コンテンツが複合的に接続する、バーチャル・リアル融合の世界観

vol.83

顧客体験(CX)を進化させるデジタルコミュニケーション

Text by Tomoko Sato
Photograph by Ayumi Okubo

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベントが2022年5月25日に開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。テーマ「顧客体験(CX)を進化させるデジタルコミュニケーション」の回を紹介します。


企業に新たなコミュニケーションが求められる現在、リアルの代替ではなく新たな体験の場として、バーチャルの価値を高めるために必要な視点とは何なのでしょうか。長くデジタルコミュニケーション領域に携わるアマナの青木裕美、五藤裕樹、児玉敦が登壇。 2つの事例を通して、今後さらに発展するバーチャルコミュニケーションのビジネス活用のナレッジとビジョンが共有されました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオからリアルタイムで配信を行いました。

オンライン上で多様化する接点

青木裕美(以下、青木):本日のテーマである、顧客体験を進化させるデジタルコミュニケーションについて議論を広げていきたいと思います。冒頭に企業やブランドのコミュニケーションにおける変化を少しお話しさせていただきます。

皆さんも感じられていると思いますが、コロナによって一気に加速したオンラインで、日々の働き方の変化はもちろん、このようなウェビナー、オンライン商談、展示会、ライブコマースなど、さまざまな手法のコミュニケーションが生まれました。消費者のオンラインバリアも薄くなり、接点が多様化し、消費時間が長くなっています。

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会場となった『deepLIVE™️』配信スタジオにて。(左から)アマナの青木裕美、五藤裕樹、児玉敦。

青木:企業が質の高い CX をどのように実現しているかのアンケートで、断トツの1位はカスタマージャーニーを意識したマーケティング施策の最適化でした。オンラインが中心になったことで、さまざまなタッチポイントにおける目的やゴールを整理して一気にコミュニケーション展開させることに重点を置かれる企業が多いようです。

ここで、パネラーの2人を交えて、アマナが参画させていただいている YKKさんの事例でデジタルショールームの施策をご紹介します。

デジタルショールームの体験と世界観

青木:まずデジタルショールームを構築するに至った経緯・背景をお伺いできますか。

児玉敦(以下、児玉):YKKさんのデジタルショールームは、デジタルコミュニケーションのプラットフォームとして、2020年にWebサイトを納品させていただきました。プロジェクトをスタートさせたのは、ちょうどコロナ禍が始まった年で、 YKK さんは3つの大きな課題を持たれていました。まず営業活動の低下・展示会の減少、次にグローバルでの見せ方の統一、そして商品企画から販促・宣伝までの一気通貫です。

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児玉:プラットフォームの役割は2つあります。1つは社内の営業部隊のサポートツール。もう1つはその先にいるエンドクライアントへの新たな商品のプレゼンテーション機会とコミュニケーションツールです。そのブリッジとなることをコンセプトに展開しました。

青木:ローンチまでいろいろなエピソードがあったと思いますが、いかがでしょう。

児玉:プロジェクトは 商品戦略室のお客様が主幹となり、 IT部門や事業部門なども含めてグローバルでトータル50名以上の方々がコンセンサスを取りながら進めていく共同体制でスタートしました。  

体験やコミュニケーションの取り方について会話を積み重ね、制作方針として大事にしたのは、量より質。主たる目的であるセールスのプラットフォームとして、商談からさらに受注につなげるカスタマージャーニーを意識し、同時にYKKさんの新たな魅力を発信するブランディングの側面も重視しました。

YKKさんのロンドンにあるショールームをバーチャルなイメージで発展させるアイデアがみんなの中で生まれ、ここをモチーフにしています。せっかくのバーチャル空間なので、イベントやファッションショーを展開するスペースを設けています。リード獲得・商談化のところでは、オンラインミーティングの窓口を設けました。部門などの垣根を超えてひとつになろうと「ONE DIGITAL YKK」のスローガンを掲げて、このプロジェクトをローンチに結び付けました。

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五藤裕樹と児玉敦。

青木:YKKさんの社内やサイト来訪者の評価はありますか。

児玉:滞在時間がYKKさんの他のサイトよりも長いですね。デジタルショールームの中にいろいろなブースがあり、動画、CGなどの表現がたくさんあるので、1人あたりのページビューが非常に長いことが結果として挙げられます。

青木:いい進化を遂げているこのプロジェクトにおいて、言える範囲で今後の展望をお伺いできますか。

五藤裕樹(以下、五藤):今、ミッションを2つ掲げています。営業販促支援のプラットフォームとして活性化すること。そして、オウンドメディアの戦略的活用です。これらのミッションを達成するために、営業の前線支援にデジタルマーケティングを絡めて、定性・定量の両方を見ながら活用していきます。また、『モノからコトへ』というコンセプトに沿ったコンテンツを増やして、世界観を表現しつつ、新しい YKK さんの姿が見られるブランド戦略を入れていこうと話しています。

具体的なところでは、リアル展示会との融合です。今年はリアルでの展示会も実施しつつ、そこにデジタルショールームの映像を入れ、 MA ツールと連携を取らせていただいています。さらにブランド認知・イメージ創出として、商品づくりのインスピレーションを与える新しいブースを拡充していきます。今年、初のブランデッドムービーを制作させていただき、このバーチャルショールームの中に格納し、オウンドの SNS でも活用していきます。

今後、我々としても新しい体験の価値を創り出してデザインすることをコンセプトに掲げ、よりこのショールームを発展させて顧客とYKKさんに寄与できればと考えています。最終的には、メタバース的なところにたどり着けばいいなと思ったりもしています。

デジタルコミュニケーションの潮流

青木:後半は、コミュニケーションの進化について。デジタルとリアルの融合で企業は今まで以上に新たなコミュニケーションの手法や可能性を探しているので、その潮流をご紹介できればと思います。

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青木裕美。

青木:メタバースといえば、今はどちらかと言うとBtoCの施策が多いと思いますが、働き方や生産性の向上でも注目されています。例えば、Meta社のWorkroomsやMicrosoft 社のMeshでバーチャルオフィスをつくることができ、 BMWさんの施策ではデジタルツインの工場版で作業員やラインの配置をシミュレーションしています。BtoCでは伊勢丹さんがバーチャル店舗を展開しています。

メタバースやバーチャルは、もともとゲームやエンタメ、アパレル業界がトレンドを牽引している部分が多く、例えば、フォートナイトではゲームの領域を越えてこの中でライブ配信があり、映画鑑賞ができ、友達とコミュニケーションが取れて、新商品をいち早く試着することがでます。企業はリアルより先にCGで商品をつくり上げ、人気が出たら実商品を生産することができます。また、バーチャルヒューマンはリアルのインフルエンサーやモデルよりも認知があり、利便性が高いと思います。

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青木:そんな中で、バーチャルやデジタルの利便性についてよく聞かれるのでざっとまとめさせていただきます。

まず、物理的制限がないこと。必ずしもその場に行かなくてもオンライン上やバーチャル上でコミュニケーションが取れ、疑似体験ができます。提供者側は、目的に合わせた空間提供を物理的な時間とコストをかけずできます。

また、バーチャルツインみたいな話で、アバターを使って自分以外の自分になれることもユーザーとしての利便性の1つだと思います。

あとは、企業のSDGsにおいて、今までのように生産をしなくても展開されていくこともあるので環境負荷が少ない。また、いわゆる格差やハンディキャップを乗り越えることができます。

バーチャル空間の拡張性と可能性

青木:実は、アマナもバーチャルでチャレンジしているものがあるのでご紹介します。五藤さんお願いします。

五藤:アマナでは2018年から『浅間国際フォトフェスティバル』を実施しています。今年はリアルとデジタルを融合し、1つの会場をバーチャルで組んで開催しています。「PHOTO ALT(フォトオルト)」として、実際にはない広大なオリジナルの空間を制作し、美術作品を展示したコンテンツを用意しています。今までとはまた違うフォトフェスティバルの楽しみ方ができると思います。

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五藤:また、「アマナバーチャルコネクト」というサービスを開発しました。バーチャルな空間をギャラリー、ライブ、E コマースの他、ショールームやライブラリーなどに活用していただき、これらを1つのシステムネットワークでつなげていくことができます。企業の皆さまが持つさまざまなコンテンツをバーチャルでつなげて、顧客の皆さまとコミュニケーションを取っていくプラットフォームを提供できればと思います。

青木:アマナが得意としてきた3DCGの技術、ビジュアル、視覚表現を前提に、五藤が話したバーチャル空間にスペースをつくり、そこでコンテンツの展開はもちろん、バーチャルヒューマンなどの技術を使いながら、さまざまな体験や手段を複合していきます。いくつかのプロジェクトが進んでいるので、また時間のあるときに紹介させていただければと思います。

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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。

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