えながら映し出すことで、「誰もが自分らしくあることの美しさ」を表現しています。

@maybelline Get ready to have this stuck in your head. 24/7 🔁 🎶 The iconic “Maybe it’s Maybelline” jingle is back with a fresh new vibe featuring @gigihadid, @Shay Mitchell, @Storm Reid and @Peggy Gou 페기 구 🔥 What’s your maybe? Share your looks using the hashtag! #maybeitsmaybelline #maybellinepartners ♬ original sound – Maybelline NY

出典:Maybelline New York(@maybelline)

この取り組みは、既存のブランド資産を活かし、世代やチャネルの変化に応じて語り直すというリブランディング手法の一つといえるでしょう。

美容業界のリブランディング事例② 大胆なSNSリセットで描くイヴ・サンローラン・ボーテの再出発

イヴ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)は2024年、Instagramの投稿を全て削除し、ブランドの再構築を掲げたリブランディングに踏み切りました。フォロワー数1,100万人超のアカウントで投稿アーカイブを白紙に戻すこの決断は、「自由=LIBRE」というブランドの本質に立ち返る大胆な意思表明ともいえるものでした。

その直後に投稿されたのは、これを機にフレグランスアンバサダーからメイクアップアンバサダーへと就任したDua Lipaが「I AM LIBRE(私は自由)」と語る、ミニマルな映像。色や言葉を削ぎ落とした構成は、ブランドが掲げる“型にはまらない自己表現”を明確に示すと同時に、ゼロから再出発する覚悟を視覚的に伝えています。

出典:YSL Beauty(@yslbeauty)

続く投稿では、Dua Lipaがリップやアイシャドウなどを手にしたビジュアルを展開。

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出典:DUA LIPA(@dualipa)

SNSを起点としたこの一連のアプローチは、イヴ・サンローラン・ボーテにとって単なる話題づくりにとどまらず、ブランドのSNS発信そのものを見直す転換点となったといえるでしょう。

美容業界のリブランディング事例③ プラダが哲学をビューティーに拡張

プラダ(Prada)は2023年、ビューティーラインの本格展開にあたり、「Rethinking Beauty(美の再考)」をコンセプトに掲げ、ブランドの哲学と先進技術を融合させたリブランディングを実施しました。

この取り組みでは、スキンケアライン「Prada Skin」とメイクアップライン「Prada Color」を同時に発表。「Prada Skin」は、肌の自然な回復力を引き出すアダプティブスキンテクノロジーを採用し、環境変化に対応するスキンケアを提案しています。一方、「Prada Color」は、ブランドのビジョンから着想を得た多彩な色彩とテクスチャーを展開し、自己表現の新たな可能性を提示するものでした。

キャンペーンビジュアルやキャンペーン動画では、プラダの象徴であるトライアングルやグリーンを基調に、光とコードを駆使した未来的な世界観を表現。多様なモデルを起用し、年齢や性別、人種を超えた多様性を表現しています。

出典:Prada Beauty

これは、プラダがファッション分野で培ってきた「知性と感性の融合」や先鋭的な美意識を、スキンケア・メイクアップへと拡張する試みといえます。アイコニックな世界観や哲学をそのままビューティーに応用することで、「美とは何か」という問いに対し、テクノロジーと多様性を融合させた新しい解釈を提示しています。

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美容業界のリブランディング事例④ 135年の歴史に現代の声を重ねたエイボンのブランド再定義

エイボン(Avon)は2023年にグローバルでのリブランディングを実施し、新たなブランドスローガン「Embrace Your Power(自分の力を信じて)」を掲げました。135年にわたる歴史を持つ同ブランドが、改めて現代の価値観に即してアップデートしたのです。

本リブランディングでは、ロンドンのクリエイティブエージェンシーFree The Birdsと連携し、コピー・ビジュアル・プロダクトデザインを包括的に刷新しました。

ブランドカラーは従来の紫がかったピンクから、より鮮やかで前向きな印象の「Power Pink」に更新。ロゴは、ブランド名「AVON」を台座(ポディウム)状の背景に配置したデザインで、「すべての人に開かれたブランド」として、エイボンがユーザーの個々の力を支え高める存在であることを視覚的に表現しています。

出典:Huddle Creative(@huddlecreative)

メッセージやビジュアルのすべてに通底するのは、「美しさとは誰かの型にはまることではなく、自分を受け入れること」という明確な価値観です。エイボンはこのリブランディングを通じて、ブランドの信念を現代的な感性に合わせて再構築したといえます。

美容業界のリブランディング事例⑤ 自然派のまま洗練された、イニスフリーの表現アップデート

韓国発の自然派ブランドであるイニスフリー(innisfree)は、2023年にグローバルでのリブランディングを実施しました。創業当初から掲げてきた「自然との共生」という理念はそのままに、Z世代やミレニアル世代を視野に入れた新たなビジュアル戦略へと舵を切り、サステナビリティや環境意識といった価値観への応答もあわせて打ち出しています。

出典:INNISFREE Singapore(@innisfreesingapore)

ビジュアル面では、ブランドロゴ・カラー・パッケージを刷新。ブランドカラーは従来の明るいグリーンから、より深みのある「innisfree Green」へと変更し、ロゴはセリフ体を採用。自然派ブランドとしての誠実さと、グローバル市場での洗練を両立したトーン設計です。

同年には、ブランドキャンペーン動画「THE NEW ISLE」を公開。ブランド名の語源である「INNIS(=島)&FREE(=自由)」を表現するために、同ブランドが軸としてきた自然素材と、新たな技術の融合を想起させる“架空の美の島”を舞台に、イニスフリーが目指す自由でしなやかな美の在り方を描いています。

出典:INNISFREE Japan

自然派ブランドとしての軸は変えずに、ビジュアルやメッセージの伝え方を見直した本取り組みは、ブランドの姿勢を現代に沿ってアップデートする試みといえるでしょう。

美容業界のリブランディング事例⑥ ドクターロレッタは専門性と親しみやすさを叶える新たなトーンに

皮膚科医Dr. Loretta Ciraldoによって設立されたスキンケアブランド「ドクターロレッタ(Dr. Loretta)」は、2022年にブランドの認知拡大とユーザーとの再接続を目的にリブランディングを実施しました。

従来の「臨床」感を前面に出したビジュアルから一転し、親しみやすく洗練された世界観へと一新。ロゴやカラーパレットは、ソフトで肌なじみのよいニュートラルトーンへと再構成され、製品カテゴリごとのカラー分けを行いました。

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出典:Dr. Loretta(@drloretta)

また、製品体験の向上を図り、セラム容器をスポイト式からロックツイスト式ポンプボトルへと変更。これにより、使用時の操作性と衛生面を改善しました。さらに、公式ウェブサイトも全面的にリニューアルし、ブランドの専門性や哲学がより明快に伝わる構成へとアップデートしています。

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出典:Dr.Loretta

ドクターロレッタは今回のリブランディングを通じて、医師監修ブランドとしての信頼性を保ちながらも、より幅広い現代のユーザーに寄り添うトーンへの転換を図ったといえるでしょう。

美容業界のリブランディングの先にある、ブランド体験の広がり

ブランドの再構築や哲学の言語化といったリブランディングの取り組みが続く中で、近年ではその枠組みを超えたブランド体験の拡張も見られます。

ロード(rhode skin)が展開した「Lip Case」は、リップバーム本体ではなく、それを装着する専用ケースという“非コスメ製品”を通じて、ブランドの世界観や価値をより感覚的・日常的なレイヤーで表現した試みです。

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出典:rhode skin(@rhode)

製品の外側にブランドの魅力を持たせるこのようなアプローチは、Z世代との接点づくりやブランドの拡張性を高める上でも有効であり、リブランディングに取り組むコスメブランドにとっても新たなヒントになるかもしれません。

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