今さら聞けない著作権の基礎を解説する「クリエイターのための著作権解説」。前回は被写体となっている人の権利、「肖像権」と「パブリシティー権」について解説しましたが、今回は、写真に写っている建物や小道具の権利について考えてみましょう。建物や小道具の場合、複数の注意点がありますので、しっかりとポイントを押さえておくと安心です。
建物や屋外に恒常的に設置されている銅像などの著作物は、「公開の美術の著作物等の利用」に該当するため、著作権法第46条によって著作権が制限されています。建物(建築の著作物)の場合、建築として複製しない限り著作権侵害にあたりません。例えば写真に撮ったり(複製)、それをWEBサイトに掲載(公衆送信)しても、原則的に問題はありません。
なお、建物の場合、十分な創作性のないもの、どこにでもあるビルや家屋はそもそも著作物とは認められない可能性が高いでしょう。
建物の写真を使う際に気を付けなければならない点は3つあります。
まずひとつは撮影の際に建物の敷地内に入っていないかどうか、ということ。物件によっては商用撮影を禁止している場合や事前に許可が必要な場合がありますので、許可を得ずに撮影したり、許可を得ずに撮影された写真を使ったりするとトラブルに発展する可能性がありますので注意しましょう。
次に気を付けていただきたいのがフリーライドです。フリーライドとは、他者が築いた名声や信用に“ただ乗り”する行為のことで、不正競争防止法に抵触する可能性があります。自社のサービスや商品と無関係の物件の写真をイメージとして使う場合には、十分に配慮しましょう。
また、個人の住宅などの場合、遠景であれば問題ありませんが、個人情報が特定できるような使い方は控えましょう。
建物の写真については、注意すべきポイントは著作権よりも上記(施設管理権、不正競争防止法、プライバシー権)への配慮です。
ロゴマークは商標登録され商標法によって保護されている場合もありますが、単に写真に写っているだけであれば、原則的に問題ありません。ただし、建物の場合と同様に、フリーライドには注意が必要です。
小道具のロゴでよく問題になるのが、画像処理によってロゴを消すか、消さないか、ということです。自然に消せるのであれば消した方がよい場合もありますが、不自然なロゴ消しは逆にトラブルを招く場合もあるので難しいところです。ケースバイケースなので、全体の構成や、写っている小道具の状態などから総合的に判断してください。
小道具の使用については明確な“正解”がありません。トラブルを防ぐためにも、常識的に考えて製造元のメーカー、ブランドが不快に感じるような使い方をしないように気を付けましょう。
服飾品や文具、電子機器、パッケージなど、大量生産されているプロダクトは「応用美術」と呼ばれ、著作物には該当しません。意匠登録され意匠法によって保護されている場合もありますが、商標と同様に、単に写真に写っているだけであれば、原則的に問題ありません。
ただし、誰が見ても特定のブランドのものであることが分かるような衣装の場合、使い方によってはフリーライドにあたる可能性もあるので注意しましょう。
また、衣装の場合、舞台衣装のような極めて創作性の高いものは著作物と認められる場合もあります。そういった衣装を使う場合、衣装の提供元がデザイナーなどの著作権者と異なる場合は著作権者にも許諾を得るなど、適切に対応することが大切です。
まとめ
・建物の写真を使うときに注意すべきポイントは、敷地内に入っていないか、フリーライドにあたる使い方をしていないか、プライバシー権を侵害していないか、の3点。
・ロゴが入っていても、適切に使えば撮影しても原則的に問題ない。
・大量生産されている服飾品であれば、撮影時の衣装にしても原則的に問題ない。
イラスト:ひらのあすみ
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