vol.153
近年、多くのBtoB企業が苦心しているのが、若年層へのアプローチです。2025年には20歳未満の人口が全体のわずか13%になると予測され、特に若年層の採用に関しては、企業は「選ぶ側」から「選ばれる側」へと立場が変化しています。
本ウェビナーでは、アマナでメディアプランナーを務める後藤恭子と、コミュニケーションプランナー兼メディアプランナーの成田洋が登壇。Z世代やミレニアル世代といった若年層の特徴を深く理解し、彼らに響くブランド戦略を展開するための具体的な方法について解説しました。
若年層へのマーケティングを成功させるためには、まず彼らの特徴を正確に把握することが不可欠です。ウェビナーでは、Z世代(1996年以降生まれ)とミレニアル世代(1981年から1995年生まれ)の情報への向き合い方や基本的な性格・志向について、データを交えて解説されました。
Z世代とミレニアル世代はデジタルネイティブと呼ばれるように、幼少期からインターネットやスマートフォンに囲まれて育った世代です。彼らの情報収集手段は、従来の世代とは大きく異なります。
上記のグラフが示すように、若年層の情報収集は主にSNSが中心です。特に、Instagram、YouTube、TikTokといったビジュアルコンテンツを重視するプラットフォームが人気を集めており、幅広い情報収集のためにSNSを利用している傾向が見られます。
後藤は、Z世代の特徴として「情報が自分に必要なのか、正しいのかの判断スピードが非常に早い」点を挙げました。情報過多の現代社会で、Z世代は自分に必要な情報を素早く見極め、効率的に情報を取捨選択する能力を身につけているのです。
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ソシエタスクラスタ分析(社会的価値観や行動パターンから人々をグループ分けする分析手法)によると、同じ若年層といえどもZ世代とミレニアル世代で特徴が異なることがわかります。Z世代の特徴は以下の通りです。
・同調志向が高い一方で、個人的なこだわりも強い
・社会貢献や環境問題への関心が高い
・立場や固定観念にとらわれない柔軟性
・「推し」文化など、特定の対象への強い愛着
一方で、ミレニアル世代は、以下の傾向があるといえます。
・仕事と私生活のバランスを重視
・ワーカホリックな傾向
・プライベートを謳歌することに価値を置く
成田は、自身がミレニアル世代であることを踏まえ、「プライベートにどれだけ注力するかに命をかけている人が多い」と述べ、「月曜恐怖症」や「週末至上主義」といった傾向が顕著であると指摘しました。
これらの特徴を理解し、世代ごとに適切なアプローチを行うことが、効果的な若年層マーケティングの鍵だといえます。
就活生の情報収集方法に関しても、若年層ならではの特徴がデータから読み取れます。以下は、就職活動での企業探しに有益な情報源と、志望企業の研究に有益な情報源の2つのアンケート結果です。
この結果から、就活生が情報源としてメインで用いるのは就活情報サイトであることがわかります。就活情報サイトを通じて企業情報を得た後に、興味を持った企業については、各企業のホームページを通じて詳細な情報を調べるという流れが基本だといえます。
後藤はこの結果から、「就職情報サイトで企業情報を閲覧されることだけでなく、就職情報サイトで見てもらう前に、自社の存在を学生に認知させることが重要である」と強調します。
認知度の低い企業や、名前は知っているものの就職活動時に思い浮かばない企業は、多くの企業が並んでいる就活情報サイトの中でクリックされにくいという課題があります。そのため、それ以前の段階で企業の認知度を上げることが非常に重要です。
では、企業が若年層にアプローチするためには、どのように認知を向上させていけばよいのでしょうか。前述の通り、若年層のうち特にZ世代は情報の取捨選択がスピーディーであることからも、短い時間で価値を提供しなければなりません。
認知の質を高めるには「どのように認知をさせるか(手法)」と「どのような認知をさせるか(表現)」の2軸で考えなければなりません。
本ウェビナーでは、このうち「手法」について、具体的なSNSや広告ツールが紹介されました。
YouTubeは、若年層にとって最も人気のある動画プラットフォームのひとつです。動画市場そのものが拡大している今、YouTubeは世界最大の動画広告メディアとして位置付けられます。
動画広告というコンテンツの最大のメリットは、少ない時間で多くの情報をユーザーに届けられるという点です。1分の動画に含まれる情報量は約180万単語に相当し、これは静止画や文字と比較して圧倒的に多く、短時間で効果的に情報を伝達できるといえます。
さらに、動画コンテンツには以下のような特徴があります。
・多くの情報が正確に伝わる
・感情に訴えかけることができる
・記憶に残りやすい(文字の約2倍以上)
これらの利点は、実際に動画広告の配信結果からも裏付けされています。静止画広告と動画広告を比較して、ブランドリフト調査(ブランドに対する認知や態度の変化を測定する調査)を行ったところ、「動画広告の方が大きな効果を示した」と成田は述べます。「ブランドの認知度向上はもちろんのこと、ブランドへの好感度や商品購入意欲といった、より深い段階の指標でも顕著な上昇が見られる」と補足しました。
YouTubeを若年層向けに用いるのであれば、「YouTubeショート」の活用も検討しましょう。Z世代の70%がYouTubeショートを利用しているというデータもあり、YouTubeそのものだけではなく、YouTubeショートに動画を流すことで、よりターゲットへ情報を届けられる確率が高まるといえます。
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InstagramもYouTubeと同様、視覚的なコンテンツに特化したプラットフォームであり、若年層の利用率が非常に高いSNSです。さらにInstagramは、ブランドとの関係を構築するプラットフォームとしても有用であり、BtoB企業でも活用価値が高い点が特徴だといえます。
特に注目すべきは、Instagramのリール機能です。ユーザーがInstagramで費やす時間のうち約20%をリールが占めているというデータもあり、YouTubeショートと同様、若年層へのアプローチのために欠かせない機能であるといえるでしょう。
リールを活用するにあたっては、下図の3つを意識した短尺動画を作成することで、より広告の効果を高めることができます。
特に、ビジュアルをいかにデバイスリッチに見せられるかという点は、広告効果を大きく左右します。InstagramはYouTubeと異なり、広告を一定時間スキップさせない「トゥルービュー広告」といったメニューがありません。よって、Instagram上で若年層ユーザーにしっかり見てもらうためには、目に入った瞬間にユーザーの興味を引くビジュアルを用意する必要があります。
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SNSは、若年層の採用活動でも有用です。以下のデータが示すように、若年層の多くが就職活動でSNSを利用しています。
60%以上の学生がSNSなどでインターンシップや就活情報を収集しており、特にInstagramの利用が目立ちます。最近では、YouTubeやInstagramで就活系インフルエンサーの投稿を参考に面接対策やES対策をしているという就活生も多くいます。
このデータから、企業のSNSアカウントは単なるマーケティングツールではなく、若年層の採用に向けた重要なタッチポイントとなり得ることが分かります。
「どのように認知させるか(手法)」を検討するにあたっては、SNSとともにオープンウェブ広告を組み合わせることで、若年層ユーザーの認知や興味関心を捉えることができます。
オープンウェブ広告とは、その名の通り「オープンウェブ(Webメディア)」に掲載する広告を指します。一般的に、ユーザーは下図のように、情報収集の意欲が高まった時に、ビジネス系のメディアやライフスタイル系のオープンウェブを利用します。企業はSNSへの出稿を通してユーザーのプライベートシーンで認知を獲得しつつ、さらにオープンウェブへの出稿で情報収集意欲が高まっているユーザーにアプローチをし、興味関心を促進します。
「LoopMe」は、オープンウェブへの広告配信ができるツールです。LoopMeの最大の特徴は、アンケート結果などからAIがユーザーをセグメント分けし、それぞれに適切な広告を配信、かつその配信もリアルタイムでAIが分析し最適化できるという点です。
成田は、アマナのサポート事例として、広告配信前にユーザーに対して「当社(企業名)を知っていますか?」といったシンプルなクイックサーベイを実施し、セグメント分けし広告配信を行った例を解説しました。「イエス」と答えたユーザーや類似プロファイルを持つユーザーには、さらに企業の事業内容を伝える広告を配信し、「ノー」と答えたユーザーには企業の認知度を上げるための広告を配信。配信中にもアンケートを実施して最適化を行い、広告効果を向上させます。配信後は、独自のサーベイツールで認知度や検討度などのブランドリフトを計測し、リアルタイムで最適化を実施しました。
LoopMeは、訴求内容をユーザーの自社認知レベルによってカスタマイズしながら広告効果を高められます。これによって、インプレッションやCVといったメディアマトリクスといわれるような指標だけではなく、認知・検討、ロイヤリティ、理解度といったブランドマトリクスの指標も最適化が可能です。
「SeenThis」は、静止画広告を動的に表示する新しい動画ソリューションであり、LoopMeと同様にオープンウェブ広告の配信に活用できます。
SeenThisの特筆すべき点は、環境への配慮です。一般的に、1ギガバイトのデータ転送を行うごとに1キログラムのCO2が排出されており、SeenThisの利用によってこのCO2排出量を削減できます。多くの企業がカーボンニュートラルや持続可能な社会を目指す中、広告配信でもこうした取り組みをアピールすることで、環境意識の高いZ世代から共感を得られると考えられます。
エコの観点だけでなく、SeenThisは、広告配信で高い成果を上げられるソリューションでもあります。オープンウェブ上の画像バナー広告の枠にリッチな動画広告を表示できるにもかかわらず、クリック単価などはバナーと同程度の低コストに抑えられます。動画を活用しながら、クリックやCTA獲得も効率的に行えるため、費用対効果の高いソリューションであるといえるでしょう。
若年層に自社を選んでもらうためには、「どのように認知させるか(手法)」と、「どのような認知をさせるか(表現)」の2軸を組み合わせて戦略を立てていく必要があります。
アマナでは、本ウェビナーで紹介した手法の部分だけでなく、広告のクリエイティブやプランニングなどの「どのような認知をさせるか(表現)」のサポートも得意としています。企業の課題に合わせて、若年層向けの適切なアプローチ方法をプランニングしトータルサポートが可能です。ぜひお問い合わせください。
Advanced Marketing Service
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私たちの強みは、戦略的マーケティングとアマナのビジュアルコミュニケーションを組み合わせたアプローチです。このシナジーにより、キャンペーンを完璧に計画・実行し、ブランド価値と売上の向上を図ります。複雑な現代のマーケティングをナビゲートし、精度と創造性でビジネス目標の到達を目指します。