BtoB企業のWebサイトリニューアル成功のカギ– KGI/KPIの設定と分析方法

vol.150

overlooking the bridge from a high place

Text by 泉田ひらく

SPEAKER スピーカー

昨今のマーケティングやブランディングのトレンドに合わせて、企業がWebサイトのリニューアルに取り組む機会が増えています。誰もが気軽にインターネットにアクセスできる今、コーポレートサイトをはじめとした企業のWebサイトは、採用面でも、リード獲得などのセールス面においても非常に重要なチャネルです。

今回のウェビナーでは、Webサイトをリニューアルする際に検討しておくべき、KGI/KPIの設定とサイト分析方法について解説。アマナのマーケティングディレクターの渡邊隆尚と、UXディレクターの小林大輔がそれぞれの経験からWebサイトリニューアルを成功させるための重要な要素について述べました。ファシリテーターは、ビジネスプロデューサーの佐藤謙介が務めました。

Webサイトの種類とコーポレートサイトが持つ役割

渡邊:企業が所有するWebサイトには、さまざまな種類があります。例えば企業情報などを取りまとめるコーポレートサイトは、IR、CSR、採用などの情報も内包されているケースが多くあり、ほかにも、以下のようなものが考えられます。

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左側に図示するものがブランディング寄りのWebサイト、右側に示されるものがマーケティング寄りのWebサイトにあたります。

本ウェビナーでは、このうち、IRやCSR、採用などの要素も包含したコーポレートサイトのリニューアルを想定し解説をします。

本来、ブランドサイトの目的は自社の企業情報や事業を認知・理解してもらい、取引につなげることです。そのため、リード獲得に寄与した度合いや、ターゲットの純粋想起率など定量的なKGIがベターです。対して、CSRサイトや採用サイトの目的はブランドサイトとはそれぞれ違うため、コーポレートサイト全体を単一のKPIや目的を設定するのは難しいといえます。

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コーポレートサイトはブランディングに寄与するサイトですが、必要に応じてマーケティング要素を組み込み、リード獲得のための機能を持たせることもできます。

例えば以下は、アマナのコーポレートサイトです。マーケティング要素が強いページが多い中で、アマナというブランドをユーザーにどう認知してもらうのかを考えなければなりません。アマナのコーポレートサイトでは、Webサイト全体のトーン&マナー、UXも含めてアマナのブランドを体感できる情報設計をしています。

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Webサイトのリニューアルが失敗する理由

佐藤:Webサイトをリニューアルする際の失敗として、よくある3つを例にあげます。

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まずひとつ目は、発信側である企業と閲覧するユーザーそれぞれの視点で利点を設計できていないケースです。

先述の通り、コーポレートサイトにはマーケティングとブランディングの側面があり、ページによって役割が異なります。ページ毎の役割を意識せず、企業側の発信したい内容に寄せたコンテンツばかり制作すると、閲覧するユーザーは欲しい情報が掲載されていないというズレが発生します。このような事態が発生しないよう、あらかじめコーポレートサイト全体でページ毎の役割分担を設計しておく必要があります。

ふたつ目は、リニューアルにあたってベンダー側と共通の視点を持ってコミュニケーションができていないケースです。Webサイトのリニューアルを成功させるためには、企業とベンダー間でページの役割を共有し、同じ目標に向かってプロジェクトを進めなければなりません。

そして最後に、Webサイトは常にアップデートしていく必要があるということを念頭においておきましょう。リニューアルの段階でアップデートを視野に入れて体制やワークフローを設計することで、リニューアル後にも効果を追求できるWebサイトを運用できます。

Brand-to-Demandを用いたゴールデンKPIの設定

渡邊:Webサイトのリニューアルにあたって重要となるのは、適切なKGIとKPIの設定です。アマナではKGI/KPI設定時に、Brand-to-Demandというフレームワークを利用しています。

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Brandとは、長期的な成長を見据えたブランディングに寄与する戦略です。オーディエンス、つまり顧客になる前段階で自社を知ってくれる人を獲得するためのアプローチを指します。一方のDemandとは、即時成果にこだわったマーケティング効果をもたらす戦略であり、リードを獲得し、ターゲットへリーチするためのアプローチです。

コーポレートサイトは、マーケティングとブランディングの要素のどちらも持ったWebサイトです。そのため、Brand(オーディエンス獲得)とDemand(リード獲得)の機能をバランスよく備えていなければなりません。

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Webサイトに設定するKPIには、下図のようなものが考えられます。

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Brandの観点では、自然検索流入数やユニーク訪問数など、どれだけのオーディエンスと接点を獲得できたかを測る流入指標をKPIとするのが一般的です。対してDemandの観点では、成約数や企画単位での契約数、リードの獲得単価などをKPIに設定し、施策の分析などに用います。

KGI/KPIは、企業がコーポレートサイトに何を望むのかという目的によって異なります。まずは、自社の目的から逆算してKGIを設定し、そこに紐づくKPIを検討しましょう。

ゴールデンKPIとサポート計測指標

渡邊:アマナでは、ゴールデンKPIとサポート計測指標というものを設定して、KGI/KPIを追っています。

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ゴールデンKPIとは、マーケティング目標やビジネス目標に紐づいた最も影響力のある指標です。サポート計測指標はゴールデンKPIに評価軸を追加する場合に設定しますが、指標を追うことに時間を割かれないよう、多くても3つまでにとどめておくことを推奨します。

KGI/KPIの設定にあたっては、下図のように企業全体のKGIからトップダウンに設計しなければなりません。企業全体のKGIから、マーケティング活動全体のKGI、マーケティング施策単位でのKGIをそれぞれ紐づくように設定します。

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例えば、企業のKGIが「年間売上100億円」だとし、マーケティング活動全体のKGIを、企業のKGIに紐づけて年間売上の100億円の10%の「10億円をマーケティング施策経由で創出すること」に設定します。

売上の平均が1件あたり1億円の場合、10件のリードを創出するのでは不十分です。過去の実績を参照しながら、成約率に対する最適なリード獲得数などの数値を設定する必要があります。実績から1年間に1,000件のリードを獲得する必要があると判明したら、ふたたび今までの転換率データなどを参照して、Webサイトのユニークユーザーは10万人必要だろう、と適正な数値を設定します。

ここで重要なのは、施策が親となるゴールデンKPIに紐づいている状態を作ることです。WebサイトのBrand観点でのゴールデンKPIが「10万人のユニークユーザー獲得」だった場合、実施する施策は、10万人を獲得できるような検索ボリュームのコンテンツ発信を設計しなければなりません。

適切なゴールデンKPIとサポート計測指標を設定するためには、既存のWebサイトの過去のデータを参照・分析することが欠かせません。そのほか、個々の指標を注視して施策を決定することや、効果検証も必要不可欠です。20240807report_11.png

適切な頻度で効果検証を行う

渡邊:流入指標のような、短期で数値を捕捉できるものに関しては、毎週あるいは毎月数値をチェックし、効果測定は四半期ごとに実施してアップデートするのが望ましいでしょう。

ただし、KPIによって評価の適切なスパンは異なります。ブランド認知度のような長期的な成果は半期や1年ごとにチェックし、長期的な成果に紐づく細かいKPIは短いスパンで計測します。

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アマナではBrand・Trust・Demandの3軸それぞれにKPIを設定し、図のようにどれだけ目標よりプラスの差分を獲得できたかチェックしています。

サポート計測指標の選定方法は?

佐藤:渡邊さん、ありがとうございます。ここからは私から質問をさせていただき、さらに理解を深められればと思います。

まず、ゴールデンKPIを設定してから、サポート計測指標の選定に悩む方もいるのではと思いました。ゴールデンKPIと関連する指標は、相関式で表記できるのでしょうか?

渡邊:ある程度はできると思います。例えばユニークユーザーを増やすことがゴールデンKPIである場合、自然検索流入数や広告の費用対効果がサポート計測指標として考えられます。

佐藤:ありがとうございます。もうひとつ質問させてください。ゴールデンKPI1つあたりのサポーティング指標が最大3つというのは少なく感じられます。もっと指標が細かくてもいいのではないでしょうか?

渡邊:確かに先ほどのユニークユーザーを増やすというゴールデンKPIに関連する指標をたくさん挙げることはできます。しかし、重要なのは指標を追っていくことではなく、指標の動きにしっかりアクションして目標を達成することです。KPIを計測するリソースは無限ではありませんので、各施策で特に関連性の高い指標を定めておくのが重要だと考えます。

佐藤:例えば、コンバージョンとよく相関するサポーティング指標はなんでしょう?

渡邊:コンバージョンをどう定義するかで異なります。問い合わせをコンバージョンと定義した場合、問い合わせページへの流入量や、Webサイト自体の流入量、事業紹介ページへの流入量、そして離脱率が関連性の高い指標に挙げられます。

しかし、コンバージョンを資料ダウンロードと定義すると、相関する指標は変わるので、コンバージョンをまず定義する必要があります。

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定量×定性分析で解像度の高いWebサイト分析を

小林:Webサイトリニューアルにあたっては、既存のWebサイトの状況把握が欠かせません。ここからは、Webサイトの分析方法について解説をします。

Webサイト分析の理想的な流れは、下図の通りです。

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複数のチームが連携不足だったり、KGI/KPIがほかの施策から独立している場合は部分最適となりやすく注意が必要です。

ユーザー行動が見える「ヒートマップ分析」と「レコーディング分析」

小林:Webサイトの分析の方法はさまざまあります。以下は、分析方法の例の一覧です。ここでは、取り組む企業は多くないものの効果的な「ヒートマップ分析」と「レコーディング分析」を紹介します。

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ヒートマップ分析は、ユーザーのクリックが発生した箇所を視覚化します。赤色に近いほどクリックが多く発生している箇所です。クリック数も確認できます。

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ヒートマップ分析によってクリックされている箇所とそうでない箇所が明確になり、ユーザーがどの機能やページを必要としているのかが把握できるなど、リニューアルに非常に役立ちます。

レコーディング分析は、ユーザーの実際の行動を再現した動画から、ユーザーがどのようにWebサイト内を回遊しコンバージョンに至ったかを確認できます。ユーザーの行動が具体的に把握できるので、定量分析では見えなかった課題が見えてくるのが大きな利点です。

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タグを埋め込むことでレコーディングデータが取得できますが、全てのデータをチェックするのは工数がかさみます。そのため、コンバージョンに至ったユーザーの行動をセグメントに分けて分析するのが有効です。

データを組み合わせた実名化

小林:さらに効果的な分析手法として、匿名ユーザーの属性をデータプラットフォームを組み合わせて明らかにする「実名化」が挙げられます。

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実名化はまず、ターゲットユーザーを設定し、データプラットフォームの情報を組み合わせてターゲット情報を紐解いていきます。例えば企業が持つCDPやMA、CFA、CRMなどには、顧客データが格納されています。それに加え、企業情報データベースを提供しているベンダーのサービスを組み合わせれば、匿名ユーザーの企業名を特定できます。

実名化したターゲットから施策の有効性を分析することで、より効果的な検証や改善に役立ちます。

KPIに合わせて分析手法を使い分けることが重要

佐藤:ありがとうございました。より効果が得られる分析を行うためにうかがいたいのですが、分析手法で最も重要なことや、注意すべき点を教えてください。

小林:重要なのは分析の目的を明確にすることです。効率的に分析を行うためにも、KPIに即してどのような分析をするのかあらかじめ決めるのがいいかと思います。また、ユーザーの解像度を上げることも重要です。定量分析だけではなかなか解像度が上がらないというときに、紹介したヒートマップやレコーディングを活用すると効果的です。

佐藤:というと、設定したKPIによってはヒートマップやレコーディングが有効ではないケースもあるのでしょうか?

小林:そうですね、KPIと分析手法がマッチしていないと的外れな分析になってしまうので、注意する必要があります。

佐藤:Webサイトリニューアル後の分析が重要ということですね。

小林:コーポレートサイトはブランディングのツールではありますが、マーケティングの機能も有していますので、作って終わりにしないことが非常に大切です。

チェックすべき指標をしっかりと定め、達成できているのかどうかを計測し続け、アップデートしていくプロセスこそが肝であり、そのひとつのツールとなるのが前述した各分析手法です。

Webサイトリニューアルをアマナがトータルサポート

渡邊:アマナでは、Webサイトリニューアルに関連するサポートメニューも用意しています。CMAS(コンテンツマーケティング・アドバイザリー・サービス)は、コミュニケーション戦略策定のサービスです。KGI・KPIの策定から、どのようなターゲットとチャネルでどのようなコンテンツを提供していくべきなのかを、企業のみなさまと一緒に策定していきます。

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ヒアリングを取り入れて、今の状態をしっかり可視化してから最適な戦略を策定し、施策を開始してからも月次レポートを提供しながら改善施策の提案をいたします。コーポレートサイトやほかのさまざまなWebサイトでも、ご活用いただけるサービスです。

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小林:私からは「ウェブサイトアナリティクスサービス」という診断サービスを紹介します。「ウェブサイトアナリティクスサービス」は、Webサイトを定量・定性の両面から分析し、改善点を提示します。

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そのほか、「アクセシビリティ診断サービス」も提供しております。2024年4月に障害者差別解消法が改正されたこともあり、Webサイトにとってアクセシビリティ対応の有無はますます欠かせない要素となっています。まだまだ対応がこれからという企業も多いかと思いますので、このタイミングで診断を受けて対応を進めることをおすすめします。

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ほか、アマナでは「SEO診断」も提供しております。BtoBのWebサイトであってもSEO対応は必須と言っても過言ではないかと思いますので、ご検討いただければ幸いです。

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佐藤:本ウェビナーで紹介した通り、コーポレートサイトはブランディングの装置であるとともにマーケティングの機能も持ち合わせた重要なWebサイトです。作って終わり、ではなく、初期段階で設定した指標を見つめ直しアップデートを実施しながら、成果を可視化していかなければなりません。

リニューアルにあたってはゴールデンKPIの設定や効果的な分析を行うことが有効ですが、アマナではこれらをトータルでサポートするケイパビリティが備わっています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
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