そのAIで作ったビジュアル、ブランドの世界観を崩してませんか?

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SPEAKER スピーカー

生成AIの進化により、ビジュアル制作のあり方は大きく変わりつつあります。画像、映像、コード、文章、デザインなど、これまで専門的なスキルを必要としていた領域が、自然言語による指示で形にできるようになりました。制作にかかる時間も大きく短縮され、かつて数週間を要したプロトタイプ制作が、数日で実現できるケースも生まれています。

一方で、誰もが一定の見栄えを備えたアウトプットを生み出しやすくなったからこそ、新たな課題も浮かび上がっています。専門的な視点や明確な判断軸がないままAIを使えば、生成されたビジュアルは「それっぽい」ものにとどまり、ブランドが本来持っている世界観や文脈を損なってしまう可能性があります。

2026年5月14日に開催されたウェビナー「そのAIで作ったビジュアル、ブランドの世界観を崩してませんか?」では、アマナの堀口高士氏、松葉忍氏が登壇。生成AI時代におけるブランド表現の課題と、ブランドの“らしさ”をAIで再現可能にするための考え方について語りました。

生成AIで「誰もがマルチなクリエイター」になる時代へ

ウェビナーの冒頭で示されたのは、AIによって制作領域の境界が急速に溶けているという現状です。画像、映像、コード、文章、デザイン、3DCGなど、これまで異なる専門職が担っていた領域が、自然言語による指示を起点に横断的に扱えるようになっています。ウェビナーでは、こうした状況を「誰もがマルチなクリエイター」になりつつある時代として捉え、専門領域の壁が次々と溶けていく変化を提示しました。

その変化を象徴する事例として紹介されたのが、「AIマーケティングカンファレンス 2026」での展示プロジェクトです。 堀口氏と松葉氏の率いるAI専門組織「A³(amana AI Architects)」は、アマナグループの展示スペースで、イベントテーマである「Crafted Hallucination」を体現した体験型コンテンツを展示しました。このコンテンツは、ブース内のセンサーが人を検知し、3秒以上その場に留まると体験が自動的にスタートする仕組み。体験者が撮影を意識しない自然な状態から、AIが読み取りやすい1枚をシステムが自動で取得し、ポートレート風のビジュアルへと変換・生成していく実験的なインスタレーションです。

人物検知からポートレート風ビジュアル化まで

ハルシネーション表現と印刷による持ち帰り体験

従来であれば、プランナー、エンジニア、デザイナー、モデラーなど複数の専門職が関わり、数カ月単位の制作期間を要するような体験装置です。しかし今回は、Claude CodeなどのAIツールを活用しながら、企画、設計、実装、検証までを短期間で進行。松葉氏は、通常であれば2〜3カ月を想定する制作フローを、約2週間で実現したと振り返りました。

ただし、この短縮は、単にAIに作業を任せたことで実現したものではありません。たとえば今回の体験では、外部カメラからプログラムにライブ映像を流し込み、人物を検知し、一定時間以上映り込んだ人を対象に体験を開始する必要がありました。松葉氏は、カメラ映像を取り込むだけでも、設計を誤ればプログラムが認識できず、構築段階でつまずくリスクが潜んでいるといいます。 

そのため制作過程では、機能を一つひとつ分解し、モックを作りながら「動くのか、動かないのか」「次の機能にどう渡すのか」を検証していきました。詳細な設計をAIライクに用意しておくことで、実装時に不具合が起きた場合も、AIが設計書を参照しながら整合性の取れていない箇所を見つけやすくなります。AIによってバグの原因にたどり着く速度は上がりますが、そもそもどこに問題があり、何を修正すべきかを判断するには、人間側にも一定の専門性が求められます。設計書をAIに渡せばすべてが自動で解決するわけではなく、AIが提案した修正が本当に正しいのかを見極める判断も、人間側に残ります。

松葉氏によれば、AIと会話しながら制作を進めるうえでは、技術的な構造を理解する専門性と、広告・クリエイティブ領域で培ってきたアウトプットへの感性や創造性の両方が大きな要素になっていたといいます。どの工程をAIに任せ、どこを人が判断するのか。生成された表現が体験のコンセプトに合っているのか。そうしたディレクションが曖昧なままでは、最終的なアウトプットも曖昧になり、“それっぽいもの”にとどまってしまいます。

つまり、AIによる領域横断は、専門性を不要にするものではありません。むしろ、これまで培ってきた技術理解、表現判断、体験設計の知見をもとに、AIへ的確に指示し、出力を評価し、必要に応じて軌道修正することで初めて実現します。この力こそが、ウェビナーで語られた「クリエイティブ・リテラシー」です。

“それっぽい”を超える鍵は、クリエイティブ・リテラシーにある

こうした専門性は、体験型コンテンツの開発に限らず、日々の資料制作やビジュアル制作にも求められます。たとえば、ロゴやカラーパレット、ドキュメントのトーンをAIに読み込ませることで、ブランドの雰囲気に沿った初期案を短時間で生成できるようになっています。堀口氏は、こうしたツールによって資料づくりの工数が削減され、ブランドのトーン&マナーをコントロールしやすくなり始めている点に言及しました。 

しかし、制作が容易になるほど、別の課題も生まれます。一定水準の見栄えを備えたビジュアルを誰もが作りやすくなる一方で、似た印象の表現が増え、ブランド固有の個性や文脈が埋もれやすくなるのです。生成AIによって表現のハードルが下がったからこそ、アウトプットが「きれい」「それらしい」だけで終わっていないかを見極める視点が重要になります。

この“それっぽい”の壁を超えるために必要なものとして、ウェビナーでは「クリエイティブ・リテラシー」が挙げられました。堀口氏は、これを特定の分野に関する知識や情報を適切に理解し、解釈し、分析し、活用する能力として定義します。

“それっぽい”を超えるためのリテラシーとは?

たとえば、良い・悪いを見分ける審美眼、らしい・らしくないを判断する基準、感覚や意図を言葉にする力、ブランドの歴史や世界観を踏まえて表現を読み解く力。これらは、AIが単発の指示だけで自動的に出せるものではありません。

だからこそ重要なのは、個人のスキルや暗黙知に依存したままAIを使うのではなく、その判断軸を組織で扱える形に変換していくことです。生成AI時代のブランド表現では、プロンプトを上手に書くこと以上に、「何をブランドらしいと判断するのか」を明確にすることが問われています。

クリエイティブリテラシーをカバーする必要性

ブランドの世界観は、なぜ組織の中で崩れていくのか

ブランドの一貫性は、単なる見た目の統一ではありません。堀口氏は、ブランドの世界観が広告、SNS、営業資料、ウェビナーなどの接点で一貫していることが、ブランド価値の向上につながると指摘します。 実際、ウェビナーでは、ブランド表現の一貫性が収益や成長率にも関係するという調査データも紹介されました。ブランドの表現が接点ごとに揺らいでしまえば、企業が伝えたい印象や姿勢も伝わりにくくなります。

それにもかかわらず、実際の組織ではブランドの世界観が少しずつ崩れていくことがあります。その背景には、事業の多角化、短期的な成果目標、部門ごとのKPIの違い、運用しにくいガイドラインといった要因があります。新しい事業やサービスが増えるほど発信内容は多様化し、目の前のキャンペーン成果を優先する場面では、ブランドらしさの判断が後回しになることもあります。

一貫性を侵食する要因

さらに、部門ごとに重視する指標が異なることも、表現のばらつきにつながります。営業部門は短期成果を重視し、SNS担当はトレンドへの反応を求められ、ブランド管理部門は一貫性を保とうとする。こうした目的の違いが積み重なると、“らしさ”の判断は個別解釈に委ねられ、同じブランドでありながら、表現のトーンにばらつきが生じます。

従来のブランドガイドラインも、こうした状況に十分対応できない場合があります。情報量が多く、表現が抽象的で、具体的な判断基準が曖昧なままだと、現場でAIを使ってコンテンツを生成する際に、何を守るべきか判断しづらくなります。

AIによってコンテンツ制作量が増え、タッチポイントが広がる時代には、ブランドの世界観を守る方法も変える必要があります。求められるのは、ブランドらしさを属人的に管理することではなく、組織全体で活用できる仕組みとして設計することです。

仕組み化の必要性

ロゴやトーンの背後にある意味を、AIが扱える文脈にする

では、ブランドの“らしさ”とは何でしょうか。

ウェビナーでは、ロゴやビジュアル、トーン&マナーそのものではなく、その背後にある意味や文脈こそがブランドらしさであると説明されました。堀口氏は、アマナらしいアウトプットを見たときに「かっこいい」と感じる背景には、言語化されていないブランドのコンテクストがあると指摘します。そのコンテクストをAIで再現可能な状態にしておくことで、広告、インタラクティブコンテンツ、店舗体験など、さまざまな接点に展開しやすくなるという考え方です。

そのためには、まず自社のブランドらしさが、どこまで言葉にできているかを見直す必要があります。たとえば、「そもそも、自社らしさとは何か」を説明できるか。ある表現に違和感を覚えたとき、その理由を具体的に伝えられるか。判断基準が担当者個人の感覚にとどまらず、組織の共通言語になっているか。そして、担当者が変わっても、そのブランドらしさが引き継がれる状態になっているか。

こうした問いに答えられる状態をつくることが、AI時代のブランドマネジメントの出発点になります。担当者の経験や感覚に頼っている限り、その人が異動したり、外部パートナーが変わったりした瞬間に、判断軸は揺らぎます。だからこそ、ブランドらしさを共有可能なコンテクストとして設計し、組織の共通資産にしておくことが重要です。

AI時代のブランドマネジメントは、出力の前に文脈を設計することから始まります。どのツールを使うか、どんなプロンプトを書くかの前に、何を大切にし、何を避け、どのような印象を届けたいのかを共有しておく。その共通言語があって初めて、AIはブランドの世界観を広げるためのパートナーになり得ます。

コンテクスト設計のための4つの問い

属人スキルから共通コンテクストへ

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ブランドらしいビジュアルを、生成と評価の両面から支える「らしさAI」

ウェビナーの後半では、こうした課題へのアプローチとして、アマナが開発する「らしさAI」が紹介されました。AI時代にブランドの“らしさ”を失わず、ビジュアル表現を継続的に展開していくためには、ブランドの文脈を制作プロセスの中で扱える状態にしておく必要があります。「らしさAI」は、ブランド視点でビジュアルを診断し、再現可能なプロンプト設計を支援することで、生成AIを使った制作にブランドの判断軸を組み込むソリューションです。

「らしさAI」は、大きく2つの機能で構成されています。ひとつは、“らしさ”を言語化し、生成AIへの指示に落とし込むAIプロンプトビルダー。もうひとつは、生成されたビジュアルや既存の画像がブランドに適合しているかを評価し、改善点を提案するAI評価システムです。

プロンプトビルダーでは、ブランドらしいビジュアルから抽出したキーワードをもとに、チャット形式で利用シーンや目的を整理し、最終的に生成AIで活用できるプロンプトへと落とし込みます。Adobe Firefly、Midjourneyなど、利用する生成AIサービスに合わせた設計も想定されています。

評価システムでは、画像をアップロードするとブランド適合度を評価し、単にスコアを示すだけでなく、よりブランドらしさを高めるための改善ポイントも提示します。堀口氏は、この仕組みの裏側には、アマナが培ってきたビジュアルを見る力、言語化する力が組み込まれていると説明しました。

重要なのは、「らしさAI」が特定の生成AIツールだけに依存するものではないという点です。ブランドコンテクストをあらかじめ設計しておけば、新しい生成AIが登場しても、あるいは制作手段がAI生成、撮影、CG、ハイブリッド制作へと変わっても、判断軸として持ち越すことができます。

“らしさ”の言語化と評価

生成AIを、ブランドの脅威ではなく“らしさ”を広げる仕組みにするために

生成AIは、企業のクリエイティブ制作に新しい選択肢をもたらしています。これまで実現が難しかったアイデアを短期間で形にし、プロトタイプを作り、検証することも容易になっています。

一方で、誰でも作れる時代には、ブランドとして何を選び、何を選ばないのかがより重要になります。“それっぽい”ビジュアルを量産するのではなく、自社らしい表現を継続的に生み出していくためには、ブランドの文脈や判断基準を制作プロセスに組み込む必要があります。

AIは、ブランドの世界観を損なう要因にもなり得ます。しかし、適切な文脈と判断軸を与えることができれば、ブランドらしさをより広く、一貫して展開するための仕組みにもなります。生成AI時代のブランド表現は、ツールの使い方だけではなく、ブランドの“らしさ”をどう設計し、運用していくかにかかっているのです。

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プランニング&デザイン|A³ | amana AI Architects
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A³ | amana AI Architects

A³|amana AI Architectsは、「AIの進化を、美意識の進化へ」というビジョンのもと、生成AIを“ブランドに最適化する”ソリューション「AI Creative Architecture」を核に、企業のブランド表現を次世代の制作基準へアップデートするプロフェッショナル集団です。

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