アマナには100人を超えるクリエイターが在籍しています。プランナー、フォトグラファー、ビデオグラファー、エディター、CGクリエイターなどさまざまな領域を担い、日々の仕事の中で企業や社会の課題に対してそのクリエイティビティを生かし、解決の道を模索しているのです。この連載では、アマナのクリエイターが1人ずつ登場。社会課題を解決するためにどのように動き、何を発信しようとしているのか、そのプロセスと思いを紹介します。
第8回に登場するのは、プランナーの高橋みずき(以下、高橋)です。自身を「オールラウンダー気質」と評する高橋が案件を通して感じている問題意識や、専門性が求められる局面におけるオールラウンダーの存在意義について、話を聞きました。
—— アマナではどのような仕事をしていますか。
高橋: ブランディング・マーケティング領域でのプランニングを担当しています。アマナでいえば「企業が抱える課題に対してクリエイティブで解決するためのプランニング」というのが本流だと思いますが、私の場合はもう少し手前の、戦略策定フェーズでの相談が多いです。課題感はあるものの「何から始めたらいいのかわからない」「どう進めたらいいかわからない」といった、向き合うべき課題を明確にするところから並走するような案件ですね。
—— それは、企業が自身の課題を把握していない、ということなのでしょうか?
高橋:というよりは、コミュニケーション手法が多様化し、生活者の不可測なリアクションが生まれ、向き合うべき課題が見えづらい、企業としても決めづらい、ということかと思います。
以前は「採用」という文脈であれば、大手就職メディア一択でした。ですが今では、SNSを含め多様なタッチポイントがあり、「どのようなコミュニケーションがあり得るか」だけでもさまざまな選択肢があります。 そのような時にプランナーとしての私に求められるのは、「採用における広告手法の提案」ではなく「採用における企業ブランディング」という、より抽象度の高い内容になります。「就活における世相や学生の意識を明らかにしながら具体的な選択肢を提示し、その中のどれを・なぜ行うべきか」という戦略策定が求められる、ということですね。
——そのように、企業が抱える課題を、私たちがより明確に具体的にしなくてはならないというシチュエーションは増えているのでしょうか。
高橋:今まで少なかったということではないと思います。とはいえ、多様化・複雑化が加速し、私たちも課題の捉え方を誤ってしまい、本来なら全体を最適化する提案をすべきなのに、できていなかったことがあるかもしれません。
提示される課題は、多くの場合、ある製品やサービスがリリースされ生活者の元に届くまでの流れの一部分です。私たちがベストだと提案しても、全体を見渡した時に実はそれが最適解にならない可能性が常にありますよね。だから、「なぜその課題が生まれたのか」という本質を意識したうえで良いものを生み出すことが求められているはずです。
——企業ですら気づいていない課題の本音とも言える部分に着目し、プランニングを行う。そのためには全体を見渡せる力が必要ですよね。
高橋:そうですね、ただ見渡すだけでなく、複数の領域の知見を持ち合わせ、さまざまな業務を幅広くこなさないと、的確なプランニングはできないと思います。
——高橋さん自身の横断的な思考や動きは、どのようにして身に付いたのでしょうか?
高橋:営業、プランナー、プロデューサー、新規事業開発、と広く経験してきましたが、どのキャリアにも共通してあった課題感は「全体の中でどうあるべきか」を意識しないと、生活者に受け入れられない、社会に実装されない、ということでした。
いくら良いクリエイティブでも届け方を間違えば伝わらない、戦略はよく見えても生活者や社会を意識しないと実行できない、というケースを多く見てきました。 だから全体を俯瞰したり、マーケットを全方位で捉えて考えを巡らせることの重要性を常に意識してきました。
—— 横断することのおもしろさや効率性に気づいた、ということでしょうか。
高橋:クライアントワークとなると、最後はある程度クライアントに委ねなければなりません。だから、本当に実行できるか・機能するのか、ということを大事にしてきたのかもしれませんね。 オールラウンダーというと「器用貧乏」というネガティブな受け取られ方もあるかもしれませんが、複数の領域の知見があり、さまざまな分野の業務で横断的に活躍できる、というのはある意味「スペシャリスト」なのではとも思っています。
——今は山梨県甲府市にお住まいですね。移住の理由は何ですか?
高橋:広告業界というのは「遠くの誰かに届ける」という仕事で、なかなか手応えが感じづらい業界だと思うんです。売れたのは製品がよかったのか、タイミングなのか、コミュニケーションなのか、わからない。 だから生活にはもう少し「手ざわり」「手ごたえ」がほしかったんです。子育てのことも考えて、土地探しから始まり、家を建てて引っ越して、8年ぐらいかけて今の場所に移り住みました。
——甲府での生活で、何か変化はありましたか。
高橋:住まいは甲府、仕事はときどき東京、という生活ですが、スピード感の違いを意識するようになった分、時間の使い方にメリハリをつけやすくなって、頭に自然と浮かんでくる考えにぼんやりと身をゆだねることができるようになったかなと。東京で暮らしていた時は高速で流れていく時間についてくのがやっとでしたが、今は「ゆっくりと」思考することができるようになったと感じます。
——なぜ今の時代に、オールラウンダーが必要とされるのでしょうか。
高橋:一つ一つの専門領域が狭くなっているが故に「自分の領域では正解だけど他の領域でどうかはわからない」という傾向は出やすくなっていると感じています。
今までは企業もスペシャリストを求めていたし、育ててもいました。そうした圧倒的なスペシャリストがいればたいていの課題は解決できていたはずです。多様化・複雑化が進むことでそういった部分最適が社会に受け入れられなくなってきているし、機能しづらい状況でもあります。そんな時に、各分野のスペシャリストたちとコミュニケーションを取りながら、広い視野で柔軟に解決策を見出すポジションの人=オールラウンダーが、大事になってくるのでしょう。
—— それは、コミュニケーションが俯瞰しにくい、横断しづらい方向に進んでいるということですか?
高橋:そうですね、だから意識的に俯瞰することが重要なんです。個々の専門分野ではスペシャリストにかなわないとしても、スペシャリストの考えを理解することができます。
解決策を導く際には、複数の考えを交えて新しい発見をする、私はそのプロセスを「知の交換」と呼んでいますが、「知の交換」がなされる場ではそれぞれに主張があるわけで、受け入れて咀嚼する必要があります。専門領域の考えが翻訳され掛け算になる。全体整理をしながらより良い提案へと昇華させることができるのです。
——なるほど、スペシャリスト同士の知の交換を昇華させていく。
高橋:今、ご近所の方と一緒に野菜を漬けたり味噌を仕込んだりと、移住の目的だった「手ざわり」のあることに挑戦しています。そうやって手仕事を通じて、地域の方々とも「知の交換」をしています。
—— オールラウンダーとしての道を進むんですね。
高橋:最初から仕事の知識や経験が豊富だったわけではなく、先輩方やクライアントの担当者とのコミュニケーションを通じてオールラウンダーに育てていただきました。
最終的にはクライアント企業の事業全体が最適化されるよう、チームメンバーが力を発揮できる環境を作って、スペシャリストたちをもっと輝かせていきたいですね。
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取材・文:秋山龍(合同会社ありおり)
編集:大橋智子(アマナ)
撮影:AKANE(アマナ)
AD:中村圭佑
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