企画を前に進める人は、内容だけでなく「誰を巻き込むか」を先に考えている

どうにかする めちゃくちゃな状況で「圧倒的な結果」を出している人と組織の思考法
本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。

企画の良し悪しだけで、仕事が前に進むとは限りません。広告、広報、ブランディングの実務では、誰と進めるか、どこで協力を得るかが結果を大きく左右します。本書でいう「回避術」は、個人の工夫だけでなく、周囲との関係を組み替えながら前進する方法でもあります。第4回では、企画を動かすための「巻き込み方」と「進め方」の論点を見ていきます。


〜本コンテンツは、書籍『どうにかする めちゃくちゃな状況で「圧倒的な結果」を出している人と組織の思考法』(パウロ・サバジェ著、水谷淳訳・ニューズピックス刊)から一部を抜粋・編集したものです(この記事は第4回/全4回)。

No.1:仕事で直面した困難な状況を解決する「4つの回避術」とは何か

No.2:情報を集めるほど動けなくなる。企画に必要なのは“完璧な計画”ではない

No.3:新しい企画が通る組織は「正しさ」より「試せる余白」を持っている


チームワーク

回避術に適した組織かどうかは、リーダーや上層部だけで決まるものではなく、やはり職場環境次第ではある。だが、トップにいない人はがんじがらめに縛られていることが多い。上司は大胆なアイデアを受け入れず、会社は日常業務ばかり重視し、同僚はきっかり定時に終えることにこだわっている。

しかしありがたいことに、回避術には必ずしも他人の関与は必要ない。他人を巻き込めばより大きな成果を上げられるが、協力してくれるはずの人が目標達成の邪魔をするような事態は避けたい。

そこでいまから、あなたが他人と協力すべきか、そしてどのように協力すべきかを判断するコツをいくつかお示ししよう。

他人と一緒に回避する

一緒に回避術に取り組んでくれそうな人と関わる方法は、おそらく回避術そのものと同じくらい種々さまざまだろう。とはいえ私は、経営学者が「強靭(ロバスト)な行動(※1)」と呼ぶもののメリットを活かして、数多くの組織のさまざまな職業の人と一緒にいくつものアイデアを生み出してきた。ロバストな行動の中心的教義は、本書をつらぬくテーマと呼応している。それは、人は自分の直面する問題について実はよく知らず、「とりあえず」行動することでさらに成長できるということだ。

ロバストな行動では、3通りの関わり方が勧められる。決まった順番はないし、組み合わせることもできる。

1つめは、複数の視点を受け入れて、いくつもの解釈や意見からできる限り多くを学ぶこと。回避術はさまざまな観点に接することで思いつくものだから、とりわけ組織の枠を越えることが重要だ。聞き慣れないものも含め、さまざまな声に耳を傾けること。

2つめは、互いに異質な関係者が交流して学び合うプラットフォームとなる、参加型のシステム(SNSから対面会議まで)をつくること。

3つめは、他人と一緒にとりあえず試せるようにすること。不完全なアイデアや、相補うアイデアをあれこれ探ることで、新たなチャンスが見つかるようにする(※2)。

このアプローチは1対1でも用いることができるし、第7章で挙げた、回避術を思いつくための質問を使えばさらに効果的だ(※3)。たとえば、誰かにメールで意見を求めるだけでもいい。あなたの直面している問題を列挙して、その解決をはばむ明らかな障害のあらましを伝え、型どおりの解決法をざっと紹介してから、何か回避術のアイデアを尋ねる。ともかく話してみるのだ。

組織に属している人であれば、ワークショップを主催してもいい。その手のワークショップを取り仕切ってきた私の経験から言って、ありがたいことに自分が指揮をとる必要は最小限しかない。必要なのは、4種類の回避術を説明して、きっかけとなる質問を1つか2つ問いかけることで、個人や組織の具体的な課題について参加者に考えてもらうこと。そうしたら、創造性を引き出して「そこそこよい」対応策を育むともに、参加者どうしで議論し、それぞれ違った考え方ができるようにする。最後に参加者たちには、自分たちや組織の利益、実現可能性、見込める成果の大きさに基づいて、それぞれのアイデアに順位付けをしてもらう。

他人を無視して回避する

他人と協力するのは確かに効果的だが、会議室に人を押し込めるだけ押し込めて、全員にアドバイスをせがむのは得策ではない。むしろ回避術は、職場の同僚を無視して多くの(あるいは別の)課題を片付けたい場合や、反発を避けるために課題を先延ばししたい場合に役立つ。

クリエイティブに考えれば、他人を無視して、自分の時間的制約を回避するチャンスが見つかる。たとえば、他人の取り組みに寄生的に便乗する。あるいは、次善策による回避術を取り、最小限の努力で自分の仕事を部分的に片付けるだけでよしとする。誘導路による回避術を見つけて、うんざりする報告書の提出を引き延ばす。あるいは、「ルールは正しい」抜け穴を見つけて、最終〆切を延長させる(※3)。

私のかつての上司は、メールへの返信をなかなかよこしてくれなかった。そのため私はつねにストレスを抱え、「上司はすぐに返信する余裕がないんだろうか」、「もっと早く返信してもらうにはどうすればいいんだろう」と悩んだ。上司はどういう順番で返信をしているのだろう? どんな優先順位を付けているのだろう? リストの一番上と一番下のどちらから片付けているのだろう? 見習い社員で、しかももめごとを避けたいたちの私は、早く返信をくれと言えなかった。

そこで同じ上司のもとで働く同僚たちから話を聞き、上司がいつもどうやってメールに返信しているのか、情報を集めた。そうして分かったのが、上司は早朝5時30頃に大慌てで返信を書いていて、メールボックスの一番上、一番後に届いたメールから片付けていき、下のほうのメールはおざなりにしているということだった。

この情報のおかげで、勤務時間中に上司に送ったメールはメールボックスの一番下に行ってしまうことに気づいた。

そこで私は新しい方法を試してみた。書いたメールをすぐに送信せずに、翌日未明のあらかじめ設定した時刻に自動送信するプログラムを組んだのだ。怪しまれないよう、ある日は午前1時47分、別の日は2時3分などと時刻をまちまちにした。

すると次の1カ月で、返信が返ってくる割合が63%上がった(私は何でも計算したがる数学マニアだ)。元上司はいまだに私が夜型だと思っているが、実は朝型で、上司のメールボックスにメールが届く頃にはREM睡眠を堪能(たんのう)していたのだ。

ときには、誰かと一緒に回避するのではなく、誰かを回避したい場合や、そうする必要のある場合もある。ある状況で何が必要か、または適切かを判断するのは、あなたの役目だ。

メールに関する私の悩み事はかなりささいなものだった。同僚のうっとうしい癖(くせ)や、上層部から押しつけられるルール、あるいは無言の期待など、職場では毎日のようにやっかいな障害に直面するものだ。回避術を使えば、いくらでもそうした難題をやわらげることができるのだ。こっそりと気づかれずに。

他人と進めるか、1人で進めるか

ファッションと同じく、ビジネス戦略にも流行(はや)りすたりがある。そう遠くない昔、各企業は革新的なプロジェクトをもっぱら自社内で秘密裏に進め、他社と協力することはあまりなかった。しかし近年では企業はどんどん外に開かれ、多様な筋から意見を聞くことを重視するようになり、ときにはライバル企業と協力することもある(※4)。他者の助言を求めるだけでなく、「共創」の一環として幅広い利害関係者と積極的に関わる(※5)。

協力にはメリットとデメリットがある。メリットは明らかで、他者とともに取り組めば、より多くのリソースや知識、経験を活用できる。その一方で、他者と協力するのは骨が折れるし時間もかかる。協力者を見つけて関係を築き、積極的に耳を傾け、相異なる目標やスケジュール、業務のスタイルをすり合わせ、合意にこぎつけるのは、いずれも至難の業(わざ)だ。

しかも、グループによる決定が必ずしも最善だとは限らない。逆に、心理学者や行動経済学者がかねてから指摘しているとおり、グループは衝突を避けたがるため、受けがいいだけの決定に過剰な自信を抱くようになる。心理学者が「集団浅慮(せんりょ)/(グループシンク)」と呼ぶ現象だ(※6)。

回避術を駆使する上で、協力のためだけに苦労して協力関係を築く必要はない。多大な労力を費やして大きなチームを作り、指揮をとって根回しをする代わりに、まずはスキルやリソース(情熱も含まれる)を提供してくれそうな一握りの人に助言を求めることから始めたい。回避術が軌道に乗って変化が必要になったら、さまざまな能力を持つほかの協力者を見つけて一緒に取り組めばいい。

※1:さらなる情報については、以下の2つの出典を。John F. Padgett and Christopher K. Ansell, “Robust Action and the Rise of the Medici, 1400–1434,” American Journal of Sociology 98, no. 6 (1993): 1259–1319, http://www.jstor.org/stable/2781822; Amanda J. Porter, Philipp Tuertscher, and Marleen Huysman, “Saving Our Oceans: Scaling the Impact of Robust Action Through Crowdsourcing,” Journal of Management Studies 57, no. 2 (2020): 246–86, https://doi.org/10.1111/joms.12515.

※2:Fabrizio Ferraro, Dror Etzion, and Joel Gehman, “Tackling Grand Challenges Pragmatically: Robust Action Revisited,” Organization Studies 36, no. 3 (February 24, 2015): 363–90, https://doi.org/10.1177/0170840614563742.

※3:本連載No.1を参照

※4:Henry W. Chesbrough, Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology (Boston: Harvard Business School Press, 2006).[『オープンイノベーション:組織を越えたネットワークが成長を加速する』、PRTM監訳、長尾高弘訳、英治出版、2008年]

※5:共創に関するさらなる情報については、以下の文献を。C. K. Prahalad and Venkat Ramaswamy, “Co-Creation Experiences: The Next Practice in Value Creation,” Journal of Interactive Marketing 18, no. 3 (January 2004): 5–14, https://doi.org/10.1002/dir.20015.

※6:集団への追従と好ましくない集団的ふるまいの危険性に関しては、心理学や行動経済学における数多くの研究がある。以下の先駆的研究を。Irving L. Janis, Victims of Groupthink(Boston: Houghton Mifflin, 1972).


(この記事は第4回/全4回)

No.1:仕事で直面した困難な状況を解決する「4つの回避術」とは何か

No.2:情報を集めるほど動けなくなる。企画に必要なのは“完璧な計画”ではない

No.3:新しい企画が通る組織は「正しさ」より「試せる余白」を持っている


▼書籍紹介

オックスフォード大学サイード・ビジネススクールで教えるパウロ・サバジェ氏が、世界各地の非営利組織の実践をもとに、正攻法では解けない課題にどう向き合うかをまとめた一冊です。人手・時間・予算が限られた現場で成果を生み出している組織に共通する「4つの回避術」を軸に、現場起点の課題解決を考えます。

▼書籍情報

書名:どうにかする めちゃくちゃな状況で「圧倒的な結果」を出している人と組織の思考法
著者:パウロ・サバジェ
訳者:水谷淳
出版社:ニューズピックス
発売日:2025年12月27日
https://amzn.asia/d/08R3vqri


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