意外な落とし穴も。著作権のよくある質問を事例で解説

vol.126

意外な落とし穴も。著作権のよくある質問を事例で解説

Two speakers are sitting next to each other

Text by Hisako Tanase
Photo by Kenta Matsusaka

情報発信のためのコンテンツ作成では、静止画、動画、テキスト、音などの多様な素材が活用されます。素材の使用にあたっては著作権への注意が必要ですが、著作権者の許諾なしに使用できるケースも存在します。
本ウェビナーでは、アマナの佐々木孝行が、著作権に関するよくある質問に答える形で、注意が必要なケースと気にしなくても良いケースを解説しました。

Two speakers are standing side by side

(左から)アマナの野口貴裕、佐々木孝行

 

野口貴裕(アマナ/以下、野口):アマナは企業向けに「amana著作権勉強会*」という有料サービスを提供しています。これまで様々な企業で勉強会を実施してきましたが、業界・業種問わず、よく同じ質問が出されます。今日はその中から5つを取り上げます。

*amana著作権勉強会:ビジュアル制作に長年携わってきた知見をもとに、著作権関連の知識をセミナーとしてパッケージ化。企業の人材育成等に活用されている。具体的かつ実践的な事例を取り上げ「事例をもとに解説してもらえるのでわかりやすい」「覚えておかなければならない基本的な知識を学べるよい機会になった」と好評。勉強会は、リアル/オンライン、いずれの開催も可能。

佐々木孝行(アマナ/以下、佐々木):法的にOKかどうかという観点と、法的には問題ないけれどもクレームあるいは炎上に繋がるポイントはどこかという観点。この2つの観点で質問に答えていきたいと思います。

 

写り込みに関する質問と解説

野口:早速ですが、1つめの質問です。

Q:東京の街並みの画像を使いたいが、建造物が多く写り込んでいる。⽬⽴つものも多いが許諾は必要?

佐々木:写り込んでしまった建物に許可取りが必要かどうか。これはよく寄せられる質問です。ロケでの撮影では建物の写り込みが避けられませんから、目立って写り込んだ場合に、権利的な問題について不安を感じられるようですね。

著作権法第46条には、屋外の場所に恒常的に設置されている建築の著作物は、いずれの方法によるかを問わず利用することができると示されています。つまり、建物やビルなどを敷地の外から撮影し、広告等に使用することは、法的に問題ありません。しかし、著作権法上は問題なくても、その建物の管理者からクレームが入るリスクがある点に注意が必要です。

敷地内からの撮影は建物の管理者が禁止していることがあります。敷地外から撮影するにも、公道での撮影は、エリアごとに使用許可証が必要な場合が多いです。安全上の理由で立ち入りが禁止されている場所からの撮影は、そもそも禁止行為です。

有名な神社仏閣や、ランドマークとされる建物は撮影に関して非常に厳しいですし、遊園地や商業施設、スポーツ施設、企業が管理している店舗や社屋も、目立つように撮るとクレームに繋がりやすいです。

また、建物をメインの被写体にした写真を広告に使用する場合、建物そのものが広告に利用されたと見なされ、トラブルの原因となることもあります。また、撮影された建物と製品が関連していると誤解を生むような使い方も、クレームの可能性があります。ですから、不安な場合は管理者と事前に連絡を取り、撮影と使用の許可を得ておきましょう。

 

Browse webinar materials. Regarding cautions regarding reflections of buildings

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野口:著作権法では許可なしに使える場合もあるけれど、権利者からのクレームや炎上にも注意が必要ということですね。

 

Q:⾃社サイトに掲載するため、社員を撮影。 ブランド物の服を⾝につけていたが、許可は得た⽅がよい?

佐々木:美術作品は大きく「純粋美術」と「応用美術」に分けられます。著作権法は主に純粋美術を保護していて、これには鑑賞を目的とする写真や絵画、映像などが含まれます。一方で、大量生産される工業製品は応用美術に分類され、通常は著作権保護の対象外です。

撮影で使われる大量生産の洋服やパソコン、自動車、食器、文房具などは応用美術にあたるため、基本的に著作権で保護されません。これらは意匠法で保護されることはあっても、撮影の小道具として使用する分には問題ないと考えられます。

野口:一方で注意点もありますね。

佐々木:服に大きなキャラクターやブランドロゴが目立つように映っている場合、他社のブランド価値に「ただ乗り」していると見なされる可能性があります。不正競争防止法の範疇で使われる言葉で「フリーライド」というのですが、メーカーがフリーライドではないかとクレームをつけてきたら、法的に争いが生じることもあるので、他のブランドが目立つような撮影はリスクを伴うと言えるでしょう。

皆さん色々と心配になると思うのですが、ブランドのロゴが写り込むことはよくあります。パソコンの裏にもね、映っています。

野口:ありますね。りんごのマークがついていますね。

A photo of the "apple" logo on a laptop

佐々木:法律目線で言えば、これは応用美術にあたりますので問題ありません。しかし、大きく、あたかもそのブランドと関連性があるように映してしまうとフリーライドということでクレームに繋がる可能性があるので、注意してください。

撮影する側を少し助ける条文として著作権法第30条の2をご紹介します。この条文は「付随対象著作物の利用」について定めていて、撮影時に避けられない軽微な写り込みについて触れています。もし画角の中に分離することが困難な形で他の著作物が入ってしまっても、それが軽微なものであれば、著作権侵害には当たらないということを述べています。ただし、これは大元の著作権者の利益を不当に損なう場合には適用されません。大抵の場合、こうした写り込みは大きなダメージを与えるものではないため、軽微な写り込みや小道具としての使用に関しては、ある程度安心していいということです。

とはいえ、何%以上と基準が明確に示されているわけではないので、軽微かどうかの判断はときに難しいですよね。参考となる裁判事例もあるので、いろいろなケースを勉強していただけるといいかなと思います。

 

Browse webinar materials. Regarding precautions against reflections of objects such as props

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Webサイトへの引用について

Q:⾃社のWebサイト内で農園の紹介をしたいがその写真がない。その農園のHPから写真を⾒つけたが無断で使⽤できる?

佐々木:これに関しては、著作権法第32条の「引用」をご紹介しましょう。

公表された著作物は一定の条件下で引用して利用することが可能です。引用とは、何かを説明する際に他の著作物を補足的に使用することです。質問のケースは引用の範疇に入るかと思いますので、引用の条件を満たせば、許可なく合法的に利用できます。

引用を満たす条件は、専門家によって多少見解の違いはあるものの、おおよそ以下の通りです。

 

Browse webinar materials. Notes on citing copyrighted works

 

キャラクター名の使用に関する質問

Q:オウンドメディアで対談記事を制作中。対談者がアニメのキャラクターとの思い出を語っているが、このまま固有名詞を記載しても問題ないだろうか?

佐々木:日常会話での名前の使用と同じで、特定のキャラクターについて記事内で語ることは基本的には問題ありません。もしここに制限が加えられたら、コミュニケーションが困難になるでしょう。

ただし、特定のキャラクターの名前を記事のタイトルに大きく使い、それが集客やアクセス数増加に直接結びつくような場合は、他社のキャラクターを使用して不当に利益を得ていると見なされる可能性がありますので注意してください。

 

Browse webinar materials. Notes on citing copyrighted works

 

ストックコンテンツ利用の注意点

Q:よく利⽤しているストックコンテンツサイトは安⼼だが、今度、今まで使ったことがないストックコンテンツサイトを利⽤しなければならなくなった。権利上、気を付けるべきポイントは?

佐々木:ストックコンテンツは料金さえ払えば自由に扱えると考えている人が多いですが、実際にはそうではありません。

 

利用規約は重要!必ず確認

サイトによって利用規約が異なりますので、注意深く確認する必要があります。特に、商用目的での使用、広告や企業のSNS上での画像使用の際はよく確認しましょう。個人利用とは異なり、ビジネス利用には明確な規定があります。ビジネス目的で使用可能でも、記事内(エディトリアル)での使用は許可されているが広告への使用は禁止というケースもあるので、条件をきちんとチェックする必要があります。

規定が不十分なサイトや、主要な使用範囲や禁止行為が明記されていないサイトは、使用を避けた方が無難です。これらは信頼性が低く、利用することによってリスクを背負う可能性が高いためです。利用規約が不明瞭なサイトは、危険信号と捉えましょう。

 

ロイヤリティフリーは著作権フリーではない

ライセンスには「ライツマネージド」と「ロイヤリティフリー」があります。ライツマネージドは使用範囲を事前に申告し、それに応じた料金が発生するものです。約束した使用範囲を超えて使用すると規約違反となるので注意しましょう。

また、「ロイヤリティフリー」は、基本的に一度購入すれば追加料金なしで様々な用途で使用できるライセンスですが、著作権が譲渡されるわけではなく、禁止されている使用方法もあります。ライツマネージド同様に、利用規約に書かれているルールを守って使用しなくてはいけません。

 

使用したいコンテンツの権利の確認

コンテンツの権利は、「モデルリリース」と「プロパティリリース」という言葉で書かれたりします。信頼できる提供会社の人物写真は大概、モデルリリースを取得しています。しかし、中には隠し撮りのような写真もあり、これらの写真はモデルリリースが取れていないことが多いです。使用すると肖像権等の問題でトラブルになることもありえますので注意が必要です。

プロパティリリースは「物」に関する権利処理関するものです。ストック写真はこのプロパティリリースが取得されていると考える人が多いですが、実際には取得されていないケースがほとんどです。前述したとおり、応用美術に分類されるものは許可が不要なので、提供会社の多くもその認識で写真を提供していると考えてよいかと思います。

ただし、写真に大きく映る建物などの場合、広告などに使用する際は、建物の所有者に許可を得る必要がありますのでご注意ください。

また、最近では写真を趣味にしているアマチュアカメラマンがネットに投稿するタイプのストックサイトやフリー素材サイトが多くあります。こうしたコンテンツの中には撮影対象からの許可が得られていないものや、撮影情報に信用性のないものもありますから、皆さん自身の目でしっかり確かめていただければと思います。

 

Browse webinar materials. Notes on using stock photo content

野口:著作権に関わる問題は、今日ご紹介した引用や映り込みのように、法的に許容される使用のケースもいくつか存在します。これらを理解しておくと、よりスムーズに活動を進めることができますね。

佐々木:ガッチガチに心配する必要はないですが、油断するとトラブルに繋がるときもあるので、法的な観点とクレームのリスクを冷静に判断することが大切です。必要な点はしっかりと押さえつつ、前向きに進む姿勢が大事なのだと思います。


Speaker Takayuki Sasaki

野口:アマナは40年以上のビジュアルコンテンツ制作の経験を生かし、著作権に関するトラブルを避けるための知識を蓄積してきました。このノウハウを活用し、お客様をサポートするために、著作権に関するセミナー「amana著作権勉強会」を提供しています。

会社に直接訪問して行うリアルなセッションとオンライン実施の両方に対応しています。また、内容は著作権の基礎からビジネス上よく直面する疑問まで、さまざまな事例をもとに幅広く網羅しています。

興味がある方はぜひお問い合わせください。

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