生成AI時代の組織戦略:競争力向上に不可欠な“創造性”とは

vol.144

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Text by 真太郎

SPEAKER スピーカー

生成AIの発展はめざましく、私たちのビジネスにも影響を与えつつあります。これからの生成AI時代で、人や組織はどのように価値を向上させていくべきか。カギとなるのは「創造性」です。

本ウェビナーでは、さまざまなプロジェクトでクリエイターたちとともに創造性を発揮してきたアマナの児玉秀明(クリエイティブエバンジェリスト)、山根尭(クリエイティブサイエンティスト)、杉山諒(プロジェクトデザイナー)が、生成AI時代を生き抜くために組織が考えなければならない「AIと人間のバランス」について議論しました。

生成AI時代に考えるべき「AIと人間のバランス」

山根 尭(以下、山根):2023年4月に世界経済フォーラムが公開した「今後5年で労働者に求められるスキル」のランキングの中で「創造的思考」が第2位になっています。このように、ビジネスのシーンでも、創造性が求められている時代であるといえます。

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しかし、今はビジネスでも生成AIが普及しはじめてきており、これからの「生成AI時代」では、AIを使いこなす人に仕事が奪われるようになるであろうと予測されます。また、生成AIは過去の膨大な学習データを組み合わせてアウトプットを生み出すため、創造性が必要となる仕事も、AIやそれを使いこなす人に取って代わられる可能性があります。
 
このような時代背景を踏まえ、これからの生成AI時代で、人間は創造性をどのように発揮すればよいのでしょうか。AIと人間のバランスについて、本ウェビナーでは、以下の3つのテーマからそのヒントを探ります。

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人間が創造性を発揮する価値とは

山根:創造性やアイデアと一言で言っても、小さなものから組織全体を動かせるものまで多岐に渡ります。その中で、「ビジネスに変化を生み出す力点」はどこにあるのか、つまり、「人間が創造する価値」というのはどこにあるのかを議論できればと思います。

前提として、テクノロジーの進化や生成AIの活用により、我々人間のアウトプットの平均レベルが上がっています。例えば、これまでクリエイターが行っていたコンセプトメイキングなどに関しても、生成AIを活用すれば、未経験者であってもある程度のレベルのアウトプットができます。このような時代の流れの中で、人間が生み出すべき創造性はどのようなものであるとお考えでしょうか。

児玉 秀明(以下、児玉):まず定義として、今日お話しするのはいわゆる新しいアイデアや価値を生み出す能力としての「クリエイティビティ」「創造力」です。ただ、この「クリエイティビティ」というのは特殊なことではありません。オランダにあるビジネススクール「カオスパイロット」の学長の言葉に、以下があります。

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この言葉のように、素直になれるような環境の中で、日々の皆さんの考え方や何かを思う気持ちが自然と創造的なものになれるということです。

例えば、写真を例にして考えてみます。今はiPhoneなどの登場によって、一般の方でもいい写真が撮れる時代になりました。では、クリエイティビティは全てテクノロジーに取って代わられたかというと、私はそうではないと考えます。以下は、かつてのフォトグラファー、アンセル・アダムスの発言です。

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このように、「写真を撮る」という行為を考えてみると、自身のコンセプトをカメラや写真にフィックスすることがまさにクリエイティビティなんだろうなと私は思います。

杉山 諒(以下、杉山):つまり、AIが写真のような画像も生成できるとしても、作り手の思いを乗せたり、人間がコンセプトメイキングをしたりすることが重要ではないか、ということですよね。

児玉:そうですね、コンセプトも含めて根本のクリエイティビティが重要だと思います。

生成AIにクリエイティビティはあるのか

児玉:一方で、生成AIにクリエイティビティはあるのか、ということも考えたいですね。これから生成AIはクリエイティビティを際限なく持つかもしれません。しかし、私は、今はまだ人間のクリエイティビティと生成AIの若干のクリエイティビティをうまくマージしながら、人間がクリエイティビティを発揮できるように生成AIがアシストしてくれるような状況であると考えています。

杉山:私は、生成AIは平均値的な「多くの人が良しとするであろう答え」を吐き出してくれると感じています。しかし、それで人は感動するのか、心が動くかというのか、というのが観点ではないでしょうか。

やはりいいクリエイティブを見て「もっと応援したいな」とか「次の世代・時代にどうつなげるのか」というインスピレーションを受けることが、人間が創造する価値だと思います。私たち人間がクリエイティブをつくる時には、対象となる相手がいて、彼らに対しての思いを乗せて想像力を働かせます。今の生成AIでは、このような文脈からアウトプットを出すことはできません。

児玉:そうですね。人間は、思いもよらないものを考えつく生き物であり、人間が作り出した不可思議な考えしかない「驚き」があると思います。

山根:現在はB2C、B2Bどちらも対人間ですから、「いかに感情を動かすか」が重要だと考えます。この観点で創造性を発揮することが、人間の価値だといえるかもしれません。

生成AIを活用したクリエイティブのステップを考える

山根:ここからは、「生成AI時代にアイデアをどんなステップで考えればいいのか」について考えたいと思います。以下は、AIと人間がどのようにコラボレーションできるのか、私が考えた仮説です。

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アイデアを考えるステップは、上図の通り4つに区分できると考えられます。

このステップにAIの活用を当てはめて考えてみると、ステップ1の「違和感を持つ」は、人間が人と出会ったり読書をしたりなどの体験を通した上でできることであり、AIでは難しいのかなと。ただ、ここで持った違和感に対して、AIに壁打ちして解像度を上げていくことは可能だと考えます。

次のステップ2で、違和感に対しての問いの方向性に関するデータを収集しますが、ここもまだ人間が集める必要があると感じています。なぜなら、この集めたデータに対してAIを用いて分析やトレンドの特定を行いますが、元のデータによってはハルシネーションが起きてしまうからです。これを最小限に抑えるために、人間が目利きして収集したデータが必要であると感じています。

また、ここで得られたAIからの分析結果はそのまま鵜呑みにするのではなく、人間の感性や感覚と組み合わせ、最終的な問いの設定は人間が行う必要があると考えます。

続くステップ3では、人間の思考のプロセスをAIに落とし込むことが重要です。その上で、AIに可能な限り多くのアイデアを生んでもらいます。

そして最後に、AIが生み出した多くのアイデアに対して人間が批判的な思考を持ってブラッシュアップしていきます。さらにブラッシュアップしたアイデアをAIにも批判してもらい、最終的に人間がアイデアを選定します。

このようなスタイルでAIと人間によるコラボレーションの可能性はあると考えますが、おふたりはいかがでしょうか。

児玉:私も、AIと人間はこれから共存していくと考えます。例えば、ハーバード・ビジネススクールの教授である竹内先生は、以下のように人とデジタルの役割を述べています。

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何かを生み出す時、「0-1」はまだまだ人間の役割で「1-9」はAIとかロボットに取って代わられる部分であり、最後の「9-10」は、人間の役割であるとしています。

しかし、「1-9」に関しても人間とAIがコラボレーションすることはこれから十分に考えられます。また、AIの進化により、人間が思ってもいないものをAIが生成することも十分あり得ます。AIが素晴らしいものを生み出したとして、人間が採用しなければもったいない。そのためには、人間が判断できる感性を持ち、AIとコラボレーションしていく必要があるのではないでしょうか。

また、人間とAIがコラボレーションするためには、人間が体験を通して主体的に得られる感覚質(クオリア)が重要であると考えます。今のAIには身体能力・身体性がありません。先ほどのアイデアを考えるステップ1で、「体験を通す」という一次情報の中で違和感を得て、そこをアイデアの出発点にするといいと思います。

杉山:先ほど山根の方から紹介もありましたように、AIと壁打ちしながら歩んでいくあのステップはまさしくAIと人間のコラボレーションの姿だなと考えます。私も仕事で考えなければならない時にとりあえず、とAIに議題を投げますが、何かしらのアウトプットを必ず出してくれるという点では非常に活用できます。しかし、出てきたものに対して「自分だったらどうするかな」「自分だったらどう考えるかな」と一度寝かせて考えるステップを踏むことが多くあります。

「素人発想」からアイデアはスタートする

児玉:ステップ1の「違和感をもつ」に関しては、日本企業の方の多くは何かを始めるときに玄人の発想で考え始めてしまうという傾向があるといえます。カーネギーメロン大学の教授である金出氏による『素人発想、玄人実行』という書籍のように、まさにこのAI時代では素人のような素直な発想が非常に重要ではないでしょうか。

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杉山:本当にその通りだと思います。「ユーザー視点で考える」ということを突き詰めていくと、「自分が本当にこれを使うのか?」「感動するのか?」といった視点で考える必要があると思います。

生成AIのアウトプットの判断軸は個々人の経験や日々の思考

山根:先ほど示したアイデア出しのステップのとおり、生成AIはアイデアを出してくれますが、現時点ではそれに対してブラッシュアップをしたり、最終的な選択を行うためには人間の力が必要です。この時、アウトプットの良し悪しの判断や言語化する力が求められるかと思いますが、どのような審美眼やものさしが必要だと考えられますか。

児玉:なかなか一言では表しづらいですが、最終的な判断軸は、その人の体験や経験が凝縮されたセンスだと思います。センスというのは「直感」などと言われますが、直感はその人が長年積み重ねてきた経験や知識が瞬発的に出てくるものですので、経験や知識を積むためにも日々の努力は必要だと考えています。

杉山:児玉さんと同じ回答ですが、私は、内面を鍛えることが大事かなと。自らの違和感や好奇心に素直になり、どんなことでも疑問を持って考え、日々自分に問いかけることが重要かなと思います。

生成AI時代に必要な創造性人材を循環させる「Great RIVER」

山根:これからの生成AI時代でも、やはり人間の持つ創造性というのは重要です。我々アマナでは、「Great RIVER(グレートリバー)」という企業に創造性人材を提供するサービスを提供しています。

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新規事業の開発、カスタマーエクスペリエンスの設計などで高いレベルの創造性を発揮できる人材を組織に派遣し、組織とともに並走します。従来のように戦略をコンサル会社に、実行を制作会社に、と点で依頼するスタイルではなく、すべてを面でサポートします。もちろんプロフェッショナル人材を派遣するだけでなく、アマナの持つナレッジやネットワークを掛け合わせてサポートを行い、シナジーを最大化させます。

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すでにいくつかの企業と本プロジェクトを進めていますが、多くの企業から「素晴らしい人材をありがとうございます」といったフィードバックをいただいています。通常の転職市場や数あるプロフェッショナル人材サービスなどには登録されていない、アマナのネットワークだからこその創造性人材を提供できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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未来を構想し創造的な課題解決を目指す創造性人材を提供し、企業のクリエイティブな体制構築を支援する人材提供サービスです。GreatRIVERを通して、社会全体で創造性が循環することを目指します。

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