ヤプリの成長の礎となる「コミュニケーション部」とは?〜「マーケティング」でも、「セールス」でも、「CS」でもない何か〜

“Mobile Tech for All”を理念に掲げ、さまざまな企業にクラウド上でのアプリ開発・運用・分析を可能とするプラットフォーム”Yappli”を提供している株式会社ヤプリ
そんなヤプリでは、現在新しく「コミュニケーション部」を立ち上げ、「コミュニティ作り」にも取り組んでいるそう。

現在の導入企業数は、300社。多くの企業の課題解決のために奔走して来た彼らは、1システム会社として、どのようなコミュニティを作ろうとしているのか。
マーケティングスペシャリストとして、PARCOやKIRINを経て2019年にヤプリにジョインした島袋孝一氏に、B2C,B2B問わず無視出来なくなってきたコミュニティ作りの必要性についてお伺いしました。

SaaS型ツールを提供するヤプリのマーケティング組織は「The Model型の営業スタイル」

SaaSとは、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」の略で、ベンチャー界隈において、B2B SaaS企業がとても勢いのある時代に突入しています。なぜなら、昨今、事業会社がスピード感を持った施策展開を行いたいので、従来まで「システム会社」や「ツールベンダー」が、「重厚長大なシステムを受注して、個別開発(スクラッチ開発)して、納品する」というスキームの限界を迎えているのも散見されます。そのような背景から、ヤプリもSaaS型ツールを提供しています。

そしてヤプリのマーケティング組織は、基本的には、「The Model型(※1)」の体制となっています。それぞれのセクションの専任スタッフが、各ファネルに応じた施策展開を行い、ヤプリ自体のビジネスのサクセス、つまり「顧客のビジネスのサクセス」へと一丸になって取り組んでいくスタイルです。
(※1)2019年1月に発売された「The Model」という書籍に詳しく書いてあります

しかし、「The Model」の書籍には掲載されていないし、世の中のB2B企業にもあまり例を見ない組織なのだけれども、ヤプリとしてどうやら必要そうだとして2019年1月に「コミュニケーション部」が設立されました。

ーー島袋さんがヤプリにジョインしたタイミングですね。特別に島袋さんのために作っていただいたのでしょうか?
そうみたいです(笑)
ただ以前より、CCO(Chief Communication Officer)という形で、社内には役員が就任していたりしていましたけれども、組織として本腰入れたい、と。
役割・コミュニケーションのベクトルとしては、社外と社内の2方向あります。社外向けには、既存のビジネスサイドチームが守備範囲とする「未来の取引先」やCS部門が担当する「既存の導入企業」の横断的ケアはもちろん、ヤプリを導入していないが、ヤプリの「ファン」として、平時よりコンタクトしている方々のコミュニケーションハブとしての機能を持ちます。

一方社内向けには、年々増加する社員のインターナルコミュニケーション・インナーブランディングコンテンツ企画進行・バックオフィスチームとの連携という役割を担っていきます。「広報」や「総務」とも異なるミッション。明文化の難しい、社内や業界でも前例のないジョブディスクリプションなので、社内からも「何をしている部門なんだろう?」と思われがちなので、社内外への情報発信は、こまめに行なっています。

全てのフェーズを横断するコミュニケーション部

ヤプリで現在取り組んでいる「コミュニティ作り」

2019年1月からなので、まだヤプリではコミュニティへの取り組みは始めたばかりです。プロダクトやサービスによってコミュニティの考え方は全然違うと思うので、僕らなりのやり方をこの半年間、試行錯誤しながらやってきました。「ミスターコミュニティマーケティング」こと小島英揮さんの取り組みや考え方や、さとなおさんの「ファンベース」は、社内でも大きな影響を与えています。2019年4月のMMU(Mobile Marketing UPDATEという名称のトークセッションイベント)のテーマでも「ファンベース」や「コミュニティ」を取り上げました。
アプリを作るだけの会社ならたくさんあるけれど、ヤプリの特徴として「カスタマーサポート」と「カスタマーサクセス」という二つのチームがあって、プロダクト提供後も導入企業を継続的にサポートしていくというものがあります。
基本的には、動画やQ&Aで画面の使い方を知ってもらったり、伸ばすために分析をしたり、「オンライン」で解決できるのが理想ですが、それをやっていく上で、同時に「オフライン」での繋がりも必要だと考えるようになりました。
その一環として実験的に始めたのがカスタマーサクセス部が主幹し、クオーターに一度のペースで開催している「Yappli User Meetup(YUM)」です。

YUMでのワークの様子

ここでは、既存ユーザーを集めて懇親会やワークショップを開いています。既存ユーザーは、どうしても自分たちのアプリに対して、振り返る時間が取れません。そこで、他社と繋がることで新しい事例を知ってもらったり、こちらからネタを用意して、ワークをしてもらったりする場を作りました。

まずは「コア」なファンだけを集める

ーーなるほど。そのミートアップは、どのような形で始めたんですか?
まずは、「コア」な人だけをめちゃくちゃ限定的に誘うところと、テーマを作るところから始めました。「ユーザー会をやります」と全体にメルマガを送るのではなく、こちら側で喜んで来てくれそうで、盛り上げてくれそうな十人ほどに声をかけましたね。システム会社なのに全然スマートではなく、ビクビクしながらお誘いしました(笑)。
でも、やったあとの反応はすごく良かったんですよ。「ヤプラー」としてうちへの愛をすごく感じましたし、飲んで喋って盛り上がって、時間が来ても帰らないくらい。実際のアプリKPIとその結果をまとめていただき、各企業様ごとに発表の時間を設けましたが、非常に熱量高く手応えを感じています

ーー「ヤプラー」!
最近では別軸で、「Yappli Marketing Club(YMC)」というテーマを絞った会を開催しています。既存のお客様とのコミュニケーションだけでなく、「Yappli」のプロダクトサービスを導入している・していない、に関わらず、企業の担当者様がお集まりいただける「コミュニティ」が必要だと考えたのです。その「コミュニティ」とは、一般的なマーケティングやモバイル・デジタルなど、テーマ特化したマーケティングの勉強会とクローズドなオンライングループです。

例えば、鞄屋さんだけを2、3社集めたり、マーケティングのボードゲームの体験をしたり、Instagramマーケティングの勉強をやったりする会を少人数で開いています。
そして、「Yappli Marketing Club(YMC)」と既存ユーザーコミュニティの「Yappli User Meetup(YUM)」を混ぜ合わせる試みもしています。
ただ、現在の「YMC」はアプリよりもマーケティング総論やSNSの話が中心なので、実際には使っているユーザーの話だけを聞きたい人もいるし、これはこれで面白い会だと言ってくれる人もいる。反応は半々くらいなので、こちらも実験しながら少しずつ混ぜていっています
今はまだ、属人的でクローズドな段階ですけど、これが今後ヤプリ側ではなくてファーストピンを見つけて、パプリックに広げていくのが理想ではあります

伴走者型プロダクトの「コミュニティ作り」で、ぶち当たる壁とは?

ーーコミュニティを作るにあたって、困難なことはありましたか?
実は、根本的な壁があります。コミュニティ作りをしている他社と情報交換をしているなかで気付いたのですが、うちは自立していない、伴走型のプロダクトなので、他社事例を転用することができないんです。発注元・発注先というよりもフラットに「一緒にアプリを作っていく」、かかりつけ医のようなポジションなんですよね。
導入企業によっては月一度訪問をして、アナリティクス(健康診断)をしながら、症状に合わせたソリューションを提供していきますが、その広告戦略がアプリ本体のみに留まらず、空中戦で広告をうったり、店舗の訴求を提案したりも含まれてきてしまいます。
だから、導入企業によってニーズが異なるんです。
ただ、最初はぴったり寄り添っていたのが、たまに来るぐらいの関係に変わるポイントがあって、そこに来て始めてオフラインでのミートアップ(集合検診)がうまくいくようになるのかな、と。

ーーなるほど。ハイタッチを経てから、ロータッチとしてのオフラインコミュニティが活きてくるんですね。
ユーザーのなかには当たり前ですが、好きとか嫌いとかではない、ファンとは別のピラミッドがあるんですよ。そして、どのレイヤーの人もうちのファンになってくれるためには、オフラインにもっと力を入れて、そこでしか解決できない問題をテーマごとに集まってできるようになればいいなと思っています。
やっぱり、お客様が喜んでくれるのが一番の成果なのです。今のところミートアップの満足度アンケートは「期待を込めて」の9割5分で、ありがたいことに不満という人はいません。このまま定期的に開催し続けることが目標です。
また、塩梅が難しいのですけど、現状だとうちのカスタマーサクセスチームが良くも悪くも「おもてなしの心」がありすぎて、年に一度開催する大規模な運動会のように気合が入ってしまっているので(笑)。重すぎず、軽すぎず、ちゃんと毎年やり続けるのがKPIです。
定性的なファンづくり、困ったときに頼ってもらえるようなポジションづくりを念頭に、「ヤプラー」の数字を増やしていくというよりも、「ヤプラー」という概念を増やしていくのがミッションです。

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