The One Show 2026に見るクリエイティブトレンド──社会との接点を、ブランドらしい「体験」へ変える

ONE SHOW

世界各地の広告、デザイン、ブランド体験を対象に、優れたクリエイティビティを表彰するThe One Show。50年以上の歴史を持つ国際広告賞であり、Gold Pencilはクリエイティブ業界における最高峰の栄誉の1つとされています。

2026年の受賞作を見渡すと、AIを前面に掲げた表現だけが評価されたわけではありません。むしろ、社会や文化の中にある固定観念、見過ごされがちな不平等、生活者の日常的な感情に目を向け、ブランド固有の視点から新たな体験へ変換した作品が存在感を示しました。

本記事では、2026年のThe One Show受賞作から5作品を紹介します。各作の着眼点をひもときながら、企業がこれからのブランドコミュニケーションを考える上でのヒントを探ります。

The One Show 2026 注目受賞作品の紹介

1.Bricks on Track

Branded Entertainment部門 Brand Partnershipsカテゴリー/Gold Pencil受賞
広告主:The LEGO Group

出展:@LEGO /Bricks On Track: Building the LEGO® F1® Drivers’ Parade | Official Trailer

「Bricks on Track」は、The LEGO GroupとFormula 1の協業を題材にした長編ドキュメンタリーです。2025年のFORMULA 1 MIAMI GRAND PRIXで披露された、実際に走行できるLEGOブロック製F1マシン10台。その制作から、ドライバーたちによるパレード当日までを追っています。

特徴は、巨大なLEGOカーの制作工程を、単なるメイキング映像として終わらせなかった点です。チームの招集、予想外のトラブル、締め切りとの戦い、最後の成功という流れを、一本のエンターテインメントとして組み立てています。F1のスピード感や技術性と、LEGOらしい遊び心を掛け合わせ、ブランドパートナーシップを家族で楽しめる物語へ変換しました。

異なる領域の協業では、企業名やロゴを並べるだけでは共感を生みにくいものです。本作は、両ブランドに通じる「つくる楽しさ」や「挑戦する喜び」を、視聴者が追体験できる形にした事例です。

2.A TI, ¿QUIÉN TE ESPERA?

Branded Entertainment部門 Craft / Art Directionカテゴリー/Gold Pencil受賞
広告主:Cerveza Victoria

出典:@Victoria México/A ti, ¿quién te espera?

メキシコのビールブランドVictoriaによる、亡くなった人をしのぶ伝統行事を題材にしたアニメーション作品です。この行事を扱うブランド表現では、再会や思い出、懐かしさを描く作品が多く見られます。本作はそこから視点を変え、亡くなったペットとのつながりに焦点を当てました。

「あの世で、誰があなたを待っているのか」という問いを通じて、死を終わりではなく、再会を待つ時間として描いています。2,500フレームを手描き・手彩色した表現も含め、伝統的な題材を表層的に扱うのではなく、現代の生活者が抱く喪失感や愛着へ結び付けた点が特徴です。

文化的な題材を使う際に重要なのは、既存のイメージをなぞることではありません。本作は、ブランドが長年関わってきたテーマに、生活者の実感に根ざした新しい視点を加えています。

3.It’s Dettol Time

Branded Entertainment部門 Long Form Video / Singleカテゴリー/Silver Pencil受賞
広告主:Dettol

出典:@Sour Bangkok/It’s Dettol Time

衛生ブランドDettolは、日常的な衛生習慣をどう生活者に再認識してもらうかという課題に向き合いました。本作は、CGで細菌を描く従来の表現から離れ、不正や詐欺、非倫理的な振る舞いをする人物を「社会の菌」として描いています。

衛生への関心を、恐怖や不安だけで促すのではなく、生活者が日々感じる不快感や怒りに置き換えた点が特徴です。風刺とユーモアを用いながら、Dettolの「守る」「清潔にする」という役割を、現代の生活者にとって身近な意味へ再定義しています。

商品カテゴリーで定着している表現方法をあえてずらし、社会への視線と商品訴求を1つの物語にまとめています。メッセージを直接説明するのではなく、受け手の感情を動かしてブランドの役割を伝える作品です。

4.I’m Not Remarkable

Branded Entertainment部門 Music Videos / Brandカテゴリー/Silver Pencil受賞
広告主:Apple

出典:@Apple/Accessibility | I’m Not Remarkable

Appleの「I’m Not Remarkable」は、障がいのある学生たちが「特別」「勇敢」「感動的」と一方的に扱われることへの違和感を起点にした作品です。学生たちが望んでいるのは、障がいがあるから称賛されることではありません。成功も失敗も、恋愛も、遅刻も含め、ほかの学生と同じように過ごせることです。

本作は、障がいのある学生を主役にしたミュージカル形式で、この思いを表現しています。障がいを感動の装置にするのではなく、一人ひとりの学生生活や個性を中心に据えている点が特徴です。

Apple製品のアクセシビリティ機能も、単なる機能訴求として説明されるわけではありません。学び、創作、友人との交流を支える環境の一部として、物語の中に自然に組み込まれています。インクルーシビリティを特別な配慮としてではなく、誰もが日常へ参加できる状態として示した作品です。

5.Kyikatejê

Branded Entertainment部門 B2B Communicationsカテゴリー/Silver Pencil受賞
広告主:Gavião Kyikatejê Futebol Clube

出典:@Gavião Kyikatêjê/GAVIÃO KYIKATÊJÊ FC – O PRIMEIRO TIME INDÍGENA DO BRASIL

「Kyikatejê」は、ブラジル初の先住民プロサッカーチームを支援するための作品です。同チームは競技面で実績を持ちながら、長年、公式スポンサーを得られずにいました。本作は、サッカー界に残る先住民への差別的な表現を起点に、その状況を可視化しています。

先住民チームへのスポンサーシップを、慈善や支援ではなく、公正な評価と尊厳の問題として問い直した点が特徴です。チームに受け継がれてきた言葉や文化的背景を表現の中心に置き、企業に対しても、この変化に参加する意義を投げかけています。

BtoBコミュニケーションでありながら、単に協賛を呼びかけるのではなく、社会の中で誰が正当に評価されているのかを問う物語へ広げています。企業との関係づくりを、文化や社会への参加と結び付けた作品です。

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The One Show 2026に見る3つのクリエイティブトレンド

1.社会課題を、正しさの訴求ではなく「自分ごとになる体験」へ変える

2026年の受賞作には、社会課題を強いメッセージで訴えるだけではなく、生活者が感情や行動を通じて課題を受け止められるよう設計した作品が多く見られました。

多様性、健康、文化的な偏見、不平等といったテーマは、正論として語るだけでは距離が生まれやすいものです。そこで受賞作は、ユーモア、物語、参加の仕掛け、身近な違和感などを通じて、受け手が自ら考えたくなる入口をつくっています。

企業にとって重要なのは、社会性のあるテーマを扱うこと自体ではありません。自社のブランドや事業が、その課題に対してどのような視点を持ち、どのような変化を生み出せるのか。その接点を具体的な体験として示せるかが、メッセージの説得力を左右します。

2.当事者を「描く」のではなく、当事者の視点から設計する

インクルーシビリティや文化的背景を扱う作品では、誰を主役にし、誰の言葉や感覚を表現の中心に置くかが、これまで以上に問われています。

一方的に「支援する側」の視点から語るのではなく、当事者が日常で感じている違和感や願い、文化的な背景を起点にする。そうすることで、多様性は企業姿勢を示すための装飾ではなく、表現そのものを形づくる前提になります。

これは映像や広告表現に限りません。商品・サービスの設計、情報の伝え方、イベントや店舗での体験、顧客とのコミュニケーションまで含め、誰にとっても参加しやすい状態をどうつくるか。ブランドのあらゆる接点を見直す視点につながります。

3.ブランドの役割を、長く触れたくなる物語へ変える

短時間で商品情報を伝える広告だけでは、生活者の記憶に残りにくくなっています。2026年の受賞作では、ブランドの価値を説明する代わりに、生活者が時間を使って触れたくなる物語やコンテンツとして届けるアプローチが目立ちました。

ここで求められているのは、映像を長尺化することではありません。ブランドが本来持つ価値や文化的な背景を掘り下げ、それを最も伝わる形式へ翻訳することです。映画的な物語、音楽、ドキュメンタリー、体験設計など、表現手法は異なっても、そこには「最後まで見たい」「誰かに伝えたい」と思わせる理由があります。

AIによって制作手段が広がる今、差別化につながるのは技術そのものではなく、何を語るべきかを見極める力です。ブランド固有の視点を掘り下げ、生活者にとって意味のある体験へ変えられるか。その問いが、これからのクリエイティブにおいてますます重要になるでしょう。

企業の理念や価値を、届くブランド体験へ

社会や文化と関係を築くクリエイティブを生み出すには、ビジュアルや映像を制作する前に、ブランドの価値と課題を整理する必要があります。自社は誰に対して、どのような変化を生み出したいのか。その問いを明確にし、写真、映像、デザイン、体験へと落とし込むことが重要です。

アマナは、企業やブランドの本質的な価値を整理し、コミュニケーションへ翻訳するブランディング支援を行っています。また、TVCMやブランドムービー、Web動画など、目的や接点に合わせた映像制作にも対応しています。

社会に対してどのような存在でありたいのか。その考えを、生活者に届く体験や物語としてどう表現するのか。ブランドのこれからを考える際は、アマナのブランディングサービス、TVCM/ムービー撮影サービスをご覧ください。

アマナのサービス
プランニング&デザイン/ブランディング
ビジュアル/TVCM -ムービー撮影

文:小林拓美

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