事業が「ロジック集め」になっていないか?成功を左右する〝確信〟という土台

ナラティブデザイン
本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。

新規事業の構想では、市場データや競合分析などの「客観的なロジック」が重視されがちです。しかし不確実性の高い時代においては、ロジックだけでは意思決定を支える十分な確信を持つことが難しくなっています。本書『ナラティブモデル』では、ロジックによる「確証」と並んで、事業の土台となる「確信」の重要性を説きます。第2回では、ナラティブを通じて内発的動機を掘り下げ、事業の揺るがない土台を築く考え方を紹介します。


〜本コンテンツは、書籍『ナラティブモデル』(酒井博基著・武蔵野美術大学出版局刊)から一部を抜粋・編集したものです(この記事は第2回/全4回)。

No.1:なぜ人は「物語」に共感するのか?ブランド価値を生むナラティブの力

No.3:アイデアは消えても「イシュー」は残る。変化に強いビジネスのつくり方(4月3日公開予定)

No.4:KPI達成がゴールになっていないか?本来の目的を見失わない方法(4月6日公開予定)


ナラティブモデルは事業構想の確信を深めるための思考法

新規事業を構想する際、「このアイデアで本当にいけるだろうか?」という問いは誰しも抱くものです。書籍『事業構想を「書く」ビジネスモデルを可視化し新規事業開発を加速させるフレームワーク』の著者・堀雅彦氏は、起案者が目指すべき状態を「確信」と「確証」という二つのキーワードで定義しています。堀氏によれば、「確信」とは数字でもロジックでもなく、直感的に「いける」と感じる右脳的な感覚です。一方の「確証」は、データや論理を積み重ねた結果得られる左脳的な「いける」という感覚を指します。

これまでのビジネスシーンでは、事業化の意思決定フェーズにおいていかにリスクを低減し「確証」を揃えるかが重視されてきました。競合動向や市場規模、収益シミュレーションなど、さまざまな客観的根拠を提示し、社内外のステークホルダーを説得するのが王道とされてきたためです。しかしVUCAの時代ーー社会も技術も刻一刻と変化し、不確実性が高まる中では、「十分なデータが得られない」「数字が揃っても環境変動ですぐに陳腐化する」といった限界に直面します。そんな状況下で、左脳だけに頼った確証づくりは、意思決定の不安を完全に取り除くことができません。

では、どうすれば新規事業の立ち上げに際して、意思決定者と関係者が「やるべきだ」「やり切れる」と納得し、かつ情熱を持って推進できる状態をつくれるのでしょうか。一つの答えは、確証と同じくらい「確信」を大切にすることーーつまり、客観的なロジックに加えて、自分自身の「右脳的な直感」を研ぎ澄まし、その裏にある内発的動機を明確にすることにあります。

ここで登場するのが「ナラティブモデル」です。ナラティブモデルは、事業構想のフェーズにおいて、往々にして軽んじられがちな主観的な「確信」を深めるための思考法です。これまでの構想プロセスでは、マーケットデータや競合分析などに時間を割きがちですが、それだけでは動機の軸が曖昧なまま、揺らぎやすいビジネスプランに終始してしまいます。ナラティブモデルが促すのは、あなた自身の胸に湧き上がった「なぜ自分はこのアイデアに心を動かされたのか?」という問いを徹底的に掘り下げ、そこから得られる〝個人の物語(ナラティブ)〟を言語化することです。このプロセスで浮かび上がるのが、あなたの切実な欲求ーーまさに事業の内発的動機です。

これまでのビジネスシーンの確信と確証のバランス

これまでのビジネスシーンでは、事業化の意思決定のフェーズにおいても確実性が求められるため客観的なロジックが重視されてきた

これまでのビジネスシーンでは、事業化の意思決定のフェーズにおいても確実性が求められるため客観的なロジックが重視されてきた

不確実性の高い変化の時代のビジネスシーンの確信と確証のバランス

す。書籍『事業構想を「書く」ビジネスモデルを可視化し新規事業開発を加速させるフレームワーク』の著者・堀雅彦氏は、起案者が目指すべき状態を「確信」と「確証」という二つのキーワードで定義しています。堀氏によれば、「確信」とは数字でもロジックでもなく、直感的に「いける」と感じる右脳的な感覚です。一方の「確証」は、データや論理を積み重ねた結果得られる左脳的な「いける」という感覚を指します。  これまでのビジネスシーンでは、事業化の意思決定フェーズにおいていかにリスクを低減し「確証」を揃えるかが重視されてきました。競合動向や市場規模、収益シミュレーションなど、さまざまな客観的根拠を提示し、社内外のステークホルダーを説得するのが王道とされてきたためです。しかしVUCAの時代ーー社会も技術も刻一刻と変化し、不確実性が高まる中では、「十分なデータが得られない」「数字が揃っても環境変動ですぐに陳腐化する」といった限界に直面します。そんな状況下で、左脳だけに頼った確証づくりは、意思決定の不安を完全に取り除くことができません。  では、どうすれば新規事業の立ち上げに際して、意思決定者と関係者が「やるべきだ」「やり切れる」と納得し、かつ情熱を持って推進できる状態をつくれるのでしょうか。一つの答えは、確証と同じくらい「確信」を大切にすることーーつまり、客観的なロジックに加えて、自分自身の「右脳的な直感」を研ぎ澄まし、その裏にある内発的動機を明確にすることにあります。  ここで登場するのが「ナラティブモデル」です。ナラティブモデルは、事業構想のフェーズにおいて、往々にして軽んじられがちな主観的な「確信」を深めるための思考法です。これまでの構想プロセスでは、マーケットデータや競合分析などに時間を割きがちですが、それだけでは動機の軸が曖昧なまま、揺らぎやすいビジネスプランに終始してしまいます。ナラティブモデルが促すのは、あなた自身の胸に湧き上がった「なぜ自分はこのアイデアに心を動かされたのか?」という問いを徹底的に掘り下げ、そこから得られる個人の物語(ナラティブ)を言語化することです。このプロセスで浮かび上がるのが、あなたの切実な欲求ーーまさに事業の内発的動機です。  これまでのビジネスシーンの確信と確証のバランス  これまでのビジネスシーンでは、事業化の意思決定のフェーズにおいても確実性が求められるため客観的なロジックが重視されてきた     不確実性の高い変化の時代のビジネスシーンの確信と確証のバランス  不確実性の高い変化の時代のビジネスシーンでは、確実性を証明するデータが不十分だったり、変動する要素も多すぎるため、ロジックだけでは意思決定の懸念を完全に払拭することはできない 

不確実性の高い変化の時代のビジネスシーンでは、確実性を証明するデータが不十分だったり、変動する要素も多すぎるため、ロジックだけでは意思決定の懸念を完全に払拭することはできない

この内発的動機こそ、ビジネスモデルの土台となるべき「確信」です。ナラティブモデルは、その土台を掘り下げて強固にし、同時に事業構想のステークホルダーに対しても、語るべき説得力のある物語を提供します。こうして得られた確信に、あとから多様なロジックやデータを積み重ねることで、揺るぎない「確証」へと昇華させることができるのです。

一方、ドミナントストーリー――「事業は規模を追い、利益を拡大してこそ成功」「市場は大きければ大きいほどいい」といった暗黙の前提――に支配されたままでは、いくらロジックを固めても、建物の土台が不安定なまま高層ビルを建てるようなもの。底がぐらつけば、巨大な理論武装ですら容易に崩れ去ります。ナラティブモデルはその前提に対して批判的な視点を与えつつ、あなた自身の物語に根差した土台づくりをあと押しします。

ナラティブによって内発的動機が明らかになったビジネスの土台

ナラティブによって内発的動機が明らかになったビジネスの土台

このようにナラティブモデルは、主観的な確信と客観的な確証の両輪を回しながら、新規事業の構想を前進させる思考法です。最後につけ加えると、ナラティブモデルの源流には美大教育のエッセンスがあります。美大で培われる「自己と対話し、問いを立て、試行錯誤を重ねるプロセス」は、事業構想における主観的な確信を深めることに応用できるのではないかと考えたからです。


(この記事は第2回/全4回)

No.1:なぜ人は「物語」に共感するのか?ブランド価値を生むナラティブの力

No.3:アイデアは消えても「イシュー」は残る。変化に強いビジネスのつくり方(4月3日公開予定)

No.4:KPI達成がゴールになっていないか?本来の目的を見失わない方法(4月6日公開予定)


▼書籍紹介

地域、大学、自治体の共創プロジェクトを多数手がけてきた著者が、「ナラティブ(物語)」の視点から価値創造のプロセスを体系化した一冊です。戦略やコンセプトを一方向的に伝えるのではなく、人や社会との関係性のなかで意味を共創していくための考え方を、理論と実践の両面から学ぶことができます。

▼書籍情報

書名:ナラティブモデル
著者:酒井博基
出版社:武蔵野美術大学出版局
発売日:2025年10月30日
リンク:https://www.musabi.co.jp/books/b463177/


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