こんにちは。全国の店舗撮影やパノラマ撮影ほか、
近年は銀座や渋谷など、都内の主要な地域で大きな再開発が行われており、新旧さまざまな建造物の空間撮影に携わる機会も多くなりました。
新しい建物ではその空間のコンセプトが伝わる撮影が必要ですし、壊される場合も、これまで愛されてきた建物をどう残すかという”空間アーカイブの表現”が特に重要になっているように思います。
そこで今回は、「空間を記録する」というテーマについて、2つの最新手法の視点から考えてみたいと思います。
以前の記事「空から見下ろすだけではない、ドローンの特性を活かした空撮事例」で、建て替えのために一時閉館したホテルオークラ東京・本館を、ドローンなどで撮影した映像をご紹介しました。
出典:Sayonara Okura – Aug. 31, 2015 / Closing of Hotel Okura’s main building
ご覧いただければわかるようにこの映像は、作る側の意図やシナリオに基づいて撮影し編集・制作されたもの。映像を見る側は、作る側の意図を感じ取りながら再生される映像をある意味、受動的に見るかたちです。
では、こちらの映像はどうでしょう? 映し出されているのは、ホテルオークラ東京・本館と同じく、建て替えのために一時休館した東京・渋谷のパルコ劇場。43年の歴史に一旦幕を閉じることになった劇場の内部を3DCGで記録し、まるでその場にいるかのように劇場内部を360度バーチャルツアーすることができるかたちにコンテンツ化したものです。(画像をクリックすると、実際のパルコ劇場3DCGを体験いただけます)
▼ 画像をクリックすると、実際のパルコ劇場3DCGを体験いただけます
客席や舞台だけでなく、ロビーや廊下、化粧室まで、ありのままの状態ですべて記録されています。実は、最初の企画段階から劇場担当の方には「劇場をありのままの姿で残したい」という想いがありました。特定のだれかの目線や意図で作るアーカイブではなく、見る人それぞれが劇場に対して持っている想いに寄り添えるものにしたかったのです。
さて、2つの映像を比較してみてください。
空間をコンテンツとして残すことを考えると、どうしても単純に撮影することばかり重視してしまいがちですが、その映像をコンテンツとしてどう表現するかによって、情報の届き方が変わってきます。
空間の情報とともに何をどんなふうに伝えたいのか—— そうした視点があると、より適切な手法を選択し効果的な空間のアーカイブを作ることができるのです。
パルコ劇場のコンテンツは、空間をそのままのかたちで記録したもので、制作側の意図やシナリオが含まれていません。どこから何を見てどう感じるかは、このコンテンツを見にきた各々に委ねられています。こうした手法を選択したのも劇場の方でした。
劇場には、お客様をはじめ、出演したキャスト、スタッフなど、多くの方々のそれぞれの想いが詰まっている。こちらの一方的な想いでコンテンツをつくるのではなく、できるだけフラットなかたちで届けたい—— そうした劇場側の考えにマッチしたのが、この手法だったわけです。
実際の制作は、3DCGモデリングサービス「ジオウォーク(現在はサービスを終了しております)」によるもので、特殊なカメラを使って撮影し空間をスピーディーに低コストで3DCG化を実現。不動産物件や歴史的な建造物、展示会の空間など、アーカイブを目的に記録したりするのに適しています。
どんなかたちで空間の情報を届けたいかによって、映像やコンテンツの制作手法は変わってきます。3DCGなど、最新のコンテンツ制作に関わる情報をうまくキャッチアップしながら、最適な手法を選択してより伝わるコンテンツに結びつけてください。