モーメントを動かす社内メディアのつくり方

vol.84

マーケティング視点で捉える社内メディアの活性法

Text by Tomoko Sato
Photograph by Naoya Takahashi

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベントが2022年5月25日に開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。テーマ「マーケティング視点で捉える社内メディアの活性法」の回を紹介します。


コンテンツの力で社内のつながりを生み出すWeb社内報。社内コミュニケーションの活性化は、社外への競争力にも大きな影響を及ぼします。アマナの鈴木達弥が登壇し、自身が携わるナレッジ共有サービス「XBOARD(クロスボード)」の事例を交えながら、マーケティング視点で社内メディアを活性化するヒントを紹介しました。

はじめに:インターナルコミュニケーションと社内メディアの関係

こんにちは。アマナの鈴木達弥です。前段として、インターナルコミュニケーションと社内メディアの関係をお話させていただきます。社内メディアは、インターナルコミュニケーション推進手法の1つです。

インターナルコミュニケーションとは、企業の理念や価値観を社員1人1人が理解したうえで共感し、主体的・能動的に行動する状態をつくり、ビジョン実現のための組織力強化を目指すコミュニケーション活動です。

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言い換えると、「社内のヒト・コト・モノ・オモイの見える化」ができる状態になるための活動です。社内での共有と共感が、社外への競争力につながります。社内メディアに企業理念、ビジョン以外にも、成功事例やナレッジ、さらには隣の部署、隣の席の人がどんなことをしているか、商品・サービス開発者の思いなどをしっかりと見える化していくことで、各社員の発信力、営業力を向上させ、企業力強化につなげていく。この状態をつくる継続的な施策が必要です。そのために、社内メディアが1つの手段になります。これがインターナルコミュニケーションと社内メディアの位置関係です。

では、ここから本題の社内メディアの活性法のヒントを、伝える場所、情報の種類、伝え方という3つの軸でお話したいと思います。

伝える場所:メディアの役割

インターナルコミュニケーションの中で、今回、フォーカスするのは社内報です。発行形態として多いのはWebメディアとイントラネットですが、それぞれの性質や役割を整理すると、今日の主題である社内メディアの活性化のヒントが見えてきます。

イントラネットは社内ポータルのことで、メニューがディレクトリ型に並んで情報が詰め込まれているもの。対するWebメディアは、記事ベースのニュースサイトのようなものです。それぞれの目的・役割が違いますので少し整理していきます。

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アマナの鈴木達弥。

社内ポータルサイトは目的を持って情報を探しに行く人へのサポートで、会社に関するすべての情報がここに網羅されている場所です。探しやすいメニュー構成・状態になっているUIが必要です。それに対して、社内メディアは、新たな気づきを与え、社員力アップをサポートする場所。今、このタイミングでプッシュしたい情報を戦略的に公開するため、ライフスタイルに沿ったUI/UXが大事です。

それぞれの役割を考えて伝える場所を選び、そこに載せる情報を考えながら運用していくことが非常に重要になります。

情報の種類:知りたい情報、知らせたい情報

情報の種類には、知りたい情報、知らせたい情報があります。知りたい情報はユーザー目線の情報。知らせたい情報は、企業目線の情報です。外に向けたマーケティングで考えるとわかりやすいと思います。例えば、弊社が企業様に「XBOARD」のマーケティングを行う場合、知りたい情報は、興味の対象になる情報。知らせたい情報は、導入促進のための情報です。

これをメディアで考えると、興味を引くのがオウンドメディア。導入促進にはサービスサイトやブランドサイト、ECサイトが紐づきます。それぞれのメディアの役割を理解しながら情報を発信するならば、オウンドメディアで情報をコンテンツ化して出していくことによって徐々にファンになっていただき、弊社のことやサービスも知ってもらって導入していただく流れが、いわゆるコンテンツマーケティングで態度変容を促す取り組みになります。

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言うなれば、オウンドメディアは、広くフラットに知見を得る場所。サービスサイトは具体的な目的をもって能動的に情報を取りに行く場所。インターナルコミュニケーションでも同じことが言えます。社員にぜひ知っておいてほしい情報を社内メディアでコンテンツ化し、知りたいと思ったときに情報を取り出せるのが社内ポータルの役割と言えます。

情報を格納することがゴールではなく、それがどう社員に作用するかを考えながらコンテンツを開発し、置き場所を考えることの重要性が、この場でお話したかったことです。

伝え方:コンテンツづくりのヒント

最後に、コンテンツづくりのヒントを共有させていただきます。エクスターナルでもインターナルでも、コミュニケーションはコンテンツをどうつくるかが肝になります。ポイントは、読み手が自分ごと化できるか否か。自分に沿った情報になっているかによって、どれだけ読まれるかが変わり、理解度も変わってきます。

コンテンツの自分ごと化を言い換えると、読み手のモーメントに訴えることです。モーメントは 、例えばコンテンツに出会ったり、検索したとき、生活者が何かを判断したり行動を起こす瞬間のことで、Google が提唱しています。
※モーメント‥生活者が判断したり、行動を起こしたりすること

では、読み手が自分ごと化できるコンテンツとはどういうことかを少しお話したいと思います。例えばインターナルコミュニケーションで、ビジネスマナーをしっかり学んでほしいとします。弊社だとアマナビジネスマナーブック実践編みたいなものをつくって、PDF等でデータ化して社内ポータルサイトに格納して、マナーブックをアップしたのでご活用くださいとメールでコミュニケーションを取るのが一般的な流れだと思います。

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このとき、閲覧者である社員のモーメントを考えると、メールを受け取ったときに、助かる、勉強しようと思っていたという人はそこでダウンロードして読み込むと思います。一方で助かると思いながらも、とりあえずある場所はわかったから今読まなくてもいいとスルーしてしまう人はたくさんいると思います。後で見ようと思っても見ないんですよね。

今、出会った瞬間に自分ごと化させるモーメントを動かすには、社内メディアを使って記事化して伝える手段があります。マナーブックすべてを網羅するのではなくて、関連があるマナーを選んで戦略的にコンテンツを展開していくことがポイントになります。

具体的に、エレベーターの乗り方がビジネスマナーブックの中にあったとします。それを自分ごと化できるように記事化するとどうなるでしょう。弊社の例で言うと、「教えて(!)たまちゃん」というシリーズで、社長室秘書のたまちゃんが、マナーについて記事を書いてくださっています。その中でエレベーターの乗り方にはこう書いてあります。

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「今日はエレベーターの乗り方を学びましょう。今あなたは天王洲T3ビル5階で下りのエレベーターを待っています」と書き出されています。まさに私が執務しているエリアの話です。下りのエレベーターを待っているシーンは毎日あり、文字面を見ただけでイメージできます。「そこへ進藤社長がお客さんを連れてきました。さてあなたの行動は?」となってくると、穏やかではなくなります。何が正解なのか、記事に引き込まれてしっかりと読んでしまいます。インターナルコミュニケーションには、圧倒的に自分ごと化しやすい要素が詰まっています。

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日常的に、能動的にメディアにアクセスしてもらうために、本当に意識しなければいけないのは、読み手が自分にとってそのメディア情報が有益な情報源として認識されるか否か。これには「コンテンツの量と質」が関わっています。

読み手がメディアを有益な情報源と認識するかどうかで、コンテンツの数が累計で300を超えるとPV が跳ね上がるというデータがあります。記事にたどり着いたときに近くにある記事を見て回遊する現象が起きる数なのだそうです。

もう1つ、弊社がいろいろなところで話しているのが、共感のメカニズムです。右脳で感じて心を動かす、いわゆるビジュアルで心を動かして文章を読ませて左脳で理解して定着させる考え方で、コンテンツの質を担保します。

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以上、マーケティング視点でとらえる社内メディアの活用法について、3つの視点でお話をさせていただきました。社内メディアのつくり方において、非常に重要なポイントをお伝えできたと思います。ありがとうございました。

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