本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。
会議の時間を削減し、進行を効率化しているのに、現場の忙しさや息苦しさが変わらない。そんな違和感を抱く場面は少なくありません。本書『クリエイティブファシリテーション』は、会議の問題を回数や長さではなく、「何のために集まるのか」という価値の設計から捉え直します。第1回では、会議効率化の限界を手がかりに、価値ある会議とは何かを考えます。
〜本コンテンツは、書籍『クリエイティブファシリテーション』(AKI[野口正明]著・日本能率協会マネジメントセンター刊)から一部を抜粋・編集したものです(この記事は第1回/全3回)。
No.2:成果が出る会議は、「正解探し」ではない(7月14日公開予定)
No.3:価値ある会議は、“結論を急ぐ場”ではなく“問いを深める場”である(7月15日公開予定)
「おかしい。会議の回数を減らしたり、時間も短くしたのに、なぜみんなの忙しさは変わらないのだろう?」
A社営業部の田中マネージャーが感じていたこの違和感は、まるで目に見えない何者かが組織の時間を盗み続けているかのようでした。
振り返ってみれば、半年前は希望に満ちていました。部門内の会議効率化プロジェクトが軌道に乗り、確実に成果が出ていたからです。30分会議の徹底、オンライン会議システムの活用、AI議事録ツールの導入など、数々の施策を実行し、メンバーからも「会議が楽になりました」という声が上がっていました。
数字上でも明らかに改善が見られました。会議時間は平均3割短縮、週2回あった定例会議も1回に削減、ペーパーレス化により資料準備の手間も大幅削減。「これで本来の営業活動にもっと時間を使えるはず」と田中マネージャーは期待に胸を膨らませました。
しかし現実は違いました。
確かに会議は回数も時間も効率化されています。しかし、メンバーたちの表情は以前より疲弊して見えるのです。「忙しさが減るどころか増している気がする」「1日中何かに追われている感じがする」という声が聞こえてきます。
よく調べてみると、会議減の一方で、決定事項の頻度やスピードが格段に上がっていました。AI議事録などのおかげで今日決まったことが即座に明確になり、「明日からすぐやろう」というプレッシャーが高まっています。チャットでの進捗確認も頻繁になり、1日中何らかの通知に反応し続ける状態が常態化していました。
効率化によって時間を「節約」したはずなのに、その時間はどこに消えていったのでしょう? 考える余裕や心の余白は失われ、より“詰め込まれた”働き方に変わってしまっています。
この事例は、決して珍しいものではなく、多くの日本の組織において、同じような現象が起きています。
近年、会議の効率化への関心が急速に高まり、デジタルツールの発達も手伝って、解決策が次々と導入され、確実に成果を上げています。しかし、現場の実感は「仕事が楽になった」というより「さらに忙しくなった」というのが正直なところでしょう。
なぜこのような現象が起きるのでしょうか? 会議効率化の取り組みには、見落とされがちな構造的な問題があります。
1.時間のパラドックス
会議減で浮いた時間は新たなタスクで埋め尽くされ、本来生まれるはずの考える余白が失われてしまいます。
2.プレッシャーの増大
決定の高速化により「即アクション」が求められ、フォローアップが頻繁になることで、1日中何かに追われ続けることになります。
3.議論の質的劣化
効率を重視するあまり、本質的な議論や創造的な思考に必要なプロセスが軽視され、表面的な合意形成に終始するようになります。
これらの現象が示しているのは、会議の効率化だけでは解決できない根本的な問題の存在です。それは、会議の「質」に関わる問題です。
多くの会議効率化の取り組みは、「効率的に進行する」「時間内に結論を出す」「スムーズに合意形成する」といった量的および技術的な改善に焦点を当てています。しかし、会議そのものが生み出す価値や意味について問い直すことは、ほとんどありません。
その結果、効率的になった分だけスケジュールが過密になり、決定が早くなった分だけ実行プレッシャーが高まり、以前よりもかえって忙しくなってしまうのです。これは、根本的な「そもそもその会議は何のために存在するのか」という本質的な問いを避けているからに他なりません。時間を節約することで、より充実した働き方が手に入るはずが、気がつけば心の余白を失い、創造性や人間らしさまでもが奪われている――これが、現代の組織が直面している構造的な問題なのです。
本当に必要なのは、会議で議題を効率的に処理することではありません。会議を真の価値創造の場に変えることです。
現代の組織が直面する本当に重要な課題――AI時代における人間の役割、変化の激しい市場での価値提供、多様性を活かした組織運営、持続可能な事業モデルの構築などには、教科書的な正解は存在しません。定型的な情報共有や既定路線の確認だけでは、決して解決できない問題ばかりです。
このような「正解のない問題」に取り組むためには、グループでの話し合いを促進し、円滑な合意形成や意思決定を支援する手法=「ファシリテーション」が重要な役割を果たします。ただし、単なる円滑化を超えた、全く新しいアプローチが必要です。それが、本書で提案する「クリエイティブファシリテーション」なのです。
(この記事は第1回/全3回)
No.2:成果が出る会議は、「正解探し」ではない(7月14日公開予定)
No.3:価値ある会議は、“結論を急ぐ場”ではなく“問いを深める場”である(7月15日公開予定)
▼書籍紹介
会議が増え、効率化しても忙しさが解消されない。その背景には、会議の「量」ではなく「質」の問題がある――本書はそんな問題意識から、正解のない課題に向き合い、新しい価値を生むための会議の設計法を提示する一冊。著者が提唱する「クリエイティブファシリテーション」は、“わからなさ”を排除せず、対話と議論を通じて価値創造へつなげる実践的アプローチです。現場で使える28のパターンを通じて、会議を単なる調整の場から、価値創造の場へ変える視点が学べます。
▼書籍情報
書名:クリエイティブファシリテーション
著者:AKI(野口正明)
出版社:日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2025年11月28日
https://amzn.asia/d/08R3vqri
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