NRIデジタル|UX設計×メディアで、旅の偶然性を期待に変える

NRIデジタル|UX設計×メディアで、旅の偶然性を期待に変える

「どこかにビューーン!」は、4つの行き先候補駅の中から「どこか」1つの駅に新幹線でランダムに旅行できるサービスです。

旅を計画する前の段階で、より多くの人に地域の魅力を知ってもらい、実際に足を運ぶきっかけの創出を図るべく、「55 Stations(ゴーゴーステーションズ)」を立ち上げました。

本プロジェクトでは、 「どこかにビューーン!」の事業のプロデュースを担うNRIデジタルの構想を起点に、アマナがビジュアル・編集設計・権利対応・実装までを一貫して支援。メディアとしての世界観を具体化し、地域の価値を読者に届ける役割を果たしています。

今回は、NRIデジタルのプロジェクト責任者・新井朗さん、現担当の福島寛子さん、立ち上げ期を担った薗田誠也さん(現:株式会社地域みらいブレインリンク所属) へのインタビューを通して、「55 Stations」がどのように設計され、具体的に形になったのか、そのプロセスをひも解きます。 

1.偶然の出会いを期待に変える体験の再定義

――当時、「どこかにビューーン!」にどのような課題がありましたか?

新井朗さん(以下、新井。敬称略):「どこかにビューーン!」は多くのユーザーにご利用いただいておりますが、 運用を重ねる中で「人気のある駅の偏り」という課題が見えてきました。ユーザーは新青森や秋田など遠方でお得感のある駅を「当たり」と捉え、馴染みのない駅が候補に含まれると再検索を繰り返す傾向があります。背景には損得感だけでなく、「知らない駅で本当に楽しめるのか」という不安がありました。本来、魅力的な可能性を秘めた偶然の出会いが、旅先での体験イメージが湧かないことにより、敬遠されてしまっていたのです。 

新井朗(Akira Arai) NRIデジタル株式会社 CIO、メディアプラットフォーム事業ユニット長

新井朗|Akira Arai
NRIデジタル株式会社 CIO(最高インキュベーション責任者)、メディアプラットフォーム事業ユニット長 
1992年野村総合研究所(NRI)入社。 デジタル変革(DX)を目指す様々な企業とのデジタルビジネス創造、JV設立に携わる。2017年日本航空「どこかにマイル」での日経優秀製品・サービス賞、2023年「どこかにビューーン!」でグッドデザイン賞をはじめ、多くの賞を受賞。

――ユーザーが知らない駅でも面白そうと感じる体験を、どのように設計しましたか?

新井:まず、定番スポットに拘らず、「こんなところがあったんだ」と思える驚きを重視しました。網羅性よりも、印象に残る体験や意外性のあるスポットを厳選し、「この駅に降りてみたい」と思える体験設計を目指しました。 

オウンドメディアの先駆者ともいえるミシュランガイドの思想も取り入れています。旅の目的地となりうる特別な食や体験の紹介を通し移動需要を創出する、いわば「鉄道版のミシュラン」をイメージしました。

――アマナに依頼した理由と、他社と比べて期待した点は?

新井:読者が思わず「行ってみたい」と感じる写真を見極める専門的な視点と、権利処理を含めたリスク管理の知見です。日本航空の「どこかにマイル」での実績もあり、ビジュアルコンテンツのクオリティと豊富な写真アセットを高く評価しました。

2.駅の魅力を引き出すクリエイティブ 

――制作段階で「想定外だった」出来事はありましたか?

福島寛子さん(以下、福島。敬称略):当初は大手雑誌社との連携を考えていたのですが、アマナさんと方針を見直し、地域に根差したメディアとの連携を強める方向に舵を切りました。その結果、その土地ならではの特色を深く伝えられるようになり、メディアとしての独自性が出ました。

――「駅名・路線が常に見える」UIを採用した背景は?

福島:鉄道の旅を後押しするサイトであるため、駅起点のメディアにすることに拘りました。記事内で駅名を大きく表示し、「どの駅でどんな体験ができるか」を明確にしました。 

福島寛子|Hiroko Fukushima NRIデジタル株式会社 メディアプラットフォーム事業ユニット エキスパートアプリケーションエンジニア

福島寛子|Hiroko Fukushima
NRIデジタル株式会社 メディアプラットフォーム事業ユニット エキスパートアプリケーションエンジニア
2013年、新卒で大手SIerに入社し、金融機関や小売業の業務システム開発に従事。2021年に野村総合研究所(NRI)へ入社し、NRIデジタルに出向。大手コンビニエンスストアのECサイト構築や、不動産業界のDX推進プロジェクトを担当。
現在は、「どこかにビューーン!」のサービス推進、関係人口創出事業にも携わる。

――サイト全体の世界観とロゴに込めた思想は?

薗田誠也さん(以下、薗田。敬称略):サイト全体の世界観づくりでは、アマナさんから「新幹線の車窓」をモチーフにしたビジュアルをご提案いただきました。車窓の景色が動くデザインは、鉄道の旅を想起させています。

制作過程で、車窓のビジュアルから各駅の記事へ直接遷移する構成を相談した際も、限られた時間の中で柔軟に対応いただき、その結果サイトの回遊性が高まりました。

ネーミングは、JR東日本管内の新幹線停車駅である全55駅と「Go Go」を掛け合わせた「55 Stations」とし、名前に込めた躍動感をアマナさんに視覚的に表現していただきました。 

「55 Stations」ロゴ、「新幹線の車窓」をモチーフにしたビジュアル

「55 Stations」のロゴ。「新幹線の車窓」をモチーフにしたサイトのビジュアル。

――記事制作のクオリティ基準は?

福島:それぞれの地域には時を経ても色褪せない魅力があると考えており、そうした本質的な価値をしっかりと伝えることを大切にしています。そのうえで、一目見て旅に行きたくなるようなビジュアルのインパクトも重視しました。

薗田:こうしたコンテンツを形にする上で特に重要なのは、撮影許諾や利用条件を含めた前提を正しく見極めることです。飲食店などの商業施設だけでなく、神社仏閣や自然風景など、管理主体との調整に専門知識を要する対象に対しても、アマナさんの豊富な経験に基づく「勘所」を活かし、スムーズに進行いただきました。単なる制作にとどまらず、トラブルを未然に防ぎつつ最適な見せ方を提案する調整力が、プロジェクトの安定稼働に大きく貢献しています。 

55stationsの「燕三条駅」のコンテンツ記事より。

サイト「55 Stations」の「燕三条駅」の記事コンテンツより。

3.地域価値を広げる編集と展開

――今後の展望は?

福島:東日本各地にまだ眠っている魅力を多様な切り口で伝え、地域を知るきっかけをつくりたいと考えています。 そこからファンが生まれ、いわゆる「交流人口」から「関係人口」※になる方々が増えていくことを期待しています。現在はスポットの紹介が多いですが、今後は地域の人々の営みにも焦点を当てた記事にも力を入れ、より深い魅力を届けていきたいと思っています。

薗田:東北や上信越を含む東日本エリアには、高い観光ポテンシャルがあります。首都圏から新幹線でダイレクトにアクセスできる距離にあることは、旅行先として大きな強みです。広域で周遊を促すことで、エリア全体での体験がより魅力的になると考えています。「55 Stations」では、旅行に行く方それぞれが興味や関心を持つ旅のテーマを軸に各地域の記事を束ねて紹介し、関心を持つ人に深く届けるような編集展開も考えられると思います。

※関係人口:特定の地域に継続的に多様な形で関わる人

薗田誠也|Seiya Sonoda株式会社地域みらいブレインリンク ビジネスインキュベーション部 兼 地域創生コンサルティング部 インキュベーションマネージャー

薗田誠也|Seiya Sonoda
株式会社地域みらいブレインリンク ビジネスインキュベーション部 兼 地域創生コンサルティング部 インキュベーションマネージャー
2015年に大手広告代理店に入社。ストラテジックプランナーとしてクライアント企業のマーケティング・広告戦略の立案や、データを活用した新規ソリューションの開発に従事。2022年に野村総合研究所(NRI)入社。NRIデジタルに出向し、ビジネスデザイナーとして新規事業開発や戦略コンサルティングに従事。「どこかにビューーン!」のグロース推進や「55 Stations」の開設を担当。2025年10月より現職。

4.共創で生まれたメディアの価値|データと感性の融合が、人を動かす原動力になる

――今回のプロジェクトで、アマナの強みはどのように課題解決に役立ったと感じますか?

新井:当社のデータ分析・開発力と、アマナさんの人の心を動かすPR表現や高いコンテンツ制作力が融合することで、読者に寄り添った質の高いメディアを提供できました。今後も継続的にコンテンツを増やし、旅の移動需要を創出するメディアへ育てていきたいと考えています。 

――外部パートナー選定のポイントやアドバイスは?

新井:メディアを立ち上げる際は、コンテンツ制作だけに強い会社ではなく、運用まで見据えたパートナーが重要です。運用を続ける中でデータは変化しますし、その分析を通じて新たなニーズを生むことが、メディアの価値を左右します。制作力と分析力の両方を掛け合わせられるパートナー選定がポイントです。

左から、福島さん、新井さん、薗田さん。

左から、福島さん、新井さん、薗田さん。

「55 Stations」は、予想外の出会いや発見を楽しむ旅の価値を届けることから始まったメディアプロジェクトです。NRIデジタルが描いたUX設計の構想に対し、アマナはその思想を共有しつつ、ビジュアルや編集設計、権利対応など表現面の設計を担いました。制作にとどまらず、「どのような体験として届けるか」という視点で議論を重ねることで、メディア全体の構造と世界観が形づくられています。アマナは、パートナーの想いを深く理解し、共に未来を具現化する存在として、これからも新たな価値を共創していきます。

<スタッフクレジット>(スポンサー/クライアント以外はすべてアマナ)
スポンサー/クライアント:NRIデジタル株式会社
ビジネスプロデューサー:橋口学
Webプロデューサー:田邉裕貴、重田果歩
Webプランナー&Webディレクター:松尾宗治
コンテンツプロデューサー:長野彩

取材・文・撮影:BeeDot


アマナのサービスについて|エディトリアルを軸にした価値設計

アマナは、エディトリアル視点を起点に、情報設計・UX設計・ビジュアル表現を統合し、企業やブランドの思想を「伝わる体験」として編集・デザインする支援を行っています。

単なる記事制作やサイト構築ではなく、「どの情報を、どの順序で、どのように見せるべきか」という編集設計から伴走することで、WEBメディアを、継続的に価値を生むコミュニケーション基盤へと育てます。

プランニング&デザイン|エディトリアルのご紹介


WEBサイト構築・運用までを一貫して支援

エディトリアル設計をもとに、WEBサイト構築・実装・運用フェーズまで一気通貫で対応できる点も、アマナの強みです。
企画と制作、表現と技術が分断されない体制により、意図した体験を確実に形にします。

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編集に精通したエディトリアルチーム

アマナでは、“写真をゆっくり読む雑誌”をコンセプトとした季刊誌「IMA」を刊行。さらに、オンラインメディアとして、家族(Family)のあたらしい明日(Asu)をつくっていく「Fasu」、自然科学分野に特化した「NATURE & SCIENCE」を保有し、それぞれに専門性を持ったエディトリアルの制作チームが、編集制作に携わっています。

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