BtoB映像で企業の「想い」を可視化する。三井化学の事例から学ぶブランディング映像のディレクション術

BtoB映像で企業の「想い」を可視化する。三井化学の事例から学ぶブランディング映像のディレクション術

BtoB領域の映像制作において、しばしば課題になるのが「難しいことを、いかに理解させるか」です。技術や事業の内容は専門的であるほど、正確さと分かりやすさの両立が求められます。しかしそれ以上に重要なのは、企業が持つ思想や空気感といった“言葉になりにくい価値”をどう伝えるかです。

アマナの映像ディレクター・謝花です。今回は私が企画・演出を担当させていただいた三井化学の研究所「VISION HUB™ SODEGAURA」の映像制作を事例とし、この“言葉になりにくい価値”をどう捉え、映像として表現したかを解説したいと思います。

“言葉になりにくい価値”を、「シームレス」という軸で翻訳する

千葉・袖ヶ浦に構える研究所「VISION HUB™ SODEGAURA」は、広大な敷地に複数の研究棟が点在し、多様な研究が行われている環境。その中で生まれる研究者同士の交流や、オンとオフが緩やかに行き来する開放的な空気感を、いかに映像として体験させるかがテーマになると考えました。

この課題に対して、ひとつのコンセプトを設定しました。

それは「シームレス」です。

VISION HUB™ SODEGAURA/@MitsuiChemicalsGroup

 

「構造」を映像化する:ドローン撮影とロゴのモチーフで描く組織のつながり

この映像では、ドローン撮影を軸に据えています。東京ドーム約6個分という広大な研究施設を、途切れなく回遊するカメラワークによって、“分断されていない空間”として体験させるためです。建物や部署の物理的な距離を超えて、ひとつの有機的な場として認識させる狙いがあります。

さらに象徴的な要素として、施設のロゴを起点にした「リボン状のエレメント」を設計しました。ロゴを構成する4色を分解し、それぞれが研究所内を横断するように現れる。最終的にはそれらが再び集まり、ひとつのロゴに戻っていく。この一連の流れによって、「個々の研究や人がつながり、ひとつの価値を生み出している」という関係性を、言葉に頼らず表現しています。

住友化学の映像カットと演出コンテ

「シームレス」な視覚体験を実現するため、コンテ段階でワンカットの範囲やトランジションの構成を緻密に設計しています。

抽象的な概念を映像化する際には、こうした「プリミティブな動き」や「構造」から発想を広げることが有効です。今回で言えば、“分解される/つながる/循環する”というシンプルな動作を、コンセプト全体を支える軸にしました。

 

あえて「見せすぎない」戦略:視聴者の想像力を刺激し、企業の“余白”を伝える手法

もう一つのポイントは、「研究員の遊び心」をどう扱うかでした。実際の現場には、研究員の有志活動や手作りのカフェスペース、ユニークなオブジェなど、魅力的な要素が数多く存在します。しかし、それらを個別に丁寧に説明してしまうと、映像は冗長になり、本来伝えたい全体像がぼやけてしまう。

そこで、あえて“ちらっと見せる”という判断をしました。ドローンによる回遊の中で断片的に映り込ませることで、説明せずとも「この場所には余白や遊びがある」と感じさせる。BtoB映像においては、情報量を増やすことよりも、印象として残ることの方が重要な場合があります。

 

抽象化による共感の最大化:時代に左右されず、長期的に機能する映像設計とは

今回の提案では、研究員個人の顔を前面に出さない構成にしています。これは、特定の誰かを表現するのではなく、研究所で働く人そのものを描いています。抽象的に描くことによって幅広い共感を得ることができるように設計しました。

結果として、ユーモアと信頼性を両立しながら、企業の姿勢そのものを伝える映像に仕上がっています。

 

【結論】BtoB映像の本質は「説明」ではなく、企業の「あり方」を翻訳すること

BtoB映像の難しさは、その専門性にあります。ナレーション一つをとっても、クライアントからのフィードバックが本当にターゲットにとって分かりやすいのか、常に検証が必要です。

一方で、その専門性こそが魅力でもあります。普段は触れることのない技術の裏側や、企業が大切にしている思想に向き合い、それをどう表現するかを考えるプロセスには、BtoCとは異なる面白さがあります。

映像は単なる説明ツールではなく、企業の「あり方」を体験させるメディアです。だからこそ、情報を並べるのではなく、構造や動きに置き換え、視覚的に“理解させる”ことが重要になります。

BtoB映像において求められるのは、難しいことをやさしくすることではなく、本質を損なわずに、伝わるかたちへ翻訳することなのだと思います。

文:謝花香織(アマナ/ ムービーディレクター) 


アマナのサービス・関連記事のご紹介

アマナのサービス紹介

ビジュアル(Motion・Photography・Digital Imaging)|TVCM/ムービー撮影

アマナは、企業が大切にしている理念や不変の価値を、映像やビジュアルを通じて可視化するクリエイティブを提供しています。TVCMやブランドムービーの撮影はもちろん、PhotographyやDigital Imagingを含めた統合的なビジュアル設計により、企業の世界観を一貫して表現します。

価格やスペックで比較されやすい市場環境においても、製品を支える思想や人の姿勢まで伝える──。そんなブランドコミュニケーションの設計から制作まで、ワンストップで伴走します。

アマナのムービー制作事例

ブランドの世界観を映像でどのように設計し、可視化してきたのか。アマナのムービー制作事例もあわせてご覧ください。

制作事例:
Tailor App|再生医療発想スキンケア「iCell」を可視化──氷川きよしで伝えるコピー・映像・ビジュアルのブランド戦略
キトー|「製品以上の価値」を可視化する─Amazonブランドストア向けブランドムービー制作
ヤマハ発動機|ブランドの世界観を可視化する──共創で生まれたビジュアルコンセプト
パナソニック|SNS広告映像制作の舞台裏:欧州向けテレビのプロモーション事例
フェイラー|“ときめき”を支えるものづくりを伝えるブランドムービー

関連記事:
動画広告のサイズあれこれ|縦型・横型どちらが最適?SNS時代の映像制作ヒント
動画企画の膨らませ方|プロが実践するアイデア発想法とツール活用術
ムービーディレクターが実践するアイデア創出法
映像制作における「企画コンテ」と「演出コンテ」とコミュニケーションの重要性
広告だけじゃない! 社内向け動画コンテンツの新たな役割
ココロ、トキメク動画の制作依頼方法 – SNS広告で視聴者の心をつかむために –

banner_mailmagazine.jpg

banner_Inquiry.jpg

SOLUTION

amana TVCM/MOVIE

amana TVCM/MOVIE

幅広い用途に展開できるハイクオリティな動画を

TVCMやWeb用の動画、企業紹介ビデオなど、幅広い動画の撮影に対応。長年培ってきたスチル撮影の経験とノウハウを活かして、クオリティの高い動画を制作します。撮影スタジオはもちろんのこと、動画の編集・合成を中心に、ナレーション収録も可能な動画編集スタジオを完備。撮影、編集、ディレクションなど、専門性の高いスキルを持ったスタッフが、動画の制作をサポートします。

KEYWORDキーワード

本サイトではユーザーの利便性向上のためCookieを使用してサービスを提供しています。詳しくはCookieポリシーをご覧ください。

閉じる