ロイヤリティフリー画像も要注意!モデルの肖像権と使用許諾とは?

人物写真を広告やWebで使用する際、新たに撮影する場合でも、ストック素材を活用する場合でも、いずれにしても被写体である人物(モデル)の肖像権が正しく処理されているかは、必ず見ておくべきポイントです。連載「写真の権利」、第5回のテーマは、人物写真を安全に利用するうえで知っておきたい「肖像権使用同意書・モデルリリース」についてです。

※2020年11月27日更新

モデルリリース、おさえるべき4つのポイント

モデルリリースは、人物撮影を行う際に制作者側とモデル側との間で取り交わす、肖像権の使用に関する約束事を記載した契約書です。ストック素材としてネット上で広く流通している人物写真の多くも、カメラマン側とモデル本人との間でこの書類の取り交わしがなされています。

アマナイメージズのモデルリリースは、モデルに合わせて以下の4つのフォーマットを使用しています。

1) モデルが成人で、モデル事務所に所属していない人用
2) モデルが成人で、モデル事務所に所属している人用
3) モデルが未成年で、モデル事務所に所属していない人用
4) 
モデルが未成年で、モデル事務所に所属している人用

モデルリリースは、撮影の事後に起こりやすい「双方の認識違い」によるトラブルを防ぐための書類ですから、そのことをしっかり機能させる内容でなくてはいけません。

そのためのポイントを下記にまとめてみました。

POINT1:
対象となる写真を特定すること

いつ、誰によって、どのような内容で撮影された写真の利用に関するものなのかを具体的に明記する必要があります。同じモデルだとしても撮影の都度契約を交わしましょう。対象となる写真を具体的に特定することが重要です。

POINT2:
誰が同意したのかを明確にすること

フォーマットが4つに分かれている理由はここにあります。成人の場合でもモデル事務所に所属している人の場合はその事務所の代表者にも連名で同意を求めています。また、モデルが未成年者の場合は、万全を期すために親権者全員(離婚していない場合は両親)の同意を求めています。

実は過去に、父親が自分の子供が写真のモデルをしていることを母親から全く聞かされておらず、最悪にも父親が務める会社の競合会社のキャンペーンポスターにその子の写真が使われてしまったという、とてつもない偶然が生んだ不幸なトラブルが実際に起きています。

POINT3:
使用する内容や条件をできる限り具体的に明記する

これも非常に重要です。この内容が曖昧だと「そんなはずではなかった!」「約束した覚えはない!」というトラブルにもつながります。とくに写真がストック素材として流通する場合は、様々な媒体に露出する可能性がありますから、この点を十分に相手側に理解してもらう必要がありますし、その合意に基づいて撮影が行われなければいけません。広告等の撮影においても、モデル事務所側とこのあたりの内容をしっかり決めておかないと、後々競合バッティングなどのトラブルに発展する可能性がありますから注意しましょう。

POINT4:
契約期間を定める

無期限での契約は、制作者側に一方的に有利な契約と見なされて、効力を失う可能性があります。通常のストック素材での撮影においては、同意した日から5年間とするのが一般的です。その後の事務手続きを簡便化する意味では、あらかじめ自動更新にしておくと便利です。この点も双方でしっかりと合意してください。

モデルリリース(肖像権使用同意書)の歴史と運用

本来モデルリリースは、ストックフォトの撮影に限らず、広告や雑誌の撮影など様々な撮影現場で取り交わしがなされるべきものだと思いますが、あまり運用されていないのが実態かと思います。

ストックフォトの業界でも、つい15年ほど前まではカメラマンの口約束を信用して販売流通をしていた時代がありました。その後モデル側から「こんな使われ方をされるとは聞いていなかった」とか、「いつまでも勝手に販売している」といったトラブルが頻発したため、当社が中心となってフォーマットの定型化と取得の義務付けを業界内で啓蒙してきた歴史があります。

モデルリリースは、肖像権に関わる後々のトラブルを回避する上で大変重要な意味をもつ書類です。モデルリリースの取得が不明な人物写真の使用は絶対に避けるべきですし、新規の撮影においてもモデル側との書面による合意をおすすめします。アマナイメージズでは、素材の詳細ページで各種権利関係の取得を明記していますので、必ず確認してからご利用ください。

 

▼ amanaimages.com の作品詳細画面。モデルリリースの取り交わしがされているかどうかを確認することができる。

一方で、肖像権使用同意書の取り交わしがされていない人物写真も数多く流通しています。代表的な例としては、有名観光地のスナップ写真や、大勢の人たちが写っているお祭りの写真などがあげられます。このような写真の場合、写っている人々全てに肖像権使用同意を求めることは物理的に不可能ですので、当然モデルリリースも「取得されていません」と表示されています。

▼ モデルリリースが取得されていない例

また、過去に撮影されたアーカイブ写真や、報道を目的に撮影された人物写真なども、そのほとんどがモデルリリースの取得がされていません。

このようなモデルリリースの取得がされていない写真の使用は、あくまでも使用者側の自己判断での使用ということになります。最初に述べた、肖像権がクリアされているという勝手な思い込みが、後々のトラブルにつながる可能性がありますから、ぜひ注意してください。

また、大勢の人が集めるイベントや展示会のスナップ写真などを不用意にネットに掲載してしまうと炎上につながる恐れがありますから注意しましょう。イベントを開催して、後でその時の様子をネット上に公開する予定がある場合などは、会場の掲示板やサイト上の告知ページでその旨をあらかじめ伝えておくなど、予想されるクレームへの備えをしておくと良いでしょう。まったく無防備だと、完全に配慮が足りていなかったと見なされるからです。

人物写真を使用する場合は、必ず!モデルリリースの取得を確認する

よく、「ロイヤリティフリー(RF)は全て権利処理がされている写真」と勘違いしている方がいますが、それも大きな間違いですからぜひご注意ください。

おさえるべきポイントをしっかりと把握し、人物写真を安全に、そして効果的に活用していきましょう。

※2020年11月27日更新

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