世代別消費行動から見る、2024年のマーケティング予測

vol.125

世代別消費行動から見る、2024年のマーケティング予測

Text by Hisako Tanase
Photo by Noa Nishiura

人々のライフスタイルが変化し続ける中、異なる世代の生活者はどう対応し、どのような消費者行動が生まれているのでしょうか。

豊富な情報網と専門性の高いリサーチャーを抱え、世界中のマーケット潮流をリサーチ・レポートするイノベーションアドバイザリー「STYLUS」。本セミナーでは、スタイラス ジャパンのカントリーマネージャーである秋元陸氏をゲストに迎え、ライフステージによって異なるそれぞれの消費者行動がどうブランディングに紐づいていくのか、傾向と予測をお話します。

生活者のライフサイクル予測

cover page of the report

私たちは毎年『Look Ahead』というレポートをクライアントにお届けしています。

『Look Ahead』は、簡単に言うと、次年度予測でさまざまなジャンルの次年度予測をまとめたレポートです。どういったことが、どんな理由で生活者の中で重要性を増していくのか、個別の業界ごとに作り、企業向けに提供しています。今日は、そのうちいくつかのトピックをご紹介しようと考えています。いきなり次年度予測を取り上げても理解が難しい部分もあります。まずは、生活者たちがどういう嗜好性を持っているのか、その嗜好性がどのように消費行動に表れているのかを少しご紹介します。

スタイラスでは、各世代を対象にさまざまなリサーチを行っています。その中で今回は、α世代とZ世代について簡単にご説明します。これらの分析は、2024年のトレンド予測の基礎となっていますので、その背景を知っていただくと理解の助けになるのではないかと思います。

explanation of future consumer life style

スタイラスでは、6つの世代別に生活者のさまざまな角度からライフサイクル予測を出している。

α世代に対する親の期待が消費行動へ

about gen alpha

まずは、α世代に関する調査データを少しご紹介します。実際には、2024年のトレンド予測に彼らの嗜好性が大きな影響を与えているわけではないと感じています。その理由は、彼らが13歳以下であるため、親が彼らの意見を聞いて購買行動に反映させることはあるものの、ブランドが直接この世代にヒアリングを行ったり、彼らに直接製品を購入させるような購買のサイクルはまだそれほど大きくないからです。ここでは、α世代がどんな世代か、彼らがどのような価値観で育ったのかご紹介します。

アメリカとイギリスでは、α世代の親の53%が、今日の子どもたちは前の世代が積み残してきた多くの社会問題を克服できる世代になると信じています。彼らに対する大きな期待は定量的なデータにも裏付けられています。アメリカ在住のα世代のうち、36%がラテン系の背景を持っています。さらに、異なる人種のルーツを持つ家庭から生まれた子どもたちは、α世代に限って7%に上り、これは全米平均の3%を上回っています。これらの数字はα世代の多様性を示しています。アメリカには約4600万人のα世代がおり、その中でさまざまな文化的背景を持つ子どもたちが成長しているのです。

このような多様性は、α世代に対する期待と投資の方向性に地域ごとの変化をもたらすかもしれません。例えば、ナイジェリアでは14歳以下の子どもたちが人口の43%を占め、インドではその割合が25%です。これは新興国において、若年層が人口の大きな割合を占めており、今後さらに増加していくことを意味します。一方、日本では14歳以下の人口比率は11%となっており、アメリカも18%と新興国に比べると比率が低いです。これは、日本ではZ世代や中高年、団塊の世代などの人口比率が高いことを示しており、マーケティング戦略もこれらの世代に焦点を当てることが予想されます。経済的に発展している新興国では、14歳以下のα世代が購買力や社会的影響力を持つ世代として成長することから、若年層に特化したコミュニケーションや施策の展開が進むと考えられています。

53% of gen alpha's parents think today's kids can help solve problems caused by previous genarations.

この世代の子どもたちに対する教育もユニークです。アメリカとイギリスでは、勝利至上主義ではないスポーツコーチングが推進され、子どもたちの人格形成に対する価値観が変化しています。スポーツは単なる競争だけでなく、チームワークや目標達成への取り組みとして推奨されてきました。しかしそれらは、ビデオゲームを通じても、同様の体験や教訓が得られると今では認識されています。

一方で、α世代の子どもたちが直面する肥満率や健康問題は、社会問題化しています。親や教育者は、子どもたちに屋外で活動する楽しさや身体を動かす爽快感を理解させ、運動による肉体的な進歩を促すことが求められています。そのため、勝利だけを目指すのではなく、心の成長にフォーカスした新しいコーチングスタイルがこの世代の子どもたちの間で浸透しつつあります。

カレッジセービングのように、子どもたちが若いうちから財務知識を身につける取り組みもあります。特に小学校高学年から中学校低学年にかけての時期に、彼らの人格形成に合わせて、経済的なリテラシーや決済能力を育成しようという動きで、これらを積極的に行っているブランドもあります。これは、単に多くの商品を購入してもらうという取り組みを超えて、Z世代やそれに続く世代の経済力の衰退が社会問題となりつつある中で、子どもたちに早期から目標設定とお金の管理の重要性を教えるためのものです。コロナ禍で経済的な困難を経験した上の世代の教訓を踏まえ、子どもたちが自己管理能力を身につけることが、今後の社会でますます求められることになるでしょう。

テクノロジーと教育の関係についても少し触れたいと思います。

アメリカにおいて、85%の子どもたちがAI(人工知能)が教育を改善するだろうと信じています。一方で、ミレニアル世代の親たちが最も満足していない分野は教育であり、新しいスキルを習得するための取り組みが十分ではないと感じています。子供たちはこのAIを活用して自分たちの教育や人生を豊かに、効率的にしていけると信じていますが、親の世代は、その意識がまだそれほど高くない。テクノロジーに適用していく若い世代の子たちに対して、周りの環境がどのように適応していくのか、それも大きな観点だと思います。

Z世代の嗜好性と消費行動

about gen Z

この世代の若者たちは、非常に高い割合でストレスを感じています。65%の人が、ほぼ常にストレスを抱えていると答えています。

彼らが感じるストレスの原因は、心理的な安全性や安定性を求める心理からきています。Z世代は10代後半から20代後半の若者を指し、彼らはインフレーションやコロナウイルスの流行、日本では東日本大震災のような予期せぬ出来事を経験してきました。その結果、何が起こるか予測できない不確実性を強く意識している世代です。

彼らは、従来の意味での安定したキャリアよりも、自分自身のスキルや生活基盤を重視する傾向があります。大企業や公務員の職に就くことが安心や安定をもたらすとは限らず、むしろ自分の能力や積み上げてきたリソースを活かすことで、真の安定や安全を求めています。環境の変化や不確実性の中で、Z世代は将来に対する不安を感じ、常にストレスを抱える状況にあるのです。それゆえに、可能な限り安定して、かつ幸せでありたいという願いを追求しています。

中国では、「クリーンフィット」などのハッシュタグを通じてミニマリストっぽいファッショントレンドが発信されています。また、都市から離れた田舎での生活を志向する若者たちが増えており、そうしたライフスタイルを反映したブログ、ソーシャルメディアのアカウント、YouTubeチャンネルなどが数多く存在します。中国の若者の間で増加しているこのトレンドは、価値観の変化や都会生活への反省から生まれた新しい社会現象として注目されています。

働き方とかにもいろいろな考え方の違いが出てきています。会社に依存するリスクを避け、個人の時間や家庭を重視し、自分たちの生活を豊かにすることに重きを置いています。 従来の9時から5時の勤務を超え、副業や趣味に時間を割くバランスのとれたライフスタイルを好む傾向も見られます。

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアのZ世代の50%が、スマートフォンから離れたいと望んでいます。彼らの生活の大半はスマートフォンを中心に展開されています。友達とのコミュニケーション、音楽を聞くなどのエンターテインメントやショッピング。仕事からプライベートまで全てがこのスマートフォンに集約されているので、離れたくても離れられない状況にあります。少し前にデジタルデトックスを推進する動きもありましたね。プッシュ型のアプローチが多い中、疲れを感じている生活者に寄り添うようなブランドコミュニケーションがいろいろなところで、少しずつ見られるようになりました。

46% of gen Zers say they feel stressed most or all the time

今回はα世代とZ世代に焦点を当てましたが、実は40代前半から50代後半のX世代に注目しているブランドも少なくありません。Z世代への関心が高い一方で、購買力があり、可処分所得の面で自由度が高いX世代を無視することはできません。コロナ以降、このX世代とコミュニケーションを取り、エンゲージメントを深める方法を模索するブランドが急増しています。インフレの影響で生活コストが上昇し、消費者の購買意欲や意識に変化が見られる中、お金の使い方には世代による考え方の違いが出てきます。このような違いを掘り起こしてみるのは、非常に面白いですね。

2024年のCXトレンド

スタイラスでは、さまざまな業種・カテゴリーごとに2024年のトレンド予測を出しています。その中には、複数の業界で同時多発的に見られるトピックがあるので、いくつかご紹介します。

Look Ahead 2024

『Look Ahead』は毎年11月頃にリリースされる。食品、ファッション、ビューティー、テクノロジー、消費者意識など、さまざまな業種・カテゴリーごとに翌年のトレンド予測がまとめられている。

サステナビリティ意識の変化と直面する課題

北米・ヨーロッパでのヒアリング調査の結果です。サステナビリティを重要視する人々の割合は、2020年には54%でした。しかし、2023年には44%に減少しています。特に環境に対する投資を行ってきた企業関係者にとっては驚きの結果かもしれませんが、実際には彼らの意識が下がったわけではないことが、詳細な調査と分析によって明らかになりました。この調査から浮かび上がったインサイトの一つは、環境問題などのサステナビリティに関する議論よりも、近々に差し迫っている問題、たとえば世界的な猛暑や生活コストの上昇。日常生活に直接影響する問題の方が重要視されています。

仕事を通じて持続可能な環境に貢献する

2025年までに、環境に配慮した働き方をする「グリーンカラー」の雇用が3億人に達するという予測があります。グリーンカラーとは、例えば、時差通勤やオフィスでのリサイクル・ペーパーレスの推進、エアコンを抑えられる時間帯に働くなど、環境負荷を軽減する働き方をする人々のことを指します。脱炭素社会を実現するためには、法整備を含むさまざまな措置が必要とされ、これによってこの種の雇用が増加すると見られています。

生成系AIのブランディング活用と市場拡大

最先端の生成系AIは、商品開発に積極的に活用されています。その中でも、よりAIとの親和性が高く、成長が著しいだろうと言われているマーケットが食品・飲料業界です。2023年時点での市場規模は約70億ドルで、2028年には340億ドルまで拡大すると予測されています。また、生成系AIを用いて、新商品のビジュアル開発からパッケージ作成まで2日間で仕上げたという事例もあります。このように、ツール制作期間の短縮化によって、さまざまなイノベーションが可能になると期待されています。

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