vol.116
顧客接点創出のための、B2Bのコンテンツマーケティング戦略
意思決定者が多く検討期間も長くなりがちなB2Bマーケティングにおいては、認知から購買に至るまで、いかに継続的に顧客と良好な関係を築いていくかが成功の鍵を握ります。デジタルマーケティングにおいて、中長期的に顧客との接点を持ち続けるにはどのような施策が有効なのでしょうか。
本セミナーでは、アマナのマーケティングディレクター・渡邊隆尚が、指標となるKPIの設定方法からコンテンツの戦略設計、継続的・効果的に運用するためのコツなど、B2Bマーケティングにおけるコンテンツ活用のポイントを解説しました。
2023年5月、新型コロナウイルスが5類感染症に移行しました。いわゆる「コロナ以前」また「with コロナ」においては、どのようなマーケティング傾向があったのか。ここで少しデータをご紹介します。
まずは、展示会をはじめとした従来のセールス手法と、オンラインに特化した(デジタル化された)セールス手法についての比較データを見てみましょう。コロナ以前は、従来のセールス手法が52%、デジタル化されたセールス手法が48%と、ほぼ半々の割合で重要視されていました。それが新型コロナウイルスの影響を受けてどう変化したのか。デジタル化されたセールス手法は66%に上昇し、従来の手法は34%にとどまりました。これらは、デジタルなコミュニケーションの重要性が増していることを示唆しています。
さらに別のデータでは、62%の企業がコロナ禍でコンテンツマーケティングの重要性が高まったと回答。コンテンツマーケティングに期待していることとして、自社や自社のサービスにおける「信頼や信用を構築」と「ブランド認知の向上」、そして「顧客のナーチャリング」と「販売促進」が上位を占めています。また、調査対象10社のうち6社は、今後の1年間でコンテンツマーケティングへの投資を増やすと予測しています。
BtoBの意思決定者は、実際に意思決定をするまでに、平均して13個のコンテンツを消費するというデータがあります。その内訳はベンダー(企業発信)が8個、サードパーティ(まとめサイトやその他のコンテンツ)が5個となっています。
コンテンツを消費する期間は、購買行動の前段階として、平均2〜6週間ほど情報収集が行われ、それらは3〜4名のチームで実行されているとも示されています。コンテンツの摂取方法として、最も多く活用されているのがベンダーのWebサイト。いわゆるその企業発信のWebサイトです。次いで、GoogleやYahoo!などのインターネット検索エンジン、SNSと続きます。
ここでは、リード育成と信頼獲得のためのコンテンツ活用について、顧客の意思決定フェーズ(認知・検討・評価・再来訪)に沿って解説していきます。
認知 Awareness
この段階の対象には、自社について、あるいはサービスについて全く認知していない潜在顧客も含まれています。ですので、「顧客」ではなく「オーディエンス」の興味関心をとらえるコンテンツを発信しなければなりません。オーディエンスの課題を解決するコンテンツ、興味とニーズに応えるコンテンツを用意することが重要です。
検討 Consider
比較検討段階に入ったターゲットに対しては、ソリューションや自社製品に沿った情報を提供します。その際、一方的に自社の優位性をアピールするのではなく、顧客が検討しやすい状態で提供することが大切です。何かと比較する、客観的なデータを用意する、外部評価を取り入れる、なども一つの手です。
評価 Evaluate
自社のサービスやプロダクトが、ユーザーにとって意義のあるものだと評価してもらうためには、視聴者が納得できる方法で製品を説明するコンテンツが必要です。これはカスタマー・サクセスにおいても重要な観点です。
再来訪 Retain
アップセルする、LTVを伸ばすなど、再来訪にはさまざまな目的があります。ユーザーの助けとなるようなコンテンツ、ためになるようなコンテンツを定常的に発信していくことが大切です。
ここからは、どのようにKPIを設定していくか、具体的に話していきたいと思います。
この先、「Brand(ブランド)」と「Demand(デマンド)」という単語がよくでてきます。
Brandは、潜在顧客も含めたオーディエンスの獲得。それに対してDemandは、顧客の獲得を意味しています。BrandとDemandはマーケティング活動の両軸ととらえてください。
ブランドレベルが低いとコンバージョンしやすい反面、オーディエンスが少ないため成長が限定的です。一方、デマンドレベルが低いと、コンバージョンレベルが低い状態に陥ります。計測指標を注視しながら、このBrandとDemandのバランスが取れている状態にすることが、非常に重要なポイントとなるのです。
コンテンツマーケティングは、最終的にビジネスゴールに紐づいていなければなりません。ビジネス目標を達成するためのマーケティング目標であり、マーケティング目標を達成するためのBrand-To-Demand目標。コンテンツマーケティングは、それらを達成させるための手法の一つであることを念頭においておきましょう。目標を立てたあとは日々見直しをして、マーケティング活動において適正なものが設定できているか、確認。アップデートしていくことが大切です。
次に、マーケティング目標やビジネス全体の目標を推進する上で、最も影響力のある唯一の指標として、ブランド(Brand)、信頼(Trust)、需要(Demand)を把握するゴールデンKPIを定めます。
ゴールデンKPIに対してさらなる評価軸が必要な場合には、サポート計測指標(Supporting Metrics)を追加します。
実際にどうやって計測していくのか、簡単なフレームワークをご紹介します。
ベンチマークを行う
自社の過去のパフォーマンスデータを見て、指定期間におけるゴールデンKPIとサポート計測指標の平均値を算出し、初期のベンチマークとします。ベンチマークデータの期間は、予想されるレポート作成サイクルと同じ期間になるようにしましょう。
個々の指標を注視する
パフォーマンスを正しく評価するために、ゴールデンKPIとサポート計測指標は個々の施策についてそれぞれ注視しましょう(たとえば、すべてのメール登録数の合計で集計するのではなく、.comのメーリングリストの登録数とBlogのニュースレターの 登録数を個別に集計するなど)。
計測と検証
計測とレポートのサイクルを決定します。計測期間のデータとベンチマークデータの差分(Δ)(ベンチマークからの 増加/減少率・数)を記入し、パフォーマンスの検証と最適化を行います。短期的な成果は四半期ごとに測定し、長期的な成果は販売サイクルごとのパフォーマンスに基づき測定することをお勧めします。
異常値を除き、ゴールデンKPIのパターンを見つけていきます。増加の傾向にあるのか、減少の傾向にあるのか、横ばいなのか。これらの傾向は長期的視点で見ていくことが重要です。増加や減少が短期的な事象なのかどうかを適正に判別するためにも、少なくとも四半期ごとにデータを見ていく必要があるかと思います。もちろん月ごとの細かな変動をとらえて日々アップデートしていくことも大切ですが、大局観を得ることも重要です。短期のレビューと中長期のレビュー、それぞれにしっかりと目的を設定していく必要があります。
コンテンツをどのように発信していくか。その決め方についてもご紹介します。
実際には、コンテンツマーケティングの目標を定めた上で、どういったターゲット、ペルソナにコンテンツをあてていくか決める必要があるのですが、今回はそれらが定まった前提でお話をすすめます。
どのようなコンテンツを出していくかを考える際に、コンテンツの「ピラー(柱)」から決めることはあまりおすすめしません。なぜなら、コンテンツマーケティングは時間を要する施策であり、中長期的な視点で取り組む必要があるからです。まずは続けられる状態をつくる→作る ことが、非常に重要なのです。
我々がおすすめしているのは、「企業が解決できること」「ユーザーが解決したいこと」「業界動向・トレンド」を戦略の軸に、この取り組みに必要なコンテンツは何かというところから考えます。その上で、どうしたら3つの戦略の軸に沿ったコンテンツが作れるのかを考えます。つまり、コンテンツを定常的につくっていくリソースやネタが確保できるかどうかを最初に判断するのです。その上で、どういったことを発信できるかを決めるに際して、コンテンツのミッション・ステートメントを定めます。
こうして、継続的に発信し続けられる土壌を整えた上でようやく、ピラーや具体的なトピックに取り掛かれるようになります。そこまできたら、どこでだしていくか(配信方法)、どうやって改善していくか(レポーティング・分析)を考えていきます。
最後に参考情報として、発信チャネルについてお話ししたいと思います。
コンテンツマーケティングの初期段階では、オーガニックの流入はほとんど期待できません。ターゲットオーディエンスをペイドメディアから集客し、獲得したユーザーの再来訪を促す仕掛けを施していくなど、サイトトラフィックを育成していく必要があります。流入の母数が安定してきても、継続的なペイドメディア活用をおすすめします。流入母数が増加してもデマンドの割合が大きくなりすぎないよう、ブランドとデマンドのバランスは常に意識していく必要があるからです。先ほどお話しした通り、コンテンツのピラーやトピックのテーマが定まったら、ペイド、オウンド、アーンドのどこで配信するのか、目的を意識しながら考えていくことが重要です。
今回は、コンテンツマーケティング戦略の主要なポイントとして、KPIの設定、そこに紐づくコンテンツの作り方、発信チャネルについてご紹介しました。これらをベースに全体戦略を確率してコンテンツマーケティングに取り組めば、サステナブルな運用を実現することができると思います。
amana Content Marketing
amana Content Marketing
コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
企業が抱える課題に沿って、戦略策定からチーム構築、コンテンツ制作、効果測定まで、コンテンツマーケティングの運用をトータルで支援します。