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広告業界では、現実に存在しないビジュアルをリアルに見せる「フェイクOOH(FOOH)」への関心が高まりつつあります。CGや合成技術を駆使して、実在しない構造物や映像を現実の風景に溶け込ませる演出は、SNSでの拡散を前提として強い印象と話題性を生み出しています。
強いインパクトとともにブランドの世界観を瞬時に伝え、ユーザーの記憶に残るフェイクOOH。本記事では、世界で注目を集めた最新のフェイクOOH事例を紹介しながら、その表現手法や狙い、広告としての機能の広がりについて紐解きます。
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近年、フェイクOOHは多様なブランドに採用され、その表現方法や目的も大きく広がりを見せています。本章では、話題を呼んだ4つの事例を通じて、各ブランドによるフェイクOOHの戦略的な活用方法を紹介します。
2024年7月、フランスのスキンケアブランド「コーダリー(Caudalie)」は、同社を象徴する美容液「ヴィノパーフェクト ラディアンス セラム」のプロモーションとして、セーヌ川がその美容液で洗浄される様子をCGで描いた動画をSNSで公開しました。1滴の美容液がセーヌ川の水面を美しく浄化していくような映像は、製品の持つ“美しさ”や“透明感”を視覚的に訴えるだけでなく、「環境意識」や「自然との共生」といった価値観もさりげなく表現しています。
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同広告は、2024年のパリオリンピックを控えたタイミングで発信されたこともあり、人々の環境浄化への期待や意識と強く結びつきました。現実では実現しづらい演出を通じて、ブランドの姿勢と社会的メッセージを印象づけた成功例といえるでしょう。
中国のスマートフォンブランド「OPPO」は、2024年6月、新シリーズ「Reno12」のプロモーションとして、世界中の名所にスマホが登場するフェイクOOHを展開しました。ドバイのブルジュ・ハリファ、ローマのトレビの泉、バルセロナのサグラダ・ファミリアなどの世界的ランドマークを舞台にした大胆な演出は、製品の存在感とテクノロジーの進化を印象づけています。
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さらに、ロンドンのタワーブリッジにUEFAのトロフィーとスマホが現れるフェイクOOHを、UEFAチャンピオンズリーグ開戦を目前に控えた2024年5月に公開。観客の熱狂が高まるタイミングに合わせて展開されたこのプロモーションは、時事性を巧みに取り入れることで、広告としての注目度とブランド訴求の両面を高めています。
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メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)は「MANUFAKTUR」シリーズのプロモーションとして、東京の街中にガレージが出現したかのようなフェイクOOHを展開しました。
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映像では、圧倒的な存在感と精緻なディテールを備えたメルセデスのガレージが、東京・渋谷の街中の一角に溶け込むように現れます。巨大建造物や派手な演出で目を引くフェイクOOHとは異なり、「日常に溶け込ませた非日常」を描くことで、ユーザーに違和感を与え印象を残すとともに、メルセデスのクラフトマンシップや「自分だけの特別な1台」というメッセージを際立たせています。
こうした「日常に溶け込ませる非日常的な演出」は、アマナが手がけた「Uber Eats Japan」のキャンペーンビジュアルにも見られます。都市空間に広告を溶け込ませながら、視覚的な違和感とブランドの世界観を両立させ、ユーザーの記憶に残るOOH体験をつくり出しています。
制作事例:Uber Eats Japan
同様に「日常の場に広告体験を溶け込ませる」という設計では、アマナもクリエイティブ制作で携わったことがあるタクシーメディア「TOKYO PRIME」の事例が挙げられます。タクシー乗車という日常の移動空間・時間を、ブランドとの出会いの場として再構成し、ユーザーにより豊かな広告体験を提供する好例といえます。
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アメリカ発のファッションブランドであるヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)は、ニューヨークの地下鉄構内を舞台に、2024年12月、ホリデーシーズン限定の巨大トレインが走行する様子を表現したフェイクOOHを公開。プレゼントを積み、ピンクと白のストライプで彩られた愛らしいホリデートレインが構内を走り抜けていく様子は、視覚的なインパクトとブランドの世界観を巧みに融合させています。
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都市の象徴である地下鉄という日常空間を、ブランドならではの遊び心で「非日常の驚き」をプラスすることで、視聴者の印象に残る魅力的な映像に仕上げています。
日常を象徴する駅構内にブランドの世界観を出現させるという点では、アマナが手がけた「伊右衛門」のプロモーションビジュアルも同様です。季節の移ろいや「ひと息つく時間」を想起させる演出を通じて、ブランドイメージやメッセージを人々に届けています。
フェイクOOHの魅力は、実在しないからこそ、現実の限界を超えたメッセージ表現ができる点といえるでしょう。CGによる強烈な視覚インパクトは、SNS上での拡散力を高め、多くの人の目に触れるきっかけを生み出します。具体的に、フェイクOOHは従来のOOHと比較して以下のような強みを持ちます。
・視覚的インパクトの自由度が高い:現実では設置できない巨大さや演出をCGで表現できる
・SNSでの拡散性が高い:物理的な場所に縛られず、世界中のユーザーに届けられる
・メッセージにストーリー性を持たせやすい:映像や音を活用することでブランドの背景や価値観を伝えやすい
・都市やインフラを舞台として活用できる:日常的な場所を非日常的に変換することで、注目を集めやすい
従来のOOHが「現実の中で目に触れる広告」であるのに対し、フェイクOOHは「画面越しに出会う広告」です。SNSや動画メディアを前提とした設計により、物理的な場所に依存せず、オンライン上での視覚体験を通じてブランドとの接点をつくり出しています。
フェイクOOHが今後さらに広告手法として普及することで、OOHは「現地での目撃」を前提とした広告から、「オンラインでの視聴・共有」を前提とした体験へと拡張するでしょう。その結果、広告は単なる視認の対象ではなく、現実空間とデジタル空間を横断する「拡張されたリアル体験」として再定義される可能性も孕んでいます。
例えば、アマナが企画・制作を手がけた体験型展覧会「Immersive Museum TOKYO」も、現実空間を拡張し、新たなリアル体験をユーザーに与えました。没入感あふれる巨大映像と音響によって、名画の中に「入り込む」ような体験を提供することで、リアルとバーチャルの境界を曖昧にしながら、アートがもたらす新たな価値を提供した事例です。
フェイクOOHは、単なるバズ施策にとどまりません。ブランドの価値観や姿勢、さらには社会課題へのスタンスまでもが、映像演出を通じ視聴者にダイレクトに伝わります。メッセージ性と拡散性を両立するこの手法は、これからのOOHのあり方を大きく変えていく可能性を秘めているといえるでしょう。
近年では、アマナが手がけたデジタルサイネージ活用のプロモーションなど、デジタルと空間演出を組み合わせた展開も増えてきました。OOHの表現は、リアルとデジタルの垣根を越え、体験価値を起点としたコミュニケーションへと進化しています。
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