組織の創造性を高める「インターナルコミュニケーション」の重要性。自社の価値発掘ワークショップ

vol.146

240702_eventreport

SPEAKER スピーカー

パンデミックに伴い働き方のニューノーマルが浸透した現在、多くの企業で社員間のコミュニケーション不足や部署間の連携不足が課題として挙げられています。この状況を打破するためには、社員それぞれが主体性を発揮しながら、会社やチームで同じ目的意識のもとに協働する組織文化の形成が重要です。

7月2日にアマナが開催したリアルイベントでは、このような変革の時代の中で企業が価値を発信していくために欠かせない「ブランディング」と「インナーコミュニケーション」という2つの観点から、思考を鍛えるワークショップを実施。

本記事では、アマナの杉山諒(プロジェクトデザイナー)による、自社の価値発掘を行うワークショップの様子をまとめます。

インターナルコミュニケーションの重要性

インターナルコミュニケーションとは、「インナーコミュニケーション」「社内広報」とも呼ばれ、組織間のコミュニケーションを指します。多様性が重視される現代では、新型コロナウイルス感染症流行などのパンデミックの影響もあり、ビジネスにおいても個の働き方が尊重される傾向があります。

しかし、それと同時に組織では部署間やメンバー同士のつながりが希薄になり、多くの企業が、メンバー全体で同じ目的意識を持つ組織文化の形成が難しいという課題に直面しています。そこで重視しなければならないのが、インターナルコミュニケーションです。

インターナルコミュニケーションの方法はいくつかあります。経営層からリーダー、現場へと降りてくるトップダウンのコミュニケーションや、反対に現場からリーダー層、経営層へと上がっていくボトムアップのコミュニケーション、現場間でのコミュニケーションなどが考えられます。また、コミュニケーションの内容も、業務に関する情報が飛び交うオフィシャルなものから、雑談のようなアンオフィシャルなものまでさまざまです。

20240702report_2_1.png

インターナルコミュニケーションの役割

次に、インターナルコミュニケーションの役割を考えてみましょう。

下図のマトリックスは、 インターナルコミュニケーションがカバーする情報の範囲を示します。インターナルコミュニケーションの代表としてよく挙げられるのが、社内報をはじめとする右下の「業務連絡」です。しかし、インターナルコミュニケーションは、そのほかの「イノベーション」「意識改革」「ブランドイメージ」といった情報の発信・共有も対象であるといえます。

20240702report_2_2.png

例えば組織メンバーの意識改革や、世の中に向けた新たなイノベーションの話、ブランドイメージや現状の自社の価値がどこにあるのかなども含めて、広く社内のコミュニケーションを発信したりコンテンツにしたりすることで、インターナルコミュニケーションの幅が広がります。

社内コミュニケーションの課題

では、インターナルコミュニケーションに感じる課題とはどこにあるのでしょうか。参加者からは、以下のような課題が挙げられました。

・理念や課題感など、会社として伝えようとしていることがちゃんとメンバーに伝わっていない
・社内報の閲覧率が低い
・部署間で考え方や目的が異なる

文化の違いやアンオフィシャルなコミュニケーションが少ないなどさまざまな課題があるものの、注目すべきは、多くの人が集まれば集まるほどどうしても分断が生じてしまう、「サイロ化」という問題です。

スクリーンショット 2024-08-26 12.47.28.png

組織のサイロ化が起こる理由

多くの組織でサイロ化や縦割り現象が生じるもっとも大きな理由は、部門・部署ごとに目先のミッションが異なるためです。中には部門ごとの目先のミッションや目標を追うことに精一杯になり、自分ファーストの思考になっているリーダーがいるケースもあります。

20240702report_2_4.png

短期目線かつ自分ファーストの思考に陥りやすい要因は、組織の構造にもあります。例えば、経営層は中期経営計画を追い、リーダー層は組織や現場の課題解決に奔走し、現場は目の前の業務に追われているケースでは、それぞれの層が短期的な目標だけに集中してしまいズレが生じやすくなります。

理想は、同じ北極星をめがけて全員が同じ方向を向いている状態です。それぞれの組織のリーダーがバックキャストの目線を持っていること、全体最適で考えられていることが重要であり、組織全体でその思考を養い、目指す必要があります。

20240702report_2_5.png

サイロ化をなくす方法とは

組織のサイロ化は、組織の拡大に伴っては避けては通れない課題であるといえます。サイロ化をなくすためには、組織全体で以下に取り組まなければなりません。

20240702report_2_6.png

まず第一に、理念や組織が目指しているゴールを組織に浸透させなければなりません。ここでの「浸透」とは、「全社共有している」だけではなく、理念やゴールが言葉として一人ひとりの中で腹落ちしている、芯から共鳴できているような状態を指します。

そして、特にリーダー層の人材育成・採用や、議論が建設的に生まれるような文化形成を行うことも大切です。

組織の中で「個の創造性」を発揮するために

サイロ化が進むと同時に、部書間が閉じられていくだけではなく、構造的に個人や組織の創造性も閉じられてしまいます。例えば、新しい組織や環境に参画してすぐは新たな挑戦への期待が膨らんでいるものの、前例や組織の文化・ルールなどを理由に提案が却下され、次第に自身の創造性が萎んでいくといったケースも考えられます。組織のルールを大事にする文化そのものに間違いはないものの、個の創造性が閉じていくことで組織の創造性も低下し、企業やブランドの発展や成長の機会を逃してしまう可能性があります。

このような事態を防ぐためには、個人は自身が感じた問いや違和感に対して向き合うこと、組織は個人からの意見や発案をまずは受け止める姿勢を見せることが重要です。

20240702report_2_7.png

多くの組織では、多様なコミュニティへ参加し多角的な視点・視座を持つ「越境人材」が組織の創造性を高めるために求められています。しかし実際は、兼業や副業などでコミュニティを増やさずとも、個々人がすでに生活の中で仕事や家庭、健康、美容など多様な面を持つ「越境人材」です。組織には、このような個々人のオールライフを受け止める風土が必要であり、それによって組織の創造性が高まると考えられます。

20240702report_2_8.png

アマナの取り組み事例

アマナでは、組織のサイロ化をなくすと同時に、創造的な組織を作るためにさまざまな施策を取り入れています。

そのひとつが、メンバーのポートフォリオ発表会です。メンバーがそれぞれ自身の経歴や実績などをポートフォリオにまとめて発表する機会を設けることで、これまで知らなかったパーソナリティ性やスキルの発見につながります。それによって新たな仕事が生まれたり、個々人の強みを生かした組織作りができたりといったメリットが得られます。

20240702report_2_9.png

そのほか、アマナでは「MVP(Most Vivid People)アワード」も実施。これは、メンバーの「自分らしさ」を称えるもので、一人ひとりの思いや個性に焦点を当てて表彰を行います。

20240702report_2_10.png

このように、メンバーそれぞれの「らしさ」を組織として受け止めることで、個々人の心理的安全性を高めると同時に、メンバーの創造性を存分に発揮できる組織作りが叶います。また、メンバーの組織への愛着も増し、組織全体のことを考えながら活動しようという気持ちが養われるといったメリットも期待できます。

創造的な組織を作るための価値発掘ワークショップ

創造的な組織を作るためには、自社でどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。いくつかのワークを通して、自社の課題を洗い出すとともに取るべきネクストアクションを探ります。

まず、企業のビジネス(事業)・人・文化の3つの観点から、「捨てること」「活かすこと」「生み出すこと」をそれぞれチームで議論しました。自社の弱み・強み、そして必要なことを洗い出し、チームで共通認識を得ます。

20240702report_2_11.png

最後に、ワークを通して得られた組織の特徴を一言でまとめたのち、その特徴を踏まえて自社は何をすべきなのかを議論します。

20240702report_2_12.png

企業によって、抱える課題や見つめるべき軸はさまざまです。最後のワークを経て、以下のような、企業それぞれの文化や人材傾向を分析したネクストアクションが導かれました。

「メンバーが真面目すぎる、きっちりしすぎている」という意見や、発想力のある人材が増えた方がいいという意見があった。提案したら受け入れられる文化はあるが、保守的な傾向が強い企業であり、もっと想像・妄想する機会を強制的に作っていく必要性があると感じた。
企業の歴史が長い分、古いしきたりが残っている。有能な若手社員を筆頭に社内コミュニケーションを活性化させたり、有能な技術者を前面に押し出していったりなどの必要がある。日本ならではの保守的な姿勢とチャレンジングな姿勢のどちらも有しているため、グローバルカンパニーとして確立できるよう躍進していきたい。
組織の特徴は「自信がない」こと。思考停止してしまっている社員もいるが、色々な事業を展開している企業であり、技術やノウハウもあるからもっとビジネスで価値を広げていけると感じる。
フォアキャスト思考が強い組織。属人的で、分断された縦割りの組織であるという意見があった。ビジョン思考・バックキャスト思考での見直しが必要。
質実剛健で真面目な企業である。事業拡大していこうという方針に変わっており、仕事を待つのではなく、自分たちで事業を起こしていく取り組みを始めている。

IMG_1081.JPG

IMG_1090.JPG

IMG_0278.jpg

日常の中で、腰を据えてメンバーとともに組織の話をする機会はなかなか得られません。今回のワークショップを通して、参加者は個々人の思いを互いに共有しあいながら、自社が目指すべき姿や方向性をともに考えることができたようです。

創造的な組織を作るためには、「何よりも一人ひとりの思いが大事」だと杉山は言います。多様性が説かれる現代では、組織が成長するためにはメンバーの思いや個性を受け止め、創造性を高めていかなければなりません。

創造的な組織作りをサポートするアマナのソリューション

アマナでは、クリエイティブでさまざまな企業やブランドをサポートしてきた実績を生かし、創造性人材を育てるプログラム「Creative Camp」や、創造性人材を組織に派遣する人材派遣プログラム「GreatRIVER」などを用意しています。

急速に変化が進む世の中で企業やブランドが成長を続けていくためには、創造的な組織作りが欠かせません。アマナはこれらのソリューションを提供しながら、組織はもちろん、社会全体の創造性向上に寄与します。

SOLUTION

CreativeCamp

CreativeCamp

複雑で先行きの見えない世界においては、 人本来の持つ創造性を解き放ち、主体性を持ち躍動できる人材が求められます。amana Creative Campでは、 再現性を持ったクリエイティブナレッジを提供することで、個の創造性を高めると共に、企業の競争力を高める文化創りへと導きます。

サービス資料ダウンロードはこちら

KEYWORDキーワード

本サイトではユーザーの利便性向上のためCookieを使用してサービスを提供しています。詳しくはCookieポリシーをご覧ください。

閉じる