プレスリリースの目的は、企業の商品やサービスをメディアに取り上げてもらうこと。しかし、影響力のあるメディアに詳しく取り上げてもらうのはなかなか簡単なことではありません。一方、デジタルコミュニケーションが進むなか、PR活動はSNSで拡散されて広告以上の効果をもたらすこともあります。一旦、メディアに注目されれば、営業面だけでなく、社員のモチベーションアップや新たな人材確保などさまざまな広がりが期待されます。そのために大切なことは、内容が正確かつ刺激的に「伝わる」こと。「伝わる」プレスリリースを作る、7つのポイントをご紹介します。
まず大切なのは、「What’s new?」という視点で紹介する商品やサービスに着目して、伝える情報を整理することです。メディアには毎日何十、何百というプレスリリースが届くので、「私たちの会社は、○月○日に、××をします」という情報だけではなかなか取り上げてもらうことはできません。読み手に「刺さり」、取り上げてもらうためには、製品やサービスの「何がすごくて」、「どう新しいのか」を示すこと。この点を意識して、実際にプレスリリースを作成する前に、タイトルや本文に盛り込む内容を整理しましょう。
下調べを通じてさらに知りたいことがあれば、記者の目線で営業や開発担当者にインタビューするのもひとつの方法です。与えられた資料の情報だけにとらわれず、積極的に情報を集めて訴求ポイントを精査しましょう。
伝えたい情報を整理し、内容が固まったら、そのイメージに合ったビジュアルを選びましょう。文字で伝わりにくい情報を伝えるだけでなく、意図するイメージを読み手に共有するためにも、ビジュアルの活用は欠かせません。
コンセプトを伝えるキービジュアルは、商品やサービスのその先にある価値をもイメージさせることができれば最高です。もちろん商品の機能や細かい特徴を伝えるために複数のビジュアルを使うのも効果的です。場合によってはカメラマンやイラストレーターに撮影やイラスト編集をお願いするのもいいかもしれません。複数のビジュアルを使う場合は、それぞれの役割に応じて大きさやレイアウトを工夫しましょう。
あるTV局のニュース番組のプロデューサーによると、「5秒で分かるのが良いプレスリリース。30秒読んで分からなかったら諦める」そうです。プレスリリースにおいてもファーストインプレッションは重要です。タイトルには商品やサービスの売りやニュース性がひと目で分かるキーワード(トリガー)を盛り込みましょう。必ずしも商品やサービスの名称自体を入れる必要はありません。
もちろん「伝わる」ためには、記事やビジュアルとの整合性も大切。最初は仮タイトルを付けておいて、記事を書き終わった後で内容やアピールポイントが反映されているか確認し、推敲しながら本タイトルを決めていくといいかもしれません。
プレスリリースは、広告とは違い、あくまでメディア側の判断で取り上げてもらうもの。企業のアピールだけでなく、「社会の一員として求められる情報を発信する」というスタンスが必要です。
そういった意味で、上から目線の文章や、専門用語ばかりを並べたりするのはNG。相手に不快感を与える用語などにも気をつける必要があります。5W1H(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どうするのか)を押さえたうえで、メディア関係者への「案内状」のつもりで、「聞いていただく」「目を向けていただく」というトーン&マナーで文章を作成しましょう。
記事には、「なぜ今なのか?」「なぜこの製品なのか?」といった読み手の疑問に答える情報を端的に入れましょう。製品情報やリリース日などの「事実」に加えて、業界動向やマーケットの背景、将来のビジョンといった情報に触れることで、受け取った側にリリースの意義がスムーズに伝わり、ニュースバリューを上げることができます。場合によっては、「さらに掘り下げたい」という興味を持ってもらい、メディアの追加取材を引き出せるかも知れません。
こうした情報を入れる際にひとつ気をつけたいのは、あくまで「端的」にして、余白を残すということ。情報量が多くなりすぎると読まれないうえ、メディア側で記事にする場合もアレンジが難しくなります。バランス感覚が必要ですが、ある意味では広報担当者の腕の見せどころかもしれません。
業界の動向や市場背景といった情報に加えて、具体的なユーザーメリットなど、ストーリーの要素をプラスすることにより、プレスリリースはより伝わりやすいものになります。読み手にとっては企業広報が自分に関わる身近な情報に変換されることで、ニュースとしての意義が高まり、より理解しやすくなるのです。企業が発信したい情報と読み手の関心・ニーズの接点を探り、切り口を考えるのは、プレスリリース作成の大切なポイントであり、醍醐味でもあります。
メディアはさまざまな社会問題や世間の関心事を報道し、読者や視聴者に届ける役割を担っています。記者もその観点でネタを探しているので、それに沿わない情報はなかなか取り上げてもらえません。商品やサービスが社会にどんな影響を与え、どんなソリューションに結びつく可能性があるのか、プレスリリースに社会性を持たせる要素も加えましょう。
ただし、社会性を意識しすぎると、理屈っぽく、鼻にかけたような内容になりかねません。あくまで記者や読者にリマインドするレベルにとどめ、商品やサービスとの関連性にポイントを置き、そのうえで、商品の特徴やアピールポイントといったキャッチーな要素を箇条書きにしたりして、全体のバランスに気を配りながら、記者のニーズに応えていきましょう。
「伝わる」プレスリリースを作る7つのポイント、いかがでしたでしょうか?ビジュアルやタイトル、本文まで読み手の目線で工夫して作りあげていくことで、プレスリリースはより「伝わる」ものになります。資料をただ小奇麗にまとめるだけでは、受け取る側も作る側も楽しくありません。メディアはもちろん、自社の社員にとってもサプライズとなるような、「What’s new?」を見つけ出す汗をかいてみてはいかがでしょうか。