動画ファースト時代における、コンテンツマーケティング最新トレンド

vol.110

動画ファースト時代における、コンテンツマーケティング最新トレンド

Text by Hisako Tanase
Photo by Mizuki Hino

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベント「amana Brand Communication Day 2023 Spring」が2023年5月24日、25日と2日間にわたり開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。今回は、テーマ「動画ファースト時代における、コンテンツマーケティング最新トレンド」の回を紹介します。


購買プロセスの変化に伴い、コンテンツマーケティングに力を入れる企業が増えています。一方で、コンテンツマーケティングに取り組む企業の多くがコンテンツの質や量に課題を感じています。そうした中、多様化した顧客接点において効果的にブランド訴求ができると注目を集めているのが動画コンテンツです。本セッションでは、コンテンツマーケティングにおける動画活用の有用性を明らかにしながら、実際の事例をもとに動画ファースト時代におけるコンテンツマーケティングのトレンドをご紹介しました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオから配信を行いました。

コンテンツを起点に顧客と有益な「つながり」をつくる

岡本崇志(アマナ/以下、岡本):本日は、動画配信クラウドサービスをグローバルに提供するソリューションプロバイダー、ブライトコーブ社より三瓶寬一さん、大西慎二さんにご登壇いただきました。アマナのUIUXディレクター児玉とともに、動画ファースト時代におけるコンテンツマーケティングのトレンドについてお話を伺っていきたいと思います。

児玉敦(アマナ/以下、児玉):まずは私から。今日のお話の中心となるコンテンツマーケティングの意義と、そのコンテンツ手法のひとつとして活用がますます拡大している動画コンテンツの有用性について再確認をしたいと思います。

昨年の調査データですが、顧客体験の軸がリアルからデジタルにシフトする中、71%のマーケターが「コンテンツマーケティングの重要性はさらに高まっている」とする認知調査の結果があります。その重要性とは、ブランド認知の向上や信頼と信用の構築、ナーチャリングや販売促進など、マーケターが抱えている課題や得たい成果に対する有効な打ち手としての期待です。

コンテンツマーケティングとは、企業と生活者の間にある有益なコンテンツを通して、サービス・商品の購買行動促進やブランディングにつなげる活動です。多くのコンテンツがある中で、企業が伝えたい情報とオーディエンスが欲しい情報が重なる部分が、有益なつながりをつくるコンテンツだと捉えています。

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アマナの児玉敦。

児玉:コンテンツマーケティングで成果を出すためには、顧客の態度変容のすべてのタイミングで有益なつながりをつくることが重要です。それだけ多くのコンテンツが必要となるので、つくるのはとても大変です。それでよく、「どこから手をつければよいか」といった質問を受けるのですが、答えは施策の目的がどこにあるのかで変わってきます。セールス(今すぐ客)なのか、ブランディング(そのうち客)なのか。戦略を持って実行していくことが肝要です。

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データで見る動画の有用性

児玉:人々の行動変化、スマートフォンの普及や通信環境の向上に伴って動画コンテンツ市場が拡大しています。

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動画広告市場は右肩上がり。企業の動画活用も社内外問わず増加している。

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児玉:視聴者がメッセージを覚えている割合は、テキストで読んだ場合が10%なのに対し動画は95%。動画があるサイトの方が、テキストや画像だけのページよりもサイト滞在時間が60%長いというデータもあります。動画は、テキストや画像に比べると直感的に理解しやすく、瞬時に物事が把握できる。エモーショナルな訴求も可能で、共感や信頼の形成につながる手法と言えるでしょう。

コロナ以降オンラインでの営業活動も盛んになっていますが、動画は営業ツールとしてそのまま転用可能なので、その点においても非常に効率的です。高いクオリティの動画はブランドイメージやサービス、モノの印象に直結するというところも利点として捉えています。

また社外だけでなく社内でのコミュニケーション、インナーブランディングとも相性抜群です。動画を通して正しく均一に情報を伝えることができますし、動画をアーカイブとしてストックしておくことで時間(タイミング)や場所の制限なく、社内の隅々までメッセージを届けることが可能となります。

成功の鍵を握る2つのエクスペリエンス

三瓶寬一(ブライトコーブ/以下、三瓶):我々からは、国内外のお客様とよく会話するストーリートピックスより、いくつかピックアップしてお話ししたいと思います。

最初の話題として「コンテンツの品質」というトピックを取り上げたいと思います。

コンテンツマーケティングにおいてコンテンツの品質、体験(エクスペリエンス)は非常に重要です。特に、顧客が見たい時に見たい環境で見られる配信チャネルを設けることは、ブランドの信頼性を高めて顧客を獲得するにあたって重要な要素だと思っています。

コンテンツの品質において大切なのは、デザインと視聴環境という2つのエクスペリエンスです。これらを同時に、しかし分けて考える必要があります。高品質で作った動画を低品質なシステムで。逆に、低品質な動画を高品質なシステムで提供するというのは、狙った効果が得られないうえに、かえってコストがかかる結果になりかねません。2つのエクスペリエンスは、例えると製品と店舗の関係に似ています。良い商品を適切な環境で提供することは、ユーザーエクスペリエンスに大きく影響します。

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ブライトコーブの三瓶寬一さん。

児玉:確かに、動画を視聴するときの快適性やアクセシブルは体験の質に直結してくると思います。その点において、今日のお話の中心である「コンテンツマーケティング」「動画」に加えて、「プラットフォーム」も重要な要素になりますね。

大西慎二(ブライトコーブ/以下、大西):アメリカで毎年開催されているサウス・バイ・サウスウエスト(略記:SXSW)という映画・音楽・テクノロジーの大規模なイベントではブライトコーブのプラットフォームが活用されました。コロナ禍により今年はハイブリッドで開催されました。プログラムは全体で600時間と膨大で、デバイスを問わずスムースに再生されるということがユーザーエクスペリエンスに重大な影響を及ぼします。しかしUXと視聴環境という両軸を成立させたことで、オフライン開催時よりも多くのイベント参加者を獲得することができました。

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ブライトコーブの大西慎二さん。

岡本:世界中の視聴者が見たい時に適切な品質で視聴できるコンテンツ、それを配信するチャネルという2つの要素を考慮し、成功した好事例ですね。

KGI・KPIに時間的要素をプラスする

三瓶:コンテンツマーケティングのROIに関するトレンドとして、「時間的要素」があげられます。KGI、KPIはよくよく議論されていることだと思いますが、それがいつのタイミングで達成されるのか。時間的ファクターを併せ持つことが重要です。

大西:ある生命保険会社様の事例をご紹介します。コロナ禍により対面での営業活動が減り、既存・新規両面において顧客との接点創出が難しい状況にありました。それを打破するためにエンタメコンテンツのライブ配信が実施されました。1〜2日という短期間のイベントで新規リードを多数獲得しただけでなく、既存顧客のデータを最新に更新することができました。

児玉:企業側から見ると新規リード獲得とともに既存顧客のデータ更新という裏目的があったわけですが、企業とユーザー、双方にとってのメリットをライブという瞬間的なところで合致させて施策を成功させているところが非常に興味深いですね。通常のコンテンツ施策と動画コンテンツ施策との違いを感じさせます。

岡本:先ほど品質のお話がありました。この事例ではどのくらいの人数が同時接続していたのでしょうか。

大西:このライブでは10万人が同時接続しました。弊社では最大で340万人の同時接続が可能なシステムがありますので、その点では問題がありませんでした。

インタラクティブなコンテンツ体験でエンゲージメントとロイヤリティを高める

三瓶:インタラクティブなコンテンツは、お客様に対する理解を深める、あるいは、お客様からの共感を得るうえで役立ちます。例えば動画に反応できるような機能があるとお客様の利用時間は長くなり、エンゲージメントが高まります。それは顧客ロイヤリティの醸成へとつながりますし、視聴分析を絡めることにより、お客様の興味・関心がどこにあるかという情報も得られるのです。

大西:DIY文化の盛んなアメリカの大手ホームセンター HomeDepotではインタラクティブ機能を含むハウツー動画を配信しています。各種ツールの使用方法などを動画で配信して顧客のニーズに応えるとともに、インタラクションから得た多様なデータを分析し、ユーザーの興味・関心を測っているのです。それらは売り場の設計、在庫計画、接客時の対応向上に活用されています。

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児玉:コンテンツマーケティングでPDCAを回すには、情報分析が欠かせません。縦スクロールの記事ならば、記事の途中に置いたCTAや読了率などからユーザの興味関心度を測ります。動画のように時間軸のコンテンツでもインタラクション機能を付加することでマーケティングデータを取得できるんですね。

岡本:インタラクション動画を活用することで、実際、どのくらい成果があがるのでしょうか。

大西:通常の動画に比べると47%ぐらい視聴時間が長くなるというデータがあります。インタラクション動画を置くことで、当然、サイトの滞在時間も長くなりますし、サイトの価値も上がります。

インナーコミュニケーションと動画コンテンツの相性

岡本:前段、児玉から動画コンテンツはインナーコミュニケーションにも有用であるというお話がありました。三瓶さん、これについてもお話しいただけますでしょうか。

三瓶:ブランディングにおいてインナーコミュニケーションは欠かせない機能のひとつです。ご承知の通り、ステークホルダーと一番接触機会が多いのは社員やスタッフです。その方々が自社のブランドイメージを発信することになりますので、企業のビジョンやミッションを正しく共有し、理解してもらうことが重要です。顧客に信頼される企業文化を醸成する上でも必須の要素だと我々は考えております。

インナーコミュニケーションにおける動画活用は、児玉さんがおっしゃったように非常に有益です。

ライブ配信やアーカイブ、多様な働き方にあわせてチャネルを用意するなど、アイデア次第で多彩な働きかけが可能です。しかし、それと同時に忘れてはならないのがセキュリティです。社内のコミュニケーションでは非常に秘匿性の高い情報やインサイダー情報を取り扱うことがあると思います。当然、限られた方、または許された方だけがアクセスできるようなセキュリティ機能が必要です。

大西:ハンバーガーショップチェーンのウェンディーズは、直営店・フランチャイズチェーン店をあわせて数多くの店舗を展開しています。トレーニングの均質化に課題を抱えていましたが、それまで紙だったマニュアルを動画に変えたところ、トレーニング時間の大幅な短縮と、属人化の抑制につながったという事例があります。会社が目指すインクルーシブな企業文化を浸透させることにも成功しています。

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岡本:ブライトコーブさんからは事例を交え4つのトピックをお話しいただきました。動画ファーストと言われる現代において、顧客との有益なつながりをつくるためには、動画のさらなる有効活用が求められています。時間的要素を考慮し、KGI、KPIを明確化させ、デザイン性と視聴環境という二つの品質要素を管理することで、より成果に繋がる動画活用が可能になるのではないかと思います。本日ご視聴いただいているみなさまにも、ぜひこのポイントを押さえていただければと思います。

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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。

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