画像生成AIは、テキストの入力に基づいて自動的に画像を生成する人工知能技術です。ディープラーニングを用いて大量の画像データを学習し、専門知識がなくても、簡単にクリエイティブな画像を作成できるその操作性の高さから、広告業界やデザインの分野で大きな注目を集めています。
本記事では、最新の技術動向、法的リスク、そして実際の活用事例を紹介し、企業の宣伝広告担当者が今後AI技術をどのように活用できるかを探ります。
セガサミーホールディングスは、自社製品の画像を学習した画像生成AI環境を新たに構築し、既存製品のデザインを踏襲した改善案などを短期間に幅広く生成する取り組みをおこない、デザイン案の件数を従来の100倍に増やすことができたと発表しました。これにより、デザイナーはAIが生成した大量のデザイン案を基に、より洗練されたクリエイティブに集中できるようになりました。また画像学習や商品化は、取引先との契約内容を遵守し、かつ他社の権利を侵害しない範囲でおこなっているとのことです。この取り組みは、デザインの質と効率を両立させる新たな手法として、クリエイティブ業界に革新をもたらしています。
出典: 株式会社セガ フェイブ https://www.segafave.co.jp/news/240604_1/
AIと著作権に関する議論が進む中、中国では画像生成AIにより生成された画像について、サービス提供事業者の著作権侵害を認める判決が出されました。原告はウルトラマンシリーズ作品の著作権者である円谷プロダクションから中国本土における複製権等の独占的権利や、自ら権利を保護する権利が付与されていました。被告は会員専用のAI画像生成機能をWEBサイトにて提供しており、サイト上で「ウルトラマンを生成」等の入力をおこなうとウルトラマンと同一・類似する画像が生成されていたことから損害賠償請求につながりました。裁判所は、生成AI画像の多くの重要な特徴がウルトラマンの画像と非常に高い類似性があると認定し、著作権の侵害行為を直ちに停止することや、損害賠償額を1万元(約20万2000円)とする判決を下しました。この判決は、今後のAI活用における法的リスクを示す重要な事例となっています。
出典: 企業法務ナビ https://www.corporate-legal.jp/matomes/5645
Googleは、AIチャットボット「Gemini」の画像生成機能に最新モデル「Imagen 3」を導入しました。Imagen 3はテキストの入力で、写実的な風景や油絵風、クレイアニメ風など、様々なスタイルの画像を生成できます。テキストのレンダリング機能も強化され、画像内に文字を自然に組み込むことができるようになり、プレゼン資料作成などへの活用がしやすくなることが期待されています。
出典: ASCII×AI https://ascii.jp/elem/000/004/218/4218404/
SNSサービス「X」(旧Twitter)は、対話型AI「Grok(グロック)-2」のベータ版をアップデートし、画像生成機能の提供を開始しました。この機能はGrokのAIチャットbotと同様、Xの有料プラン「プレミアム」および「プレミアムプラス」の加入者向けに提供され、実在する人物やキャラクターの画像生成も可能です。しかし、Xではこの機能についてディープフェイクの拡散を懸念する声があがっています。今後、Grokは画像や言語など複数の入力ソースを扱えるマルチモーダル機能の提供も予定されています。
出典: IT media NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2408/14/news162.html
Adobeの「Photoshop」は、生成AIモデルを新型の「Adobe Firefly Image 3」に刷新し、画像生成機能が追加しました。テキスト入力から自動的に画像を生成できます。また、専用ウインドウから、参考画像をアップロードすることで、生成したいスタイルを伝えることもできます。
出典: MdN https://www.mdn.co.jp/news/7270#google_vignette 、画像はAdobe.comより
ボルボの中古車販売などを手がけるJプランニングは、新たなサービス「AI×カーラッピング」を発表しました。2024年6月に開催された「TOKYO OUTDOOR SHOW2024」では、ボルボがスウェーデンのメーカーであることから、北欧を象徴するエルク(ヘラジカ)のデザインが施された車が出展されました。デザインはすべて画像生成AIで作成されたもので、世界に一台だけのオリジナリティあふれる愛車をつくりあげることができます。ユーザーがオリジナルのデザインを手に入れることが可能で、カーラッピング業界に新たな風を吹き込んでいます。
出典: 株式会社Jプランニング https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000141739.html
画像生成AIは、広告制作やデザインの分野での効率化を飛躍的に向上させる一方で、著作権問題や法的リスクも存在します。企業の宣伝広告担当者にとって、AI技術をうまく活用するためには、最新の技術動向や法的課題への理解が欠かせません。AIによるクリエイティブの未来を探る中で、リスクとチャンスのバランスを見極めることが重要です。
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文:小林拓美
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