企業サイトは公開することがゴールではなく、必要に応じたリニューアルや細かなアップデートを繰り返しながら運用していく必要があります。何をどう改善すべきなのか、押さえるべきポイントが理解できていなければ、「改善」のためのリニューアルが、かえって「改悪」になりかねません。その抑えるべきポイントを見える化するのに有効なのが「サイト分析」というアクションです。
サイト分析の意義や手法について「amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE」を担当する、アマナのWebプロデューサー・土方由美が解説します。
企業サイトのリニューアルは、3年から5年の周期で行われることが多いとされています。スマートフォンなどのデバイスや、SNSをはじめとした各種サービスの出現に伴うデザインや機能トレンドの変化、また、企業サイトの減価償却期間が一般的に5年(注1)とされていることなどが理由です。
上記以外にも、企業固有の事情もあります。
・社名を変更することになった
・上場を控えてブランディングやIR情報を整えたい
・創立○周年に合わせてサイトを一新したい
・グローバル対応が必要となった
・新しい企業パーパスを設定したのでサイトに反映したい
・求職者に良い印象を持ってもらいたい
などの理由が多く挙げられます。
つまり、企業サイトリニューアルは、時代と並走し、さらにはリードしていくべき企業にとっては、自社の成長や変化に応じた避けられない重要イベントということになるのです。
重要なイベントでではありながら、実は「しくじりやすい」ポイントが多いのも、このサイトリニューアルです。
ある制作会社によると、なんと「Webサイトリニューアルの75%が失敗に終わっている」という驚異的な調査結果もあるといいます(注2)。ここでいう失敗とは「サイトの本来の目的を達成させることができなかった」ということ。
よくあるケースとしては、古いデザインからトレンドを取り入れたデザインにリニューアルしたのは良いものの、デザインだけの変更にとどまり、導線や集客施策は改善しなかったというものです。ユーザーが増える施策を行っていない上に、回遊状況も改善されないのでは、デザインだけ変更しても、サイトのパフォーマンスに変化は起こりにくいのです。
また、デザインを重視するあまり、画像や動画を多用しすぎて表示速度が遅くなってしまった、というケースもあります。サイトの表示速度が遅いとユーザーが離脱しやすくなるため、結果としてサイトパフォーマンスが低くなり、Googleをはじめとした検索エンジンからの評価も下がってしまう可能性があります。
それでは、サイトリニューアルを成功させるために、最初に行うべきことは何でしょうか?
まず、自社サイトの現状を正確に把握すること。そして、サイトリニューアルの目標に対し、現状と目標の距離感を計測した上で、最短でその目標に辿り着く施策を準備することです。
現実と理想の距離感を測り、その距離感を縮めるのに有効な手段、それが「サイト分析」です。
サイト分析はダイエットにたとえるとわかりやすいかもしれません。まず体重計で現在の体重を計測する。それから「5kg痩せよう」と目標を立てる。その上で、痩せたいタイミングに合わせて、どんな運動をするか、食生活を改善するかを決めていきます。早く痩せたいのであれば、運動も食生活改善も同時に行うべき。現状を知り、目標を意識することで、より効果的な施策を考えることができるのです。
さて、サイト分析というと、Google Analyticsのような計測ツールで、サイトにアクセスするユーザー数やアクセス数を確認することと考える方も多いと思います。ページビューやユーザー数、滞在時間の定量データを用いて数値を計測する方法は、代表的な計測データの頭文字を取って「PULSE METRICS(パルス・メトリクス)」と言われるフレームワークの考え方から来ています。
パルス・メトリクスのフレームを用いた定量データ分析は、ダイエットにおけるヘルスメーターのようなもので、現在の体重を量ってからスタートするように、最初に自分を知るという意味でもサイト分析の基礎であり、定期的に確認しておくべきです。ただ、数値の計測だけでは判断しづらい場合があります。なぜなら「ユーザー体験の品質を計測しきれない」から。
たとえば、パルス・メトリクスの指標の1つに「滞在時間」がありますが、「滞在時間が長いからユーザーのロイヤリティが高かった」と言えるとは限りません。「ユーザーが興味のある記事(コンテンツ)を読み込んでいたので滞在時間が長くなっている」なら良いのですが、「ユーザーが目的の情報を見つけられずサイト内をさまよっていた」ということであれば、サイトへのロイヤリティはむしろ下がってしまう可能性もあります。
そこで、これらの課題を解決するために考え出されたフレームワークがあります。それが、GoogleのUXチームが2010年に発表した「HEART METRICS(ハート・メトリクス)」です。このメトリクスでは、パルス・メトリクスのように、ユーザーのアクション数を計測するのではなく、ユーザーの状態を計測できるように考えられているのが特徴です。
Happiness(ハピネス):満足度や視覚的魅力、ユーザーが他の人に勧める可能性や使いやすさという面から、ユーザーが気に入ってくれている度合いを測る。
Engagement(エンゲージメント):サービスに対するユーザーの関与度合いに関する指標です。たとえば、ユーザーが1週間のうちにサービスを利用した回数の平均や、投稿した写真やコメントなどユーザーインタラクションの数、頻度や内容から計測します。
Adoption(アダプション):サービス、あるいはサービスの一部の機能を初めて使うユーザーについての指標です。1週間で新規で作成されたアカウントの数、初めて購入したユーザー数、ラベル機能(注3)を初めて使ったユーザー数が例として挙げられます。
Retention(リテンション):既存のユーザーが再度サービスを利用する割合を表します。いわゆるリピート率です。
Task Success(タスクの成功):主要なタスクを完了するための時間、完了したタスクの割合、もしくはエラー率などを定量的に測る指標のことです。
HEART METRICSのメリットは、ユーザーの満足度や改善するべき指標を可視化できることです。実際の分析では、上記5つの項目に対して、さらに「Goals」「Signals」「Metrics」という項目を掛け合わせて確認していきます。
数値だけで計測した際に見えづらいユーザー体験を浮き彫りにすることで、リニューアル時のサイト設計の確度が上がります。
こうした分析は、Google が発表している動画やサイト(注4)などを参考にすれば、自社の担当者でも実施できますが、多数のサイトを分析している分析専門家に依頼すれば、よりスムーズに確認することができます。
データ(定量)とビジュアル(定性)、両方向から目標までの距離感を計測し、目標への到達施策をそろえることができれば、効率的、かつ最終的にコストパフォーマンスの良いサイトリニューアルを実施できるでしょう。
アマナが2023年10月にリリースした「amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE」では、Google Analyticsによる定量分析のほか、今回ご紹介したHEART METRICSを活用したビジュアル分析を提供しています。次のサイトリニューアルを成功させるためにも、「amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE」の導入が大きなサポートとなることでしょう。
注1:国税庁「ソフトウエアの取得価額と耐用年数」
Webサイトは耐用年数「その他のもの」に当たると考えられる。
注2:東洋経済オンライン「Webサイト刷新の75%が失敗に終わる残念な訳」
注3:「ラベル機能」は、サービスやプロダクトにおいて、ユーザーが特定の機能や要素にラベル(タグやラベル)を付けて利用できる機能のこと。例えば、SNSプラットフォームでユーザーが自分の投稿にラベル(例: タグ、カテゴリ、キーワードなど)を付ける機能が提供されている場合、ラベル機能の利用が増えると、ユーザーはコンテンツを整理したり他のユーザーと共有したりするのに役立つため、サービスやプロダクトの価値を高める要素となります。
注4:Heart framework – UX framework to measure UX impact on large scale
How to Use the Google HEART Framework to Measure and Improve Your App’s UX
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amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE
amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE
Webサイトは公開することがゴールではなく、公開後のトラフィックデータを分析し、改善しながら運用していく必要があります。
アマナが40年以上に渡り追求してきた、独自のビジュアル知見に基づく「ビジュアル分析メソッド」と「データ分析メソッド」を掛け合わせ、企業コミュニケーションに不可欠なWebサイトの分析・改善をサポートします。