ビジネスパーソンの創造力を高める手段の一つとして、今や欠かせない素養と考えられているのが「アート」です。アマナ・アートプロジェクトの上坂真人が、アートを学んだり、アート的思考を身につけるのにおすすめの本を連載で紹介。第2弾はグローバルスタンダートな教養としてのアートを学べる本ベスト3です。
分厚い美術史本を読んでいる時間のないビジネスパーソンに、効率よく西洋美術史のポイントを学べる一冊として、まずおすすめしたいのがこちら。
著者の西洋美術史家・木村泰司氏は、「美術は見るものではなく読むものである」と言います。その時代になぜその作品は描かれたのか、それぞれの芸術運動の流れが起こった背景にはどんな社会が存在していたのか――。美術という窓から世界史を読み解くことができます。
木村氏曰く、各時代の政治、宗教、哲学、風習、価値観などが造形的に形になったものが美術品。欧米人にとって必須の教養であり共通認識である西洋美術史は、ビジネスエリートにとって必須科目と言えます。西洋絵画をジャンル別に解説し、さらに“読み”を深められる同氏の新著、『名画の読み方 世界のビジネスエリートが身につける教養』(ダイヤモンド社)と併せてどうぞ。
アートディーラーとして活躍する三井一弘氏ならではの視点で、美術展を最大限に楽しむ工夫や、歴史に名を遺したアーティストの数々のエピソード、作品売買の裏話に至るまで、あらゆる視点でアートに親しむコツを教えてくれる一冊です。西洋絵画から浮世絵、彫刻、現代アートに至るまでカバーし、たくさんのカラー挿絵と共にやさしく学べる仕立てになっています。
歴史の流れを知るだけでなく、時代やジャンルの異なる作品に共通性を見出したり、作品のもつ意外なストーリーを知ることも、鑑賞の楽しみの一つです。また、日本人はとかく「アートは美術館で見るもの」と思いがちですが、海外では投資対象としても見られるほどに「買う」文化が根付いています。作品を所有し、本物のアートと暮らすことで磨かれる感性がある、と三井氏は言います。2019年3月には、国内最大の「アートフェア東京2019」はじめ複数のアートフェアが都内で開催されるので、足を運んでみてはいかがでしょうか。
原題は「Visual Intelligence」。著者のエイミー・E・ハーマン氏は、美術史家であり弁護士でもあるという異色のキャリアです。「知覚の技法」という独自のメソッドを開発し、FBIやCIAほか、ジョンソン・エンド・ジョンソンやHSBCホールディングスなどの大手企業で、アート鑑賞によって観察力・分析力を高めるためのセミナーを実施し、その効果が認められています。
描かれているのが誰(または何)で、いつの時代の、どこで起きた出来事で、なぜそういうポーズをしているのかーー。アート作品をデータの集合体として見たとき、そこには途方もない量の経験と情報の蓄積があります。もてる知識と洞察力でそれを観察・分析し、人に伝え、応用する能力は、あらゆる場面で活かすことができます。本書では、名画のビジュアルを用いながら、ハーマン氏の鑑賞トレーニングを疑似体験できるようになっています。
次回の第3弾は少し趣向を変えて、「熱を帯びるアートビジネスを知る」と題し、巨大化し続ける世界のアートビジネスを描いたおすすめ本を紹介します。
新興国でもアートを社会的ステータスとして見る向きが強まり、国や企業などさまざまなステークホルダーが存在する中で、アートマーケットはどう動いているのか。グローバル企業はアートをブランディングの一環として巧みに活用し、日本でも、ZOZOの前澤友作氏をはじめ富裕層のアート購入の話題が増えつつある今、把握しておきたい世界のアートマーケットの構造と、市場を動かすキープレイヤーについて知ることのできる3冊をピックアップします。