vol.85
「オフィス」から、新たな価値を生む「コミュニケーション空間」へのアップデート
企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベントが2022年5月25日に開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。テーマ「『オフィス』から、新たな価値を生む『コミュニケーション空間』へのアップデート」の回を紹介します。
従来のオフィスという空間の役割が薄らぎ、今は新たな価値創造が求められています。オフィスからの「経験拡張」に取り組むコクヨから相田勇輝さんを迎え、施設、イベントなどのUXストーリー策定を中心に手がけるアマナの徐維廷と、コミュニケーションをさらに活性化し企業の競争力に繋げる『場』のあり方についてトークセッションを行いました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオからリアルタイムで配信を行いました。
相田勇輝(コクヨ/以下、相田):2020年はコロナ禍の対応に追われ、2021年はハイブリッドワークが働き方に浸透した1年でした。時折「オフィス不要論」なども聞かれましたが、コロナ禍の終息が見えてきた昨今では、オフィスの役割・あり方をあらためて考える企業が増えてきたように思います。
会場となった『deepLIVE™️』配信スタジオにて。コクヨの相田勇輝さん。
相田:コロナ禍以前、オフィスは働き手にとって「行くべき場所」であり、企業にとっては「持つべきもの」でした。しかし、働き方が見直されつつある今、オフィスは「”目的をもって”向かう場所」であり、「”目的をもって”持つもの」になっています。
徐維廷(アマナ/以下、徐):なるほど。リモートワークの普及などでオフィスの使われ方が変化するなか、企業はどんな課題を抱えているんでしょうか?
相田:ハイブリッドワークが3年目に突入して課題も明らかになってきました。まず、働き手の立場からすると「人脈づくりの難しさ」「成長実感の乏しさ」「人への関心が薄れている」といったことが問題視されています。
徐:オンラインミーティングは便利ですが、その反面、終了後に上司が部下に「どうだった?」「ちょっと話そうか」などと声をかけてフォローすることができません。ちょっとしたコミュニケーションの取りづらさが、実は仕事に大きな影響を与えていることもある。オフィスは、社内のコミュニケーションを促進する場所としては依然有効だと思います。
相田:まさにその点は企業側にとっても課題なんです。個人、チーム、企業の成長が見えにくい。
徐:そのような課題が顕在化する中、オフィスの運用は大きなポイントになりますよね。
(左から)株式会社アマナの徐維廷、相田さん。
徐:コクヨさんといえば、品川にある本社オフィス『THE CAMPUS』ですよね。以前見学させてもらったのですが「ここなら毎日出社したい!」と思える素晴らしいオフィスでした。『THE CAMPUS』はどんなコンセプトで設計されたんですか?
相田:「みんなのワーク&ライフ開放区」というコンセプトのもと、ただ働きに行く場所ではなく、人々が出会い価値ある経験を得られる場所を目指しています。オフィス内に公園やカフェがあり、社員だけでなく近隣の人々も利用できるのが特徴です。開放区の所以は、オフィスが街に開かれているということなんです。
相田:4Fから8Fは「LIVE OFFICE」と呼ばれていて、みなさんに見学していただくことができます。各フロアには特徴があり、例えば4Fは「捗る」というコンセプトのもと、集中ワークできるスペースを設けています。また6Fでは「育む」というコンセプトを掲げ、「サポートが必要な若手」と「サポート役の先輩や上司」には積極的にこのフロアに足を運んでもらえる仕掛けを取り入れ、コミュニケーションを促しています。
相田:『THE CAMPUS』はまだまだ発展途上で、今まさに社員を被験者とした「実験」の途中にあります。コクヨの社員の間には実験カルチャーが根付いており、自分たちの手でオフィスを日々アップデートしています。
徐:つくって終わりではなく、人が関わってから「完成」に向かっていくオフィスだということですね。これからの理想のあり方だと思いますね。
徐:アマナのオフィスには、さまざまな場所にアートがあります。コミュニケーションのきっかけになったり、ミーティングの緊張感をやわらげたり、オフィスの中のアートはいろいろな機能を発揮してくれます。そうした日々の実感をもとに、クライアントのオフィスのコンテンツ開発も行っています。アートフォトやデジタルアートの導入はもとより、ブランドムービーを製作してエントランスで放映するなど、みなさんのクリエイティブをサポートするコンテンツを手がけています。コクヨさんでは、アートを活用して社員のコミュニケーションを活性化させるような取り組みはされていますか?
相田:弊社でもワークプレイスへのアートの導入を進めています。社員向けに作品解説をするアートツアーやアート作品を通したワークショップなど、より活発なコミュニケーションを促す仕組みを整えています。実際、社員からも好評です。とはいえ、企業にとってアートは投資対効果の見えにくいものであり、導入するには敷居が高いという声もありました。そこで「見るアート」から「使うアート」へと意識を変えて、働く場所とアートをつなぎ、アートを民主化させていくことはできないかと考えています。
相田:その具体的なアイデアの1つが「ARTBOARD」というものです。アマナさんとコラボレーションした企画で、意見交換をしながら現在も進行中です。
徐:「ARTBOARD」の最大の魅力は、アートに直接アイデアを書き込めるというところです。アートのアフォーダンスを活用することで、無気質なホワイトボードを使うよりも、よりクリエイティブな思考を促すことが期待されます。
相田:『THE CAMPUS』にもたくさんのアートを導入していますが、その目的は「個人や組織が成長していく関係をつくること」にあります。今後、企業は個々人の能力を最大限引き出せるような環境をつくっていく必要がありますし、個々人の力を掛け合わせるような作用や媒介になる必要があるでしょう。オフィスを新しく定義し直すとすれば、それは「個々の能力を掛け合わせるための場」ということになるでしょうか。そうした意識が、企業の力や価値を高めていくのではないかと思います。
会場となった『deepLIVE™️』配信スタジオにて。徐維廷。
徐:「ARTBOARD」が目指すのは、ツールとしての機能とアートとしての精神的な効果を両立させることです。企業のブランディング、社員の帰属意識の醸成、さらにはコミュニケーションを育む土台としての役割まで、アートがオフィスにもたらす効果は想像以上に大きい、オフィスの新しいあり方を考えていくうえで、これ以上ない魅力的なファクターだと思いますね。